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2019年5月 アーカイブ

2019年5月20日

第22回 看護週間 ケアの心を考えて

毎日新聞 2019年5月15日 東京朝刊掲載

聖路加国際大教授 中山和弘 著


聖路加国際大が運営する「看護ネット」

聖路加国際大が運営する「看護ネット」


 今日は「看護週間」(12~18日)の真っただ中です。母の日と重なった12日は、近代看護の創始者フローレンス・ナイチンゲールの生誕日です。その日は「国際看護師の日」であり、日本でも「看護の日」です。「看護の日・看護週間」には、老若男女を問わず「看護の心」を育んでもらいたいという願いが込められています。それは家庭や地域、職場での、一人一人に対する「ケアの心、たすけ合いの心」でもあります。

 これを機会に、看護とは何か考えてみませんか。私は大学で「看護ネット」という市民と看護職をつなぐサイトを作っています。ぜひ人気コーナーの「看護とは」と「よろず相談所」をのぞいてみてください。中にある「看護の定義」にある、米国看護師協会の「健康問題に対する人々の反応を診断して対処する」というのが好きです。例えば、病気への反応として、痛みや不快を感じたり、不安やストレスを抱えたりします。それに上手に対処するためには手助けが欠かせません。医学のように病気を治すよりは、健康や病気をどう受け止めているか、それらとどうつきあっていくかに注目するわけです。看護では「寄り添う」という言葉がよく使われます。

 病気をきちんと受け止められたら、治療はどうするか、治療を受けながらどう生活していくか、もし治療を終えたらどうするかなどと、次々に新しい問題への回答が求められます。その多くは選択肢を知って選ぶこと、すなわち意思決定です。医療の進展により治療やケアの選択肢は増えていますが、不確実な場合も少なくありません。選ぶ人の価値観次第となるような難しい意思決定では、迷いや葛藤に「寄り添う」人が必要になります。その時、看護は「その人らしさ」を大切にします。

 世界では、そのような意思決定を支援する研究が進んでいます。けん引してきたのは、カナダのオタワにある研究所の看護学の研究者たちで、一人一人に合った質の高い意思決定があるという考え方です。それは、選択肢とそれぞれの長所と短所を十分に知り、自分の価値観と一致したものを選び、意思決定に参加した人がそれに満足することです。

 私の研究室でも、その考え方を基にして、みんなで研究を進めています。一緒に意思決定支援の研究に参加してみませんか。「その人らしさに寄り添う心」さえあれば、看護の資格は無くても大丈夫です。

次回は6月19日掲載

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