5.患者中心の意思決定支援

質の高い意思決定ガイドとは?

5.患者中心の意思決定支援

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意思決定ガイドの国際基準

 欧米では意思決定ガイドの研究が1990年代から盛んになりました。意思決定ガイドの研究が盛んになるにつれ、意思決定ガイドの質が問われるようになりました。質の低い意思決定ガイドが普及しても患者の納得のいく意思決定にはつながらないからです。

 そこで、2003年に世界の研究者らが意思決定ガイドの国際基準コラボレーション(International Patients Decision Aids Standard (IPDAS)Collaboration)を組織化しました。意思決定ガイドの質を評価する指標を開発しました[1]。ここでは2006年に公開されたIPDASチェックリストを紹介します [2]。

IPDASチェックリストは、「内容」、「開発のプロセス」、「評価」の3つのカテゴリーからなります。


「内容」に関する項目

  • 意思決定ガイドは選択肢それぞれの経過について説明しているか
  • 意思決定ガイドは同じ基準(分母)を用いて結果の可能性を比較しているか
  • 意思決定ガイドは患者が経験する身体的・感情的・社会的な影響がどのようなものかをイメージしやすいように経過や結果の説明をしているか

など27項目

「開発のプロセス」

  • 意思決定ガイドは選択肢のポジティブ/ネガティブな特徴を比較することができるか
  • 意思決定ガイドは、科学的根拠として用いられた文献を提示しているか
  • 意思決定ガイドは対象となるグループの患者のほとんどが理解できるレベルの言葉で書かれているか

など30項目

「評価」

  • 意思決定ガイドは、患者が決定の必要性を認識するのを助けるか
  • 意思決定ガイドは患者が自分の価値観が決定に影響することについての理解を助けるか

など6項目


 意思決定ガイドに含まれる情報は、どちらかの選択肢について情報の偏りがないように作られています。そしてこれらのチェックリストは、人が何かを決める時、人間だからこそ持つ考え方の癖や傾向(認知のゆがみ)についての研究を基に作られています。

IPDASでは、質の評価のためのチェックリストを洗練させています[3]。2016年10月現在、「研究を決める力」に関わる研究メンバーなどにより日本語版翻訳中です。

質の高い意思決定ガイドを見つけるには?

 欧米では、たくさんの意思決定ガイドの開発と評価の研究がすでに行われていますが、日本ではまだ取り組みが始まったばかりです。出生前診断に関する意思決定支援にオタワ個人意思決定ガイドを活用し効果を検証する研究[4]、胃ろう(胃に管を入れて栄養を注入する方法)に関する意思決定ガイド活用の効果についての研究[5]が行われています。
 また、乳がんの手術で、がんの部分だけを取り除く乳房部分切除術がよいか、がんと乳腺を取り除く乳房切除術がよいか、乳房切除術をする場合には乳房再建術(乳がんの手術によって失った胸のふくらみを新たに作り直す方法)を受けるかどうかという意思決定ガイドの効果を検証するランダム化比較試験[6](乳がんの術式選択意思決定ガイドについて知りたい方はこちら)が行われました。しかし、医療の現場で、意思決定ガイドを活用できる体制はまだ整っていません。

 しかし、欧米では意思決定ガイドを紹介し活用できるようにしています。Ottawa decision aidsのウェブサイトの中には、A to Z Inventoryというコンテンツがあり、意思決定ガイドを検索できるようになっています[7] 。
https://decisionaid.ohri.ca/AZinvent.php

 他にも、AHRQ(Agency for Health Research and Quality)やNIH(National Institutes of Health)など、意思決定ガイドを公開しているホームページがあります。Ottawa decision aidsのA to Z Inventoryの特徴は、1つ1つ紹介している意思決定ガイドについて、IPDASのチェックリストを用いて、どのぐらい基準を満たしているか評価している点です。医療者が患者に提供する際、患者が自分で使用する際に、このチェックリストを見てどのぐらい基準が満たされているのかを確認して活用できるようになっています。


2016年12月6日公開 (大坂和可子、中山和弘)


引用文献
[1] G. Elwyn, A. O'Connor, D. Stacey, R. Volk, A. Edwards, A. Coulter, R. Thomson, A. Barratt, M. Barry, S. Bernstein, P. Butow, A. Clarke, V. Entwistle, D. Feldman-Stewart, M. Holmes-Rovner, H. Llewellyn-Thomas, N. Moumjid, A. Mulley, C. Ruland, K. N. Sepucha, A. Sykes, T. Whelan; International Patient Decision Aids Standards (IPDAS) Collaboration, Developing a quality criteria framework for patient decision aids: online international Delphi consensus process, B.M.J. 333 (2006) 1-6.
[2]The International Patient Decision Aid Standards (IPDAS) Collaboration. IPDAS 2005: Criteria for Judging the Quality of Patients Decision Aids. http://ipdas.ohri.ca/IPDAS_checklist.pdf, 2005 (accessed 01.11.12)
[3] Durand MA, Witt J, Joseph-Williams N, Newcombe RG, Politi MC, Sivell S, Elwyn G. Minimum standards for the certification of patient decision support interventions: feasibility and application. Patient Educ Couns. 2015 Apr;98(4):462-8. http://bmcmedinformdecismak.biomedcentral.com/articles/10.1186/1472-6947-13-S2-S2
[4] N. Arimori; Randomized controlled trial of decision aids for women considering prenatal testing: The effect of the Ottawa Personal Decision Guide on decisional conflict. Japan Journal of Nursing Science, 3(2) (2006) 119-130.
[5] Y. Kuraoka, K. Nakayama; A decision aid regarding long-term tube feeding targeting substitute decision makers for cognitively impaired older persons in Japan: A small-scale before-and-after study. BMC Geriatr, 5 (2014)14-16.doi: 10.1186/1471-2318-14-16
[6] W. Osaka, K. Nakayama; Effect of a decision aid with patient narratives in reducing decisional conflict in choice for surgery among early-stage breast cancer patients: A three-arm randomized controlled trial. Patient Education and Counseling, Available online 20 September 2016, http://dx.doi.org/10.1016/j.pec.2016.09.011
[7] Ottawa Hospital Research Institute, A to Z Inventory of Decision Aids, h ttps://decisionaid.ohri.ca/AZinvent.php, 2014 (accessed 24.10.13)

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