毎日新聞コラム「健康を決める力」

第18回 子ども時に判断力を

毎日新聞コラム「健康を決める力」

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毎日新聞 2018年12月19日 東京朝刊掲載

聖路加国際大教授 中山和弘 著


 温泉が魅力の大分での日本学校保健学会に参加しました。子どものヘルスリテラシーに関心を持つ方々との意見交換と、保健の新学習指導要領に関するシンポジウムを聞く目的でした。

 ヘルスリテラシーとは、健康や医療の情報を入手、理解、評価して適切に意思決定できる力です。大人になって急には身につきません。日本のように信頼できる情報を入手しにくい状況ではなおさらです。これまでの保健の授業では情報を入手して理解することが中心でしたが、氾濫する情報の中で適切に判断できる力を身につけることへの転換が必要です。

 生活習慣病の時代には、どの生活習慣が自分の健康に関係しているかの判断が大切です。しかし私たちの20~69歳を対象とした調査では、それを判断するのが「難しい」と答えた割合は5割弱いました。欧州8カ国の調査で最もヘルスリテラシーが高かったオランダでは5%でした。また治療法の選択肢は増えていますが、治療法が複数ある時、それぞれの長所と短所を判断するのが「難しい」と答えた割合は日本の7割に対しオランダは3割でした。総じて日本人は理解まではできても、選択肢を見極める判断力が養われていないと思われる結果でした。欧米の教育では未就学児から意思決定ができることを目標に掲げています。

 新学習指導要領では「思考力・判断力・表現力」という課題の解決の「力」が明確に盛り込まれました。学会シンポジウムでは、長年必要とされていたものが実現した喜びと共に、まだ不十分なので厚生労働省との連携を強化したり新科目として作り直したりすべきだといった指摘もされました。

 健康とは、心身の状態だけではなく、それを自分(たち)で変えられる「力」、生きる意味や生きがいを感じて「生きる力」を指します。からだのことに始まり、細菌やウイルスなどの多様な生物、食や薬、運動と睡眠、ストレスと対処、性とジェンダー、老化と死、人間関係やコミュニケーション、社会と文化、メディアと情報リテラシー、リスクや確率の理解など保健以外の全科目とつながっています。これらの多様な情報や価値観を基に判断できる自分らしい「生き方」を身につけることでもあります。

 雨で体育の授業ができない時に実施される場合があるため「雨降り保健」とも言われますが、「女性を大切に」という中学の保健体育の先生の言葉をよく覚えています。次は温泉目的で今日19日が誕生日の娘を含め家族で湯布院に行きたいです。

(次回は1月30日掲載)


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判断が「難しい」と回答した割合
●どの生活習慣が自分の健康に関係しているかを判断するのは
日本:45.5%
オランダ:5.4%

●治療法が複数ある時、それぞれの長所と短所を判断するのは
日本:70.6%
オランダ:30.9%

●どの予防接種が必要かを判断するのは
日本:57.0%
オランダ:23.2%

●メディアから得た病気に関する情報が信頼できるかどうかを判断するのは
日本:73.2%
オランダ:47.4%

●別の医師からセカンドオピニオンを得る必要があるかどうかを判断するのは
日本:73.0%
オランダ:44.0%

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