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2021年2月 アーカイブ

2021年2月16日

1.リテラシーの低いユーザーについてわかったこと

はじめに

リテラシー(読み書き能力)が低い成人の認知処理とオンライン上の行動に関する文献が増えています。このセクションでは、リテラシーが、ユーザーの読解能力やさまざまな大きさの画面での情報処理、そしてテクノロジーとの関わり合いにどのように影響し得るかを解説します。

リテラシーは、インターネットの利用におけるほぼすべての面に影響を与える可能性がある。

1.1.読み、そして理解する過程での課題

認識しながら話し、読むということは、文章を解読し理解するという骨の折れる作業です。まず初めに、ユーザーはその言葉に付与された意味によって文章を解読する必要があります。次に、ユーザーは、特定の文章や段落で著者が何を伝えようとしていたのかを知るために言葉をつなぐことによって、その文章を理解する必要があります。

リテラシーの低いユーザーは、リテラシーの高いユーザーに比べて短期作業記憶に問題を抱えていることが多いです。彼らは、難易度の高い言葉を解読することや、それらの意味を覚えることに苦戦しているかもしれません。ウェブサイトが多くの内容を含んでいる場合にユーザーは、その内容のすべてを覚えていないかもしれません。さらに、彼らがよく覚えている内容は、その中の最も大切な情報ではないかもしれません。

リテラシーの低いユーザーはしばしば自身の読解スキルが良い、もしくはとても良いと答えます。しかしながら、目の動きによる情報や有用性研究からは本人の読解力の認識とは異なる結果がわかっています。

これらの研究から、リテラシーの低いユーザーは一般的に読むのが遅く、そしてウェブサイト上の内容を理解するために内容、セクション、言葉を再度読み直すということが分かっています。

そして、状況によって、リテラシーの低いユーザーは、

  • 言葉やセクションを読み飛ばす、もしくは段落の途中から読み始める。
  • 彼らは効果的にざっと読むことや内容をくみ取ることが難しいため、すべての文字を読もうとする。これは、ユーザーが重要であったり彼らが利害を多く感じるものであったりを読む場合に頻度が高まる。

リテラシーの低いユーザーにおけるこれらの傾向は言葉の多さに圧倒されることのない簡潔な内容を作成する重要であることを強調しています。文字が多い場合はリテラシーの低いユーザーが内容を読み飛ばすことのきっかけになりうる、もしくは彼らは内容を理解しようと苦労し、そのウェブサイトのすべての文字を読もうとするでしょう。

さらに、オンラインの入力フォームはリテラシーの低いユーザーにとって独自の問題となります。ユーザーは、指示と入力フォームの項目を読み、そして質問事項に答えを書くか、もしくは多項選択式の選択肢を読み回答する必要があります。これは、リテラシーの低いユーザーに大きな負担となるのです。

(Figure 1.1~Figure 1.3は省略します)


1.2.操作への理解 (Understanding navigation)

ウェブサイトを操作する時に、リテラシーの低いユーザーがしがちな下記のような傾向があります。

  • リンクやアイコンなどのウェブサイトの要素や本文とは関係ない言葉に気を散らす傾向がある。
  • 直線的に操作し、頻繁に元に戻る。
  • 彼らはそれが正しいかを確かめずに見つけた最初の答えを選ぶ。また、情報が質の高いものか低いものかを見分けることが難しい。
  • 間違いを修正するのが難しい。

読む際に、リテラシーの低いユーザーはスクリーンの中央に目を向けます。一旦、彼らは操作メニューからスクリーンの中央に焦点を移すと、彼らはそのサイトの内容が自身の興味にあっていなかった場合に問題の解決や進行の変更のために操作メニュー戻ることはほとんどありません。


1.3.検索の利用 (Using search)

ウェブサイトの検索機能を使用することはリテラシーの低いユーザーにとって困難になりえます。検索に(多少の)正確な文字のつづりをタイプすることが要求されますが、いくつかの検索エンジンでは正確なつづりを手助けしています。最適な選択肢を特定するために読んだり、検索結果を比較したりすることは認知的に困難な作業なのです。

結果として、リテラシーの高いユーザーと比較して、リテラシーの低いユーザーの特徴は

  • 情報探索に時間がかかる
  • すぐに情報が探せない場合に諦めやすい
  • 検索用語を考えるのに困難が伴いがち
  • 検索結果の1つもしくは2つしかクリックしない傾向
  • 検索方法を変えるのではなく、検索結果を改善するために検索用語を追加しがち

1.4.モバイルの考慮 (Mobile considerations)

リテラシーの低いユーザーは、モバイル機器からインターネットに接続することが多く、そうしたユーザーの90%以上が携帯電話を持っています。また、所得の低いユーザー、教育水準の低いユーザー、マイノリティーのユーザーは、主に携帯電話からインターネットに接続することが多いということも分かっています。 調査によると、リテラシーの低い人は、デスクトップパソコンよりもモバイル機器の使い方を覚える方が簡単だと考えています。

(Figure 1.4は省略します)
2015年3月に我々が、携帯電話に関してhealthfinder.govで試験を行った際、ユーザーには、健康に関する情報についてデスクトップパソコンよりもモバイル機器の方がはるかに検索しやすいことが分かりました。

さらに、読解能力に障害のあるユーザーにとって、携帯の画面の方が読みやすい。このようなユーザー層では、携帯の画面上で読む方が、速さと理解度がどちらも向上する場合があるからです。それは一行の長さが、つまり、モバイル機器ではもともと一行が短いことが、理由である可能性が研究で示されています。

この手引書で示される優良事例はすべて、モバイル機器の使いやすさを向上させるものです。ただし、モバイル機器向けにオンラインの健康情報を設計する際には、考慮すべき特定の留意事項がいくつかあります。


モバイル機器の画面という課題

リテラシーの低いユーザーの非常に多くがモバイル機器から情報にアクセスしていることが分かっているため、モバイル機器の画面上の表示を工夫することを考慮することが非常に重要です。

リテラシーの低い多くのユーザーが、デスクトップパソコンよりもやはり携帯の方が使いやすいという事実にもかかわらず、ユーザーらは、モバイル機器の次のようなナビゲーションの要素に困難を抱えています。

  • 階層ナビゲーションに従うこと
  • 情報を探す場所を知ること
  • メニュー内でスクロールバーを使用すること
  • 状況ごとに異なるさまざまな目的に、同じ一つのボタンを使用すること(iPhoneのメニューボタンのように)
  • 文字入力に小さなキーボードを使用すること

階層ナビゲーションでは、ユーザーはより広域な情報カテゴリーから始めて、詳細情報を見つけるためにシステムの中を「掘り下げていく」ことになります。このようなナビゲーションは、情報のさまざまな分類の中を掘り下げるという概念をユーザーが理解していることをあてにしています。

一般的に、モバイル用のコンテンツはすべてのユーザーにとって、概要を把握することが二倍難しいと言えます。iPhoneのような小さな画面で読むと、複雑な情報を理解するのがより難しいというのが理由のひとつでです。

さらに、モバイル機器のユーザーはいつもスクロールしています。 一般的に、モバイル用のコンテンツはすべてのユーザーにとって、概要を把握することが二倍難しいと言えます。iPhoneのような小さな画面で読むと、複雑な情報を理解するのがより難しいというのが理由のひとつです。

さらに、モバイル機器のユーザーは、ページ内の情報すべてを一度に見ることができないため、いつもスクロールしています。それは、ユーザーが、デスクトップの画面でぱっと一目で見ることができるのとは違い、コンテンツの他の部分を参照するためにページ内を行ったり来たりしていることを意味します。このことは、ユーザーの理解において悪い影響となり得えています。

  • スクロールが常に必要であると
  • 時間がかかる
  • ユーザーの集中力がそがれる
  • ページ内で位置を見定め直すことの問題が起こる。

まとめ

リテラシーの低いユーザーのオンライン上での行動について、インターネットのコンテンツを見るためにどのような機器を利用しているかを含め、理解し予測することは非常に重要です。リテラシーの高いユーザーでさえ、体調不良やストレスがたまっている時、あるいは疲れている時には、インターネットを利用したり閲覧したりすることがより難しくなってしまいます。このような行動を考慮してウェブサイトを設計すれば、私たちすべてにとってインターネットがより良い場所となるでしょう。

ユーザーエクスペリエンスを向上させるには、コンテンツを簡略化することが必然のスタート地点です。
次のセクションでは、人を引き付ける平易な言葉で実用的なウェブサイト用コンテンツを書くための基礎を解説していきます。

2.すぐに実行できるコンテンツにしましょう

はじめに

ウェブサイト用に書くことと印刷のために書くことは異なっています。ほとんどのユーザーは、リテラシーの低いユーザーも含め、特定の情報や質問への答えを探しています。彼らは通常、1つのページに非常に長く滞在しません。実際、ホームページ上の平均滞在時間は15秒未満です。


それが健康情報となると、ユーザーは次の2つのことを素早くかつ簡単に行いたくなります。

  • 健康上の問題や行動を理解すること
  • どのように行動に移すかを明らかにすること―言い換えると、行動を変え問題に対処するには何をすればよいかということ

コンテンツは、Webサイトの中で最も重要な要素です。対象者のリテラシーの高さがどの程度であれ、常に健康コンテンツの目指すところは、

  • 簡潔かつ的を絞る
  • すぐに実行できて魅力的である

「すぐに実行できる」というのはあなたが健康行動に焦点を当てていることを意味します。あなたは彼らに対し何をどのように実施すべきなのかを教えてください。

エンゲージメント<ユーザーが積極的な反応を示すこと>とは、行動変容を促すような方法で健康情報にユーザーを引き込んでいく過程です。対話型の方法とチェックリストは、人を引き付けるコンテンツの例です。ネット上の健康情報に適用された場合に、高いレベルのエンゲージメントは健康行動の変容へと導くことができます。

ご注意下さい:平易な言葉では十分ではありません。
ユーザーに健康的な行動を受け入れてほしいのであれば、あなたはすぐに実行できる健康コンテンツを記述する必要があります。平易な言葉だけではあなたの望ましい結果にはなりません。


2.1. ユーザーの動機と目的を特定しましょう。なぜ、ここに来たのか?

動機は、健康に関する情報の検索を促し、ウェブサイトでユーザーの行動に影響します。ユーザーの動機を理解することは、彼らの必要な情報や期待を満たすような、実用的で目的にかなった健康に関するコンテンツを書く一助となります。

ユーザーは疑問に対する答えを欲しがっているのです。

多くのインターネットユーザーが、特定の目的を持っていることに留意すること。彼らはたいてい、疑問を解決しようとしています。その疑問とは何かを探るために、何を知りたいのかをユーザーに問う調査を行い、その後、彼らに情報を届ける最適な方法を決めていきます。

オンラインのユーザーについて基本的な情報を得ることができます。

利用ユーザーの動機を理解する最善の方法は、彼らと話すことですが、ユーザーに関する基本的な情報―ユーザー層の情報など―はオンラインで集めることができるでしょう。(詳しくは、セクション6のリテラシー能力の低いユーザーに調査を行う方法を参照してください。)

例えば、ODPHPの調査では、健康に関する情報をネットで探すユーザーに共通する動機をいくつか特定することができました。この調査により、多くのユーザーが下記の目的でインターネットを利用することが分かりました。

  • 自分や知人に影響する健康上の問題について知るため
  • 自分が健康上の問題を抱えているか、または懸念していることの原因を探すため
  • 健康上の問題を回避する方法を知るため

やってみよう

次回ウェブサイトを作成したり更新したりする際に、出発点として疾病管理予防センター(CDC)の資料を使うといいでしょう。ユーザー層のデータに基づいた公衆衛生に関するコミュニケーション作業を目的として、ユーザーのプロファイルを見ることができます。

ユーザーの動機の変化を予測しましょう

研究により、ユーザーを動機づけているものは変化しがちであり、変化は頻繁であることが多い、ということも分かりました。このことに留意して、自分のコンテンツが、健康情報を検索するユーザーのさまざまな目的に合うようにしましょう。

下記の方式は、リテラシー能力の低いユーザーの動機に基づいて開発されたものです。これは、ユーザーを「あるトピックに関する情報がほしい」から、「そのことに関して何かをしたい」へと動かすように設計されています。

健康促進のための情報を提示する際は、以下のような方式に従いましょう。

  • 健康に関わる行動を説明する
  • 行動を起こすことの利点を説明する
  • 行動の明確なステップを提示する
注意を引く。それから要点を言いましょう

2.2.一番初めに最も重要な情報を載せましょう

リテラシーの低いユーザーの多くは、ページや段落のほんの数語しか読みません。彼らはコンテンツが読みやすいと思えば、おそらく読み続けるでしょう。もし難しすぎると思えば、そのページ上の別の場所に飛ばし読みします。

(Figure 2.1は省略します)
一番初めに最も重要な情報を載せると、モバイルユーザーのためのコンテンツを作ることができます。また、リテラシーレベルや使用しているデバイスに関係なく、忙しいユーザーのためのコンテンツを作ることができます。アイトラッキングのデータによると、すべてのユーザーはウェブページの上部にあるコンテンツを読み、その情報が自分に関係ないと思えばすぐに興味を失う傾向があります。

2.3. 健康行動について説明しましょう。基本的なことだけです。

予防行動の導入から始めてください。ユーザーは特定の行動指針を求めています。言い換えると、何をどのようにすべきかをユーザーに伝えるということです。背景情報と統計よりもむしろ、行動に焦点を当てましょう。ユーザーに大量の情報を与えることは重要ではありません。


「知る必要があること」と「知っていて損はないこと」を考えましょう。

健康情報が広範囲である必要はありません。その代わり、ユーザビリティ調査では健康の話題に関する"ごく基礎的なこと"を学ぶことを好む人が多いということを示しています。ユーザーは、行動変容のために何を知る必要があるのでしょうか?単刀直入に、そして的を射た状態で情報を維持しましょう。さらに詳細を求める人々は、もっと掘り下げるでしょう。


「必要なことだけを教えてください」


以下の代わりに:
血圧は、動脈の壁に対する血液の力です。血圧は頻繁にチェックする必要があります。
以下にしましょう:
特にあなたが40歳以上である場合は、2年ごとに血圧をチェックしてください。

(Figure 2.2は省略します)

"このウェブサイトが好きなのは、今すぐに欲しい情報が見つかるからです。基礎的なことが書かれていて、読むのが面倒ではありません"

2.4.ポジティブでいましょう。行動を起こすことで得られるメリットを伝えましょう

ユーザーはポジティブな口調を大変好みます。ですからできるだけ否定的な言葉を避けましょう。カードソーティングの時は、基本的な健康情報に加えて、ユーザーはリスクと負担についての情報よりも、きっかけや行動を変えるために障壁を乗り越えることについての情報を優先します。

ユーザーに対して、望ましい行動を受け入れることで、何を得られるのかを伝えましょう。

(Figure 2.3は省略します)

人々に何をすべきでないかを伝えるのではなく、行動変容のための前向きな理由づけを示しください。


以下の代わりに:
ヘルメットなしでバイクに乗るのは絶対にやめましょう。
以下にしましょう:
バイクに乗るときは、必ずヘルメットを着用しましょう。

やってみよう
言葉を選ぶときには、"しないでください(don't)"の使用を制限しましょう。
また、"すべき(should)"も使わないようにしましょう。"すべき(should)"は説教じみていて、人を見下しているように聞こえます。
障壁そのものではなく、障壁を乗り越えるためのヒントやツールに焦点を当てましょう。

ユーザーが健康行動を変えるためには、さまざまな障害を克服する必要があります。現実的に考えて、これらの障壁を認め、励ましと動機付けを継続することが重要です。



全か無かではないのです。10分の運動は、ないよりはましです!
週に数日、1日10分程度のウォーキングをしてみてはいかがでしょう。

禁煙は難しいですが、何百万人もの人が成功しています。
実際、タバコを吸ったことのあるアメリカ人の半数以上が禁煙に成功しています。
あなたもその一人になれるかもしれません。


2.5.具体的な行動の手順を示しましょう

ユーザーが始めるために必要な手段を提供しましょう。ユーザーは行動の手順、特に即座に実施できることを探しているのです。
何をするかの代わりに、どのようにするのかを彼らに伝えましょう


行動を小さなステップに分けましょう

小さくて出来る範囲のステップへ行動を分割することは、ユーザーがどちらのステップが現実的で実行可能な感じなのか、選択肢を与えるということです。→ユーザーが即座に取り入れられるようなステップを含みましょう。


(Figure 2.4は省略します)
小さなステップへ行動を分割することは、ユーザーの自己効力感を向上させます。
自己効力感は、特定の目標に到達することに成功する能力があるとする個人の判断です。自己効力感は、健康行動の重要な予測因子です。

やってみよう

次にメッセージを作成する際には、健康行動を変化させた人々の個人的なストーリーを取り入れることで、メッセージを強化することができます。読み手の自己効力感を高めるには、統計よりもストーリーの方がはるかに効果的です。読者が共感できる人の言葉をひとつ加えるだけでも、大きな違いが生まれます。


双方向的なコンテンツをつくりましょう

行動のステップの一環として、メニュープランナー、印刷可能なチェックリスト、医師に尋ねる質問などの双方向的なコンテンツをユーザーに提供します(セクション5参照)。

"これは良い情報です、なぜなら、多くの場合、私は情報を持って医者に行き、食事の問題、避けるべきこと、薬について質問するのですから。"

行動のステップの「理由」を説明しましょう

ユーザーにお願いしていることの理由を伝えましょう。そうすることで、なぜそのステップを踏むことが重要なのかを理解してもらえます。

食事日記をつける。今、自分が何を食べているのかを知ることで、何を変えたいのかを把握することができます。


2.6.わかりやすい言葉で書きましょう

ウェブサイトのコンテンツをわかりやすい言葉で作成することは、ユーザーが最初に読んだときに、何を言いたいのかを理解することができるということです。


段落や文章は短くシンプルに

文章は20語以下(日本語に換算すると40字以下程度)にするようにしましょう。段落は3行以内にしましょう。


常にユーザーになじみのある言語を使いましょう

専門用語はできる限り避けましょう。ユーザーが親しみを持てる言葉を選んでください。


能動態を使用してください

能動態で書くことによって、文章の主語が行動を実行することを意味します。能動態の文章は、
  • よりすぐに実行しやすく直接的
  • より理解しやすい
  • 一般的により必要な言葉は少ない


受動態:どこが悪いのかを知るための検査が必要とされるかもしれません
能動態:どこが悪いのかを知るために、検査をする必要があるかもしれません

複雑な言葉は定義をしましょう

医学用語を紹介する場合は、最初に使うときにその用語を明確に定義してください。用語集などの定義を使用するのではなく、文脈の中で言葉を定義しましょう。

主治医から神経科医を紹介されることがあります。神経科医とは、脳や神経系に関連する問題を治療する医師です。

専門用語を覚えることがユーザーのためになるのか、それを回避したほうがよいか考えましょう。例えば、てんかん患者は「神経科医」という言葉を知っておく必要がありますが、別の文脈では「専門医」と言えば十分かもしれません。

最も正確な言葉が馴染みのない医学用語の場合は、最初に使うときにわかりやすい言葉での定義を文章に入れるようにしましょう。文章の一部に定義を入れるか、ダッシュ記号(エムダッシュ)の間に定義を入れることを検討してください。

薬は空腹時に服用すると嘔吐-吐く(戻す)-することがあります。

医学的または技術的な概念を説明するために、日常の例を使用しましょう

ユーザーが親しみを感じられるような言葉やイメージを選びましょう。

マンモグラフィ(乳房レントゲン写真)を受ける時、看護師は2枚のプラスチックプレートの間にあなたの乳房を置き、それぞれの胸の写真を撮ります。

親しみやすい会話調で書きましょう

フォーマルな言葉を使うと、健康コンテンツがユーザーに伝わりにくくなるので、自分が話すように書いてください。短縮形を使いましょう。できる限り二人称の代名詞を使い、読者に直接語りかけるようにしましょう。
"私は[このウェブサイトが]好きです、私のような一般人に読みやすいからです。難解な言葉や医学用語はありません。"
やってみよう
健康関連のコミュニケーションのための資料の評価には、CDC Clear Communication Indexをご利用ください。


2.7.コンテンツの正確さを確認しましょう

健康コンテンツの正確さのため、定期的に専門家や識者に確認してもらいましょう。

コンテンツが最後にレビューされた日付とレビュアーの名前と連絡先情報を示しましょう。これにより、ユーザーにとってコンテンツはより信頼できるものとなります。

(Figure 2.5は省略します)

スタイルガイドの作成

スタイルガイドを利用して、コンテンツの一貫性を保ちましょう。スタイルガイドは、健康のようなトピック特有の単語やフレーズが多いテーマについて書く場合に特に役立ちます。コンテンツのスタイルガイドは、ユーザーがコンテンツの中で認識できるように、健康関連の用語を合理的に表すのに役立ちます。

スタイルガイドは、特定のウェブサイトのコンテンツを記述するための規則をレイアウト(割り付け)する文書です。スタイルガイドでは、文法、スペル、および書き方の好みを把握するのに役立ちます<たとえば、「Web site」または「website」どちらか?など>。また、見出しとフォントサイズを維持するために、スタイルガイドが利用できます。

スタイルガイドは、進化していく文書です。筆者と編集者が少しずつそれに足していくものです。簡単にアクセスできるようにしておいてください。多くの組織では、更新や共有が容易なことから、オンラインスタイルガイドにWiKiを使用しています(Wikiとは、ウェブ文書を簡単に作成・編集できるウェブサイトのことです)。
コンテンツスタイルガイド作成のヒントは、digitalgov.govのリソースをご覧ください。


まとめ

ウェブサイト上、特にモバイル機器では、ユーザーは必要な情報をできるだけ早く見つけたいと思っています。ユーザーのリテラシーの程度に関係なく、コンテンツは短く簡潔に、わかりやすい言葉で書くようにしましょう。

しかし、わかりやすい言葉だけでは十分ではない―ユーザーに行動変容を促すには、健康に関するコンテンツを実践可能で興味をそそるように書きます。ユーザーに分かりやすく行動のステップを示すことができれば―そして、双方向型のツールやチェックリストといった、人を引き付ける内容で彼らを動機づけることができれば―、ユーザーは最後までやり通してくれるでしょう。

次のセクションでは、コンテンツを読みやすく、かつアクセスしやすくし、魅力的な見た目にするためのデザインとレイアウトの優良事例について説明します。

3.ページにコンテンツをわかりやすく表示しましょう

はじめに

初めの一歩は、読みやすいウェブサイトコンテンツを書くことです。人々に内容を理解してもらいたいのであれば、モバイル、デスクトップの両方で読みやすく見えることが必要です。

あまりにも多くの文章が一段落にまとまっている場合、またはページ上に十分な余白がない場合には、わかりやすい言葉で書かれてあったとしても、健康情報を見ることは困難となります。そして、あなたのウェブサイトがモバイル上でよく機能しない、もしくは表示されなければ、モバイルユーザーは記事にたどり着く前に挫折してしまう恐れがあります。

ウェブサイト設計とコンテンツは連動しています。余白(作用空間または空欄と言います)や配置、書体、および色は、ユーザーがウェブサイト上のコンテンツを理解するのに役立ちます。

やってみよう
健康コンテンツを作成する時は、モバイル画面用に書くことを想像してください。そうすると、このセクションで紹介したベストプラクティスの多くを考慮する必要が出てくるでしょう。モバイル画面用に書くことで、どの画面サイズでも、よりシンプルでわかりやすいコンテンツになります。


3.1.段落の大きさを制限しましょう。箇条書きと短い一覧の形式を使いましょう

スクリーンサイズに関わらず、ユーザーを圧倒するようなコンテンツにしないことは非常に重要です。この原則は、モバイルデバイスだけでなく、デスクトップやラップトップ(ノートパソコン)にも当てはまります。下記は、リテラシーの低いユーザーが、内容を飛ばしてしまう要因です。

  • 文章の隙間のない"壁"
  • 長い文章
  • 文章内に複数の数字が入っている段落
  • 長い言葉
  • 3行以上の段落

ここに挙げたことはいかに重要か、いかに簡単に書かれているかにかかわらず、読みづらい印象を与えユーザーが情報を読み飛ばすことにつながります。

さらに、ユーザーの限られた作業記憶のために書いてください。明確に独立した節や、文章の"塊"を使用しましょう。

  • わかりやすく独立したセクションを用いる、もしくは見出しを用いて文のまとまりをつくる。
  • 各文章のまとまりは1つの主題もしくは情報にする。
  • できるなら文章をリスト化する
  • リストが7つよりも多い場合には、いくつかのサブリストに分ける。

(Figure 3.1は省略しますが、説明を紹介しておきます)

healthfinder.govのこれらのページを比較してください。実験では、ユーザーがテキストの段落で提示された説明1の情報を読んでいないことを示しました。一方、ユーザーは、説明2の方が箇条書きの一覧と文章の小さい「節」からなっているため読みやすいのです。


3.2.意味のあるタイトルを使用しましょう

ユーザーがウェブサイトをさっと目を通すように、ユーザーはその内容が自分に関係があるものかを判断するために見出しのみを読むことが多々あります。見出しは、ユーザーが必要な情報を見つけやすいキーワードを含むようにして、可能な限り具体的にすることが重要といえます。

見出しに重要な語句を含めると、検索エンジンが検索結果としてあなたのコンテンツをより表示しやすくします。検索エンジンは、重要単語が内容にだけ含まれている場合よりも、リンクや見出しページ、タイトル、アドレスに含まれている場合の方がウェブサイトを先に表示します。

やってみよう
見出しはできるだけ動詞で始めましょう。これにより、すぐに行動できるコンテンツを書くための準備が整います。

小見出しを使いましょう

各見出しの下に、小見出しまたは"ティーザー(リンク先への興味を高めるために付記する短い紹介文)"を追加することで、ユーザーがコンテンツから何を期待しているのか、追加の手がかりを与えることができます。



メイン見出し:アクティブになりましょう
小見出し:1週間で、2時間30分の活動を目指しましょう

質問を見出しにすることを考えましょう

適切な場合には、質問を見出しとして使ってみましょう。ユーザーの声を反映させるために、"私は"と"私に"を使用しましょう。

例えば、マンモグラフィについて述べる際に、よくある質問は、

  • 私にとってどんないいことがありますか?
  • いくらかかりますか?
  • 医師が何か悪い所見を見つけた場合はどうなりますか?
  • どのくらいの頻度で検査を受ける必要がありますか?
  • それは痛いですか?
  • 検査に関連する何らかのリスクがありますか?
  • 時間が無い場合はどうすればいいですか?

見出しは適切な箇所に配置しましょう

見出しがページ上で「フロート(浮くこと)」しないことを確認してください。見出しと次の文章の間よりも、見出し上部により多くのスペースがあるようにしておくべきです。目標は、見出しと関連する文章、または中点(箇条書きにする文の前につける黒点)からなる内容の節を、別々に設けることです。

(Figure 3.2は省略しますが、説明を紹介しておきます)

healthfinder.govのウェブサイトでは、骨粗しょう症に関する情報の見出しとして、質問を使用して構成されています。分かりやすい文章の「節」を作成するため、見出しの後よりも前に多くの余白があります。


3.3.最小で12ポイントの読みやすいフォントを使いましょう

フォントの選択は、あなたのウェブサイトの読みやすさにかかわるのでとても重要です。下記に読みやすさに影響する最も重要な要素を一覧にします。


大きさ

最小で12ポイントのフォントを使用してください。書体の大きさに配慮してください。
ユーザーの多くが高齢者である場合は、14ポイントの書体を使用することを検討します。書体が小さいと、リテラシーの低い人や高齢者のユーザーにとって読みづらくなります。

"老眼鏡なしで読めたら、嬉しいですね"
ユーザーがページ上で文章の大きさを調整できるようにしましょう。ウェブサイト作成者は相対的な種類や大きさを用いて、この機能を有効にすることができます。しかし、異なる書体の大きさを使用しても変わらずに読みやすく操作できるかどうかを確認するため、ウェブサイトをテストすることが重要です。そして、常にモバイル機器であっても見やすいどうかを確認してください。新しく高機能のスクリーンでは1インチあたりのピクセル数を増やすと、テキストを小さく見せることができます。


(Figure 3.3は省略しますが、説明を紹介しておきます)

NIH SeniorHealthでは、各ページにツールバーを設置していて、文字サイズの変更やカラーコントラスト(黒地にカラーの文字)の調整が可能です。


簡潔さ

不必要に華やかで、一般的ではないフォントは読みづらいです。一般的なフォントを選ぶことはユーザーを安心させます。
Verdanaのようなシンプルで親しみやすいフォントで印刷された文章は読みやすいです。

また、見出しと本文で異なるフォントを使用できますが、1ページに3つ以上のフォントを使用しないようにしましょう。少ない数のシンプルなフォントを使うことで、ページにまとまりが出きます。

セリフかサンセリフか?

どのタイプのフォントがオンラインで読みやすいかは、さまざまな議論があり、全体として結論は出ていません。しかし、セリフ体のフォントは、読字障害のあるユーザーにとってウェブ上での読書を難しくする可能性を示唆する証拠もあります。

結論:ウェブ用の文章を書くときは、サンセリフ体のフォントを選ぶのがベストです。
Verdana、Lato、Open Sans、Proxima Nova、Source Sansなどの親しみやすいサンセリフフォントを使いましょう。

セリフ書体は"腕と脚"があります。
セリフ系フォントの例としては、Times、Garamond、Georgiaなどがあります
(日本では明朝体)。

サンセリフ体は"腕と脚"がないものです。
サンセリフ系フォントの例としては、Arial、Calibri、Verdanaなどがあります
(日本ではゴシック体)。

行間隔

行間隔は、テキストの行間の垂直方向の距離です。文書作成の共通の行の間隔は下記のようになりますす。


  • シングルスペース(行の高さはフォントサイズと同様)
  • 1.5行(行の高さはフォントサイズの1.5倍)
  • ダブルスペース(行の高さはフォントサイズの2倍)

いくつかの文書作成ソフトや多くのウェブデザインプログラムには、さらに多様な行間隔の選択肢があります。
読みやすさを最大限にするために、行の高さはフォントサイズよりも130%から150%大きいものを使用してください。そうすることで、リテラシーの低いユーザーが読み進めるうえで読んでいる箇所を見失うことを防ぎ、指で読んでいる箇所を見失わないようにすることを容易にします。

(行間隔の実際の例は省略します)

また、モバイルユーザーに対しても行の高さは重要な検討事項です。段落や箇条書きに多様なリンクが含まれている場合に、余分な行間隔はユーザーが彼らの求めるアイテムをタップする際に十分なスペースをつくります。


3.4.余白を使ってごちゃごちゃしないようにしましょう

きれいですっきりとしたウェブサイトは、読みやすくなります。それらは、すべての人々、特にリテラシーの低い人々や忙しい人々にとって、注意をそらせたり多すぎると感じたりすることが少なくなります。

節の中の情報を分割するために、主な内容が書いてある部分の中で余白を使用してください。画像やボタン(ディスプレー画面上でマウスクリックできる場所)の周囲にある文章の部分に余白を用いてください。

(Figure 3.4、3.5は省略します)

また、ボタンやリンクを誤ってタップしないで、モバイルユーザーがボタンやリンクを操作できるようにするために、サイトの機能の周囲に余白を設けましょう。


3.5.アバブ・ザ・フォールド(ファーストビュー)に最も重要な内容がくるようにしましょう。モバイルでも同様です。


ユーザーは最初に見たコンテンツに最も多くの時間をかけます。そのため、最も重要で魅力的な内容をアバブ・ザ・フォールドにくるようにします。ユーザーは、見えているコンテンツを判断して、スクロールダウンをしてさらに内容を見るかどうかを判断します。
アバブ・ザ・フォールドとは、スクロールしなくても、読めるコンテンツのことです(ファーストビューとも言います)。

リテラシーの低い読者は、スクロールが苦手な場合があることを覚えておきましょう。視線追跡データによると、スクロールが必要になると、読み進めるために再び場所を探そうとしてコンテンツをスキップしやすくなります。そのため、できるだけスクロールを減らすことが重要です。

コンテンツが最初の画面から下に続いている場合、ユーザーにスクロールダウンの必要性を知らせるためのベストの合図は、スクロールラインを越えるテキストの段落です。しかし、これを異なるスクリーンサイズで一貫して表示させるのは非常に難しいため、代わりにスクロール矢印やスクロールバーの使用を考えるとよいでしょう。

やってみよう

コンテンツが画面上でどのように表示されるかを確認するために、様々なモニター、ブラウザ、デバイスを使用してウェブサイトを見てみましょう。

最後に、ユーザーは画面の下にある水平な線や大きな空白をウェブページの終わりと勘違いする可能性があります。そのため、多くのデバイスやスクリーンサイズでサイトを確認することが大切です。もし、ページの下部にこれらを見つけたら、何らかの変更を考えてください。"偽の終わり"は、人々があなたのコンテンツを全部見ることを妨げるかもしれません。


3.6.効果的にリンクを使いましょう

関連するコンテンツにリンクする機能はウェブサイトを使用する上で主要なメリットです。下記に、あなたのオンライン健康コンテンツで効果的にリンクを用いるための方法をいくつか紹介します。


1ページに掲載するリンクの数を制限しましょう

リテラシーの低いユーザーは、ページ上のコンテンツを読むというよりはむしろリンクをクリックする傾向にあり、時に"リンクホッピング(インターネット上で次から次へとリンクを読み回ること)"と言われます。

リンクは出口のようなものだと考え、ユーザーに本当に出てほしい場所にだけリンクを設置します。

コンテンツをサポートするツールやリソースに直接リンクしましょう

ユーザーがより詳細の情報にたどりつけるようにリンクを付けます。その際に不要なコンテンツのページのリンクを避けるようにしましょう。
これは、Webページ上のリンクを含む際に従うべき3規則です。


容易にリンクを開けるように、リンクは適切な長さにしましょう

リンクが短すぎると、リンクを選択するためにスクリーンの右側でタップやクリックをすることがユーザーはむずかしくなります。


説明を含んだわかりやすいリンクラベルを使用しましょう

説明を含んだリンクラベルはユーザーにリンクに含まれた内容を伝えます。ユーザーがリンクを開いたときに、その内容が期待と異なるものでないようにしなければなりません。さらに、説明を含んだリンクラベルはユーザーが正しい内容を探すのに役立ち、検索エンジンのランキングにも影響します。


リンクラベルには動作動詞を使用しましょう

「開始するためにこれらのヒントを確認しましょう!(Check out these tips for getting active)」「妊娠中の健康的な食事の方法を見つけましょう!(Find out how to eat healthy during pregnancy)」「糖尿病についてより深く知りましょう!(Read more about diabetes)」のようなすぐに行動を行えるようなリンクラベルを選びましょう。動作動詞はユーザーがあなたのコンテンツに関わりやすくなります。


前:保険プランの検索
後:自分に合った保険プランを見つけましょう

(Figure 3.7は省略します)

一般的なリンクラベルは使わないようにしましょう
何を期待しているのかわからなくなります。
例えば、次のようにリンクに名前を付けることは避けてください

  • ここをクリック(Click here)
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3.7.リンクが分かりやすいよう色や下線を使いましょう

ユーザーが リンクをクリックできると認識しやすいようにリンクを表示します。そして、あなたのサイトを通じて一貫性を保つようにします。


リンクの表示についての確立されたガイドラインに従いましょう

  • 特定の理由がない限り、開く前のリンクには青を、開いたあとのリンクには紫を使用する。
  • 使用する色が文章の中で目立つかどうかを試す―そして色覚異常の人々であっても見えるようにする。
  • リンクに下線をひくことによってユーザー、とくに視力低下者やほかのアクセスすることへの問題がある人々にとってリンクであると分かりやすくなる。
  • 操作メニューのような明らかにリンクとわかるものについては下線を使用しない。

(Figure 3.8は省略します)

3.8.学びに役立つ画像を使いましょう

文章をサポートするシンプルな画像を載せると、リテラシーの低いユーザーが、健康情報を見つけ、理解し、伝えて、活用するのに役立ちます。


あなたの文章をサポートする画像を選びましょう

画像はあなたの伝えたい内容を説明し理解を高める方法として使用すべきであって、飾りとしてではありません。さらに、不要な画像(キャラクターなど)は内容を邪魔し、広告と間違われる可能性があります。


リアルな画像を選びましょう

リアルな写真を使って、健康行動を説明したり、医学的な概念を明確にしたりします。ユーザーは、モデルのような人々よりもリアルな人々が被写体である画像を好みます。また、様々な人種や民族の人を登場させることも重要です。そうすることで、より多くの人がサイトで「自分」を見つけることができ、コンテンツに共感しやすくなります。

人は画像に強く反応することを念頭に置き、必ず画像を含むサイトをテストしてください。画像に対するユーザーの反応に注目してください。意外な反応があるかもしれません。

やってみよう
解剖学や医学的な概念を表現する際には、シンプルな線画が効果的です。

(Figure 3.9は省略します)

画像の意味がすべてのユーザーにわかることを確認しましょう。

スクリーン・リーダーを使う人のために、グラフィックスを説明する代替テキスト(「altタグ」または「altテキスト」と呼ばれる)を使用してください。

スクリーン・リーダーとは、コンピューター画面上のコンテンツやナビゲーションを音声や点字で「読む」プログラムです(画面読み上げソフトウェア)。主に目の不自由な方が使用します。


3.9.適切なコントラストを使いましょう

白または非常に明るい背景に暗い色の文字が最も読みやすいです。反転したテキスト(暗い背景に明るいテキスト)は控えましょう。また、背景をはっきりさせることも重要なので、模様や画像は避けましょう。

(背景の例は省略します)


3.10.コンテンツを印刷しやすいようにしましょう

多くのリテラシーの低いユーザーは画面上で文章を読むよりもウェブサイトのページを印刷することを好みます。

さらに、彼らは得た健康情報についてコンピュータの利用をしない友人や家族と共有したり、その印刷した情報を冷蔵庫に貼ったりしたいかもしれません。そのため、あなたのコンテンツを印刷ができるようにすることが重要になります。

(Figure 3.10は省略します)

"このページを印刷して、この情報を必要としている家族に見せてあげたい"

印刷できるようにデザインされたページには、印刷用のリンクを使用しましょう

印刷することが意図されたページ(医師に持参する問診票のようなもの)は印刷用のリンクがユーザーに迅速にわかるように配置する。印刷用のリンクやアイコンはそれぞれのページにおいてはっきりと見やすくする。可能であれば、ユーザーに印刷のオプション(単一ページのみ、セクションすべて、もしくは文章の一部分のみ)を提供する。


印刷したものがユーザーにとって利用しやすいようにしましょう

下記のデザインガイドラインに従ってください。


  • 余白を多く使用し、適したカラーコントラストを用い、それぞれのページに明確なタイトルをつける。
  • ユーザーがページの印刷をクリックしたときにのみ使われる印刷スタイルシートを指定する。
  • 様々なデバイスからの印刷を可能にするために、パーセンテージベースの流動的な幅でサイトをデザインする。
  • サイトにページ番号がある場合は、印刷時にページ番号が上書きされるようにするか、ユーザーに「すべてのページを表示する」というオプションを与える。


3.11.障がいを持った人にとっても利用しやすいようなサイトにしましょう

連邦政府の運営する全てのウェブサイトは、障がいを持つ人々にとってもアクセス可能でなくてはなりません。これは大抵<米国リハビリテーション法508条に言及されていて>第508条のコンプライアンス(法令順守)と呼ばれています。

508条のガイダンスは全ての人のために役立つようなウェブサイトの設計を支援します。
ここに508章に従って取り上げられている重要な考慮すべき事柄を数例列挙します(各事柄の詳細は省略します)。

  • スクリーンリーダー(コンピュータの画面読み上げソフトウェア)やその他のソフトウェアがあなたのサイトを読むことができることを確認する。
  • 一貫したページタイトルとセクションごとの見出しをつける。
  • ユーザーがキーボードだけでサイトの操作ができるかどうかを確認する。
  • 特にボタンには強めのカラーコントラストを選ぶ。
  • アクセスしやすくするために、プラグイン(ソフトウェアに機能を追加する小さなプログラムのことを指すこと)や他のソフトウェアを試験する。

Webアクセシビリティについての詳細は、Web Accessibility Initiativeをご参照ください。


3.12.ウェブサイトをレスポンシブにしましょう

ユーザーはウェブサイトを携帯電話や、タブレット、パソコンなどの機器を使用して見ます。そのため、どの機器であっても問題なく見られるように設計する必要があります。より多くの人がモバイル機器からウェブを使用するようになっています。特にリテラシーの低い人々はウェブを見る手段がモバイル機器に限られる場合があります。

このようにウェブコンテンツへのアクセス方法が変化したことで、ウェブデザイナーは、モバイルユーザーにコンテンツを提供するために、ネイティブ・モバイル・アプリ、ウェブ・アプリ、モバイル・ウェブサイトなど、さまざまな選択肢を持つことになりました。

多くの健康系ウェブサイトでは、レスポンシブデザインが最良の選択です

レスポンシブデザインのウェブサイトは、ユーザーのデバイスの画面サイズ、プラットフォーム、方向に合わせてコンテンツを表示します。

(Figure 3.11、3.12は省略します)

レスポンシブデザインの最大のメリットは、1つのウェブサイトで、様々なデバイスや画面サイズに合わせて最適化されたコンテンツを配信できることです。しかし、レスポンシブデザインは、ユーザーのデバイスに合わせて、コンテンツではなくフォーマットを調整することに限られていることを覚えておいてください。だからこそ、最小のスクリーンサイズに合わせてコンテンツを開発することが重要です。そのためには、コンテンツ開発者は厳しい選択を迫られ、考え抜かれた論理的なコンテンツの階層を作り、余分な情報をカット(またはリンク)する必要があります。

ほとんどの場合、ユーザーはサイトがどのように作られているかなど考えないで、デバイス間でシームレスな体験を求めています。


3.13.モバイルユーザーのニーズに合わせたモバイルコンテンツをデザインしましょう

このガイドに記されている基本的なデザイン原則の多くは、デスクトップと同様にモバイルデザインにも適用されますが、モバイルでデザインする時にはさらにいくつかの点を考える必要があります。

各画面に表示する要素の数を制限する

デザインをすっきりさせることは、小さな画面でコンテンツを見るモバイルユーザーにとって特に重要です。シンプルな画面であれば、ユーザーは探しているものをより効率的に見つけられます。

(Figure 3.13は省略します)

ページ上部のコンテンツと機能を優先させる

ユーザーがコンテンツを見る時間は、ページの最上部が最も長いと言われています。ユーザーがページ上部で操作する要素-ボタン、メニュー、リンクなど-のスペースを狭くして、コンテンツのためのスペースを確保しましょう。

(Figure 3.14は省略します)

インタラクションを容易にする

モバイル機器は画面が小さいため、ボタンを選択したり、文字を入力したりすることがデスクトップパソコンよりも難しい場合があります。また、身体的な理由で運動機能(クリックやタッチの正確さ)が低下しているユーザーにとっては、モバイル・インターフェースの使用が難しい場合もあります。

この点を考慮してください:
  • ユーザーが入力する文字の量を制限する。
  • 小さなデバイスを使う人が簡単に選択できるように、大きなボタンやタップ可能なエリアを使用する。また、それらの周りには十分なスペースを確保してください。
  • よく使うボタンは、届きやすい場所に配置してください。届きやすい場所は、デバイスの大きさやユーザーの持ち方によって異なります。多くの場合、画面の中央や下部の方が上部よりも届きやすいです。
(Figure 3.15は省略します)

小さな画面でウェブサイトをを見るモバイルユーザーのため、デザインを整理し障害がないようにしておくことは重要です。シンプルなデザインによりユーザーは探しているものをより効率的に見つけることができます。


  • 優先度が高い内容については、トップに持ってくる
  • 使用方法を簡単にする(ユーザーが書き込むところ制限する、ボタンを大きくし押しやすくする、ボタンの場所を見つけやすくする)
  • ラジオボタンを使ってみましょう。リテラシーの低いユーザーの場合、大きなラジオボタンは、モバイルデバイスで選択を行う最も簡単な方法です。チェックボックスやインタラクティブなアイコンの代わりにラジオボタンを使用しましょう。

やってみよう
「タップしやすさ」を向上させるには、ラベルがラジオボタンに関連付けられていることを確認しましょう。そうすれば、ラベルもタップ可能になり、ユーザーがタップできる範囲が広がります。


まとめ

ウェブコンテンツを成功させるためには、うまく書いただけでは不十分であり、読みやすく見えることが必要です。デザインとレイアウトを徹底的に工夫することで、情報の提示方法によって読み手が圧倒されると感じたり、戸惑いを感じたり、混乱を感じたりしないで内容に集中できるようにすることが可能になります。

ウェブサイトを設計する際には、すべてのユーザーについて―モバイル機器のユーザーとアクセシビリティを求めるユーザーを含めて―考慮すること。コンテンツへのアクセス方法が何であれ、コンテンツがアクセスしやすく、かつナビゲーションしやすいようにしましょう。

次のセクションでは、コンテンツの構成とナビゲーションについて―すなわち、ユーザーがサイト上で、求める情報を見つけるための適切なページに簡単にたどり着けるようにすることについて、説明します。

4.コンテンツを整理し、ナビゲーションを簡素化しましょう

はじめに

この節では、さまざまなサイズのデバイスにおけるウェブサイトの構造に関わる2つの重要な概念について説明します。


コンテンツの体系化(情報アーキテクチャとも言われます)

情報アーキテクチャとは、ウェブサイト上で情報が分類される方法です。それは、典型的にはカテゴリ構造<分類学>とラベルが含まれます。

例えば、書店内を見て回ると考えてください。はっきりと分類された区分<ミステリー、ノンフィクション、ティーン、ビジネス>は、あなたが探しているものを見つけるのに役立ちます。コンテンツをうまく整理すると、ユーザーが情報をすばやく見つけることができます。


ナビゲーション

ナビゲーションとは、ユーザーがあなたのウェブサイトのページをどのように移動するかを指しています。ナビゲーションの要素は、メニュー、タブ、見出し、パンくずリスト、サイトマップ、および「戻る」や「次」ボタンを含みます。

コンテンツの体系とナビゲーションを、シンプルで一貫性があるようにしてください。ユーザーは通常、トピックに注目しています。ユーザーの求めるものに沿って体系化と分類を行い、彼らにとって親しみのある用語を使用しましょう。


4.1. シンプルで魅力的なホームページを作りましょう

研究によると、リテラシー能力の乏しいウェブユーザーは、一度に複数の概念を処理することが難しいと言われています。ですから、ホームページは、サイトのコンテンツへの入り口がシンプルで焦点が合っているものである必要があります。このことは、モバイルサイト、さらにはレスポンシブサイトをデザインする時にも有効です。


ホームページはできるだけシンプルにしましょう

ホームページ上は、文字の量を少なくしておきましょう

(Figure 4.1は省略します)

便利なホームページは、ほとんどがリンクと短い説明文で構成されています。優れたデザインのホームページは、多くの余白と大きなボタンを備えています。

(Figure 4.2は省略します)

多言語で情報を提供している場合は、トップページから英語以外のセクションに直接リンクするようにしましょう。また、ユニバーサルメニューバーから英語以外のセクションにリンクすることも重要です。そうすれば、ユーザーが検索エンジンを使ってコンテンツを見つけたときに、英語以外のコンテンツも見つけられます。

4.2. ユーザーのことを考えて、コンテンツにラベルを付けて整理しましょう

専門用語やキャッチーな言葉ではなく、ユーザーが知っている言葉を使いましょう。あなたの目的は、ユーザーが必要なものをできるだけ早く見つけられるようにすることです。

(Figure 4.3は省略しますが、説明を紹介しておきます)

Office of Women's Healthのウェブサイトには、読者に適した分類ラベルのナビゲーション欄があります (10歳から16歳の女子のためのサイト)。例えば、メンタルヘルスのセクションでは専門的な用語ではなく「あなたの気持ち」と表示されています。


健康情報をグループ化する時のメンタルモデル(方法)は人によって異なります。様々なユーザーが必要な情報を見つけられるように、複数のカテゴリーでトピックを繰り返し表示します。例えば、カードソーティングに基づいて、マンモグラフィに関するコンテンツは、healthfinder.govでは3つのカテゴリー(「がん」「女性」「医師の診察」)に表示されています。

やってみよう

次に、サイト内のコンテンツに優先順位をつけたり、ランク付けしたり、整理したりする必要が生じたら、ユーザーと一緒にカードソーティングを試してみましょう。

カードソーティングとは、コンテンツを直感的に整理するためのユーザー中心のデザイン手法です。まず、ウェブサイトの各ページにインデックスカードを作ります。そして、そのカードをグループごとに分類してもらいます。これにより、ユーザーがどのようにコンテンツが整理され、ラベル付けされることを期待しているかわかります。

また、カードを重要度や関心度の高い順に並べてもらうこともできます。ODPHPが実施したカードソーティングの演習では、リテラシーの低いユーザーは、次のような種類の健康情報が最も有用であるという優先順位をつけました。

  • 知っておきたい基礎知識(理解)
  • もっと知りたい(評価)
  • 私にもできる(障壁の克服)
  • これは私にとってどのように役立つのか?(動機付け)
  • 自分が行動を起こすための方法(戦略)
  • どこに行けば助けてもらえるか?(コミュニティリソース)

カード・ソーティングの詳細については、usability.govをご覧ください。


4.3. 直線的な情報のパス(Linear information path)を作りましょう

直線的な情報のパスは、リテラシーの低いウェブユーザーが、ウェブサイト上のコンテンツを学び、理解し、移動するのに役立ちます。

サイト内の各トピックやセクションには、それぞれ直接的なパスがあります。このパスは、一連のページや画面を使ってユーザーにセクションを案内します。最初のページでは、ユーザーにコンテンツの概要を説明します。セクション内の各ページには、次のページに移動するためのボタンやリンクを設けます。このようにして、ユーザーは直線的な情報のパスを簡単にたどることができます。

直線的な情報のパスは、情報を論理的な順序で提示します。スライドショーのように、明確で論理的な順序があると考えてください。

(Figure 4.4は省略します)

コンテンツを論理的なまとまりに分割できない場合は、1つのページにまとめましょう。ウェブユーザーにとっては、明確に論理性のない一連のページをクリックしていくよりは、スクロールしたほうが良いです。また、重要な情報は必ずページの一番上に置くようにしましょう。

(Figure 4.5は省略します)

4.4. ボタンに意味のあるラベルをつけましょう

ボタンやリンクには、ユーザーがどこに行くのかを示すラベルを付けましょう。クリックすることで目的の場所に行けると思わせることができれば、ウェブユーザーはクリックします。ページ番号や、「次へ」「戻る」などの一般的なラベルは使用しないでください。代わりに、「コレステロールは何か?」や「ホームページに戻る」のような具体的なラベルを使いましょう。


(Figure 4.6は省略します)

4.5. クリックできる要素を認識できるようにしましょう

ボタンやリンクなど、クリックできる要素が見つけにくいと、ユーザーは不満を感じます。

見つけやすいボタンをデザインしましょう

そのためには:
  • 大きく
  • 明るく
  • 周りの文字や背景と対照的な色で
  • クリックできるということを明確に
クリックできるとわかるボタンには、縁取りと影がついています。縁取りや影がないサイトデザインの場合は、ボタンの形を長方形にし、角を丸くします。

(Figure 4.7は省略します)

ボタンのラベルはわかりやすいものにしましょう

"進む(go) "や "スタート(get started)"のようなラベルを使用してください。リテラシーの低いユーザーの中には、"送信(submit)"という言葉を理解できない人もいます。

ボタンと他の場所と区別しましょう

クリックできない場所がボタンのように見えると、ユーザーは混乱してしまいます。そのため、見出しに背景色をつけたり、カラフルなボックスをたくさん配置することは避けましょう。

(Figure 4.8は省略します)

リンクには明確な視覚的手がかりをつくりましょう

リンクがクリックできることを明確にすることで、ユーザーがテキストにマウスオーバーしてクリックできるかどうかを確認するようなことは避けましょう。例えば、リンクの色は青など、本文よりも目立つ色にします。(リンクをクリックできるように見せる方法については、セクション3を参照してください)

(Figure 4.9は省略します)

すべてのリンク要素をクリック可能にしましょう

写真、アイコン、文字など、互いに関連するすべての要素をクリック可能にします。ユーザーは、大きなターゲットエリアをクリックしやすくなります。リンクにアイコンを使用する場合は、文字ラベルなど、他の視覚的な手がかりと組み合わせてください。

(Figure 4.10は省略します)

一貫性を持たせましょう

どのようなボタンやリンクのスタイルを選択しても、ウェブサイト全体で一貫して適用されるようにしましょう

4.6.ブラウザの"戻る"ボタンが機能しているか確かめましょう

リテラシーの低いウェブユーザーは、ウェブサイトを移動するために「戻る」ボタンをよく使用します。ですから、このボタンが予想通りに常に機能することが非常に重要です。

例えば、ユーザーが登録ページやフォームのデータ入力をする場合に、ユーザーが「戻る」ボタンをクリックしても情報が削除されないようにします。

4.7.ホーム画面やメニュー画面に簡単にアクセスできるようにしましょう

ウェブユーザーは、ページの最初からやり直したり、ページ間をジャンプしたりするオプションを求めています。しかし、リテラシーの低いユーザーは一般的にパンくずリストを使わないことがわかっています。ODPHPのユーザビリティ・テストでも、リテラシーの低いユーザーは、サイトのヘッダーのロゴをクリックしてホーム画面に移動することはほとんどありませんでした。

パンくずリストとは、ユーザーがウェブサイト内での位置を確認したり、中間のページに効率的に移動したりするのに役立つナビゲーション要素です。通常、パンくずリストはページの最上部(通常はブラウザのアドレスバーの下)に表示されます。例えば、ユーザーが糖尿病の症状について読んでいる場合、パンくずリストは次のように表示されます。
ホーム > 健康状態 > 糖尿病 > 症状

そのために、トップページかメインメニューにユーザーが戻るための大きなボタンを、サイト上に載せましょう。

(Figure 4.11は省略しますが、説明を紹介しておきます)

NIH SeniorHealthは説得力のある左側の案内メニューを使用しています。ユーザーがサイトのどこにいるかを簡単に確認できるよう、現在のセクションを案内バーで異なる色で強調して表示しています。


モバイル用のメニューボタンを使いましょう

モバイル端末はスペースが限られています。モバイルでは左のナビゲーションメニューを使う代わりに、モバイル用に最適化されたカスタムメニューを開くメニューボタンを追加しましょう。これにより、ユーザーは必要に応じてメニューを拡張することができます。

メニューにホームボタンやホームオプションを設けることで、モバイルユーザーがホームページに戻ることができます。

ユーザーは、元の場所に戻る必要はなく、ホームページから新たにスタートできると評価します。

"間違いをより簡単に修正できるので、"ホーム"ボタンが好きです。"

4.8.ユーザーに閲覧の選択肢を与えましょう

リテラシーの低いユーザーの多くは、検索ボックスを使わずにコンテンツのカテゴリーで閲覧します。これは以下の理由によります。

  • 検索ボックスが見当たらない(ウェブ経験の浅いユーザーの多くは、どこに検索ボックスがあるのかわからない)
  • スペルミスが気になる
  • 検索結果に圧倒されてしまう
  • 検索ボックスのプレースホルダーテキストを理解していない

複数の方法でトピックを閲覧できるようにする(例えば、A to Zリストでトピックのカテゴリー別に閲覧するなど)

(Figure 4.12は省略しますが、説明を紹介しておきます)

healthfinderのウェブサイトは、ユーザーが、トピックカテゴリー、AtoZリスト、検索ボックス、または左側のメニュー一覧から健康情報を検索することができます。

4.9シンプルな検索機能を搭載しましょう

リテラシーの低いウェブユーザーは、シンプルで使いやすい検索機能を利用する傾向にあります。

検索機能は、見つけやすく、使いやすいものにしましょう

大きなテキストボックスとわかりやすいボタンを使用する。

検索ボックスの横に「スタート(get started)」または「進む(go)」ボタンを使用しましょう

ODPHPが実施したユーザビリティ・テストでは、リテラシーの低いユーザーが、検索ボックスに用語を入力せずに「検索(search)」ボタンをクリックしていました。わかりやすいラベルがついたボタンは、ユーザーに最初に用語を入力する必要があることを知らせます。

一般的なスペルミスを考慮しましょう

リテラシーの低いユーザーにとってスペルは難しいので、ユーザーがスペルを間違えても検索エンジンが動作するようにしてください。スペルチェックやオートコンプリートで、ユーザーの検索をサポートします。

4.10.検索結果をわかりやすく表示しましょう

ユーザーの検索体験を効率化するために、最も関連性の高い検索結果を最初(トップ)に表示します。

検索結果を表示する際

  • 1ページに表示される結果の件数を制限する(コンテンツが多いページとは異なり、スクロールしなくていいように番号を振ったページを使う)
  • ページのタイトルは分かりやすいものにし、各検索結果に対して、簡潔でわかりやすい言葉を使った説明を加える
  • できる限り、長いURLの使用を避ける
  • ユーザーがぱっと見て分かるようにURLにキーワードを使用する
  • 検索結果の間に余白を多く設ける
  • 大きく読みやすいフォントを使用する
  • 検索結果では検索ワードを強調表示する

まとめ

ユーザーにコンテンツを読んでもらうためにはまず、ユーザーの目に留まることが必要です。
ユーザーになじみのある用語を使った簡潔で一貫性のあるナビゲーションを構築し、ユーザーにとって意味が通るようにコンテンツを整えること。
検索別や項目別の閲覧など、ユーザーに選択肢を与えると、どんな機器からでもユーザーにとって最もやりやすい方法でサイト内をナビゲートすることができるようになります。

サイトがうまく構成されていれば、ユーザーは求める情報をすばやく簡単に見つけることができます―そしていらいらしたり、最終的にあきらめてしまったりする可能性が低くなります。

次のセクションでは、マルチメディアと双方向型コンテンツでユーザーを引き付ける戦略について説明します。

5.ユーザーを引きつけましょう

はじめに

セクション2では、ユーザーエンゲージメントのアイデアを紹介しました。エンゲージメントとは、行動を起こす動機付けとなる方法で、ユーザーを健康コンテンツに参加させるプロセスです。動画、音声、映像、対話機能などのマルチメディアを使用することは、ユーザーを引き付ける効果的な方法です。

例えば、ユーザーに次のような機会を提案することができます。

  • それを気に入ったユーザーの声を紹介する動画を見る
  • ユーザーが気にする変数を反映するように画像をカスタマイズする
  • 個々の目的に合わせた情報を得るために年齢や体重といった個人データを入力する

体裁やレイアウトを整えると、ユーザーエクスペリエンスが劇的に向上することを覚えておいてください。ユーザーにとって使いやすいフォーム、クイズ、ボタン、リンクやモバイルアプリを設計することで、マルチメディアのコンテンツとの相互利用がユーザーにとって容易になります。

ユーザーが、どこからでも便利にコンテンツにアクセスしたりシェアしたりできるようにしておくことも重要です。ウェブサイトにソーシャルメディアのボタンを加えることで、ユーザーに自身のオンラインネットワークでコンテンツをシェアしてもらうようにすることができます。


5.1. マルチメディアで情報をシェアしましょう

可能な場合は常に、複数のフォーマット―例えば、音声、動画、インタラクティブなグラフィクス、クイズ、スライドショーなど―で健康情報を提供すること。マルチメディアの利用により、リテラシーの低いユーザーに対しては特に、学びと関与を向上させることができます。


自分のコンテンツの支援となるようなメディアを選択する

どのフォーマットを使用するか決める前に、伝えようとしている情報について考えること。メディアのタイプに応じて、それぞれ独自の方法で学びを促進します。


例えば、次のような点を考慮しましょう

  • 画像を使用して、空間的な情報(地図など)を見せる
  • 文章(テキスト)を使用して、ユーザーに長期に渡って覚えておいてもらいたい情報を伝える
  • 音声を使用して、ユーザーに短い期間だけ覚えておいてもらいたい情報を伝える

利用するそれぞれのメディアは、文書を補うものであることを忘れないこと―装飾のためだけにメディアを使うと、ユーザーを混乱させることになります。


メディアをアクセスしやすいものにする

音声や動画を使用する際、代替テキストまたは文字起こしした文章を必ず付けましょう。そうすることで、すべてのユーザーにとってアクセスしやすいコンテンツとなります。

(Figure 5.1は省略しますが、説明を紹介しておきます)

NIH SeniorHealthは、人気の高い健康に関するトピックについての短いビデオクリップを提供しています。それぞれの動画には、字幕とヘルプ機能が付いています。


専用のYouTubeチャンネルに動画を投稿するのであれば、クローズドキャプションを利用できるようにしておきましょう。詳細はYouTubeの利用方法から見ることができます。


クイズについて

積極的な学びを促すためにクイズを利用しましょう。リテラシーの低いユーザーはクイズを好み、完成させようとします。それぞれの質問の後に、役立つフィードバックを提供します。

(Figure 5.2は省略しますが、説明を紹介しておきます)

Healthfinder.govのユーザビリティ試験では、リテラシーの低い参加者の多くが、ウェブサイトの子育てクイズを完了し、それを気に入ったと報告しました。それぞれの質問に答えた後、ユーザーには、なぜその回答が正しいか、あるいは間違っていたのかを説明する情報が示されます。


やってみよう

自分のウェブサイトのコンテンツをよく観察し、クイズとして置き換えることができるものは何かないかと考えてみましょう。クイズは特に、リテラシーの低いユーザーには人気があります。


5.2. 直感的に使えるインタラクティブなグラフィックやツールをデザインしましょう

インタラクティブなグラフィクスおよびツールでは、ユーザーが自分で選択し、その選択を反映した結果を見ることができます。いろいろなタイプの画像およびツール―決断の補助材料、情報画像、映像、グラフ、地図など―はインタラクティブとなり得ます。


一度に一つの選択肢を表示する

一度に2つ以上の選択をユーザーに求めることは避けましょう。これにより、ユーザーが手に負えないと感じることがなくなります。

(Figure 5.3は省略しますが、説明を紹介しておきます)

Healthcare.govでは、ユーザーが当該地域の医療費に関する情報を見る前に、一度に一つの質問をします。


視覚的な手がかりを使い、画像やツールが変わったことを示す

ユーザーは変化が見えないと、画像やツールが機能していないと思ってしまいます。87変化を示す視覚的な手がかりを使うこと―明確であるほど良いでしょう。


直感的に分かる操作にする

ユーザーは操作をすることで、画像やツールと相互作用をはかります。ユーザーになじみがある、良く使われる操作を含めること―例えば、ラジオボタン、ドロップダウンリスト、オートコンプリートの入力欄など。
簡単に、最初に戻ってやり直せるようにしましょう。

ユーザーが簡単に、選択したものを取り消して最初から始められるようにすること。複数のページで構成されたフォームやツールでは、「初めに戻る」ボタンを作ってもよいでしょう。


5.3. その人に合った情報を提供しましょう

ユーザーの個人的な興味や性格に合わせてコンテンツをカスタマイズするようユーザーを促しましょう。こうすることで、ユーザーによるコンテンツとの相互作用を促すことができます。

(Figure 5.4は省略しますが、説明を紹介しておきます)

Healthfinder.govのmyhealthfinderツールは、ユーザーが個人に合わせた提案を受け取れるよう、年齢、性別、妊娠の状態を入力するよう促しています。


情報をあまりにも多く求めることはしない

ユーザーは、個人に合わせた健康情報を求めていることは知られていますが、個人情報は多く入力したがりません。ユーザーが、自分の情報をいくつか入力するだけで済むインタラクティブなコンテンツを検討しましょう。

(Figure 5.5は省略しますが、説明を紹介しておきます)

myhealthfinderツールを利用する際、ユーザーは性別と年齢を入力するだけが良いでしょう。


あなたが尋ねた情報と、ユーザー個人に合わせた結果との間につながりを作ること。
言い換えると、ユーザーに、なぜその情報の入力が求められたのかが分かるようにするということです。これにより、ユーザーの限られたワーキングメモリを補うことができます。


"私は(年齢を入力することを)まったく気にしていません。そうすることで、他の年齢層ではなく、私にぴったり合った情報を得ることができます。"

(Figure 5.6は省略しますが、説明を紹介しておきます)

healthfinder.govのmyhealthfinderで得られた結果のページは、ユーザーが前の画面で入力した個人情報の概要を含んでいます。


5.4. ユーザーに使いやすいフォームとクイズを作成しましょう


フォームとクイズは、直感的に理解しやすく利用しやすいことが重要

ページ上で、使用方法を視覚的に分かりやすくします。
フォームに入力したりクイズに答えたりするのに必要な指示を見るために、ボタンやリンクをクリックするよう求めるのは避けましょう。

リテラシーの低いユーザーに典型的なリーディング・パス(読み方)に合わせるため、フィールドは縦方向の一覧とし、それぞれのフィールドの上部に入力の説明をつけるように表示します。入力説明がセクションの始めやフィールドの右側にあると、ユーザーはそれらを見落としてしまうからです。

(Figure 5.7は省略しますが、説明を紹介しておきます)

ユーザーはmyhealthfinderのフォームで、簡単に指示に従うことができます。

優良事例のシナリオとは、自分が作成するクイズやフォームが、初めから多くの指示を必要としない、直感的に理解しやすいものであることです。


フォーム上の情報を、意味のあるカテゴリーに分ける

ユーザーにとって意味が分かる方法で情報を分類すると、ユーザーに容易に理解してもらえるようになります。

(Figure 5.8は省略しますが、説明を紹介しておきます)

医療保険(Medicare)給付金を申請する場合、フォームは「申請者に関する情報」のように扱いやすいページにまとめられています。


長めのフォームやクイズを作る場合は、以下の2つのレイアウトの選択肢のうち1つを使いましょう。

  • ユーザーに一度に一つのフィールドを見せる
  • ユーザーがスクロールしてすべてのフィールドを見られるようにする

(Figure 5.9は省略しますが、説明を紹介しておきます)

このhealthfinder.govの子育てクイズでは、それぞれの質問を新しいページに表示します。


(Figure 5.10は省略しますが、説明を紹介しておきます)

このSocial Securityアプリの最初のページでは、誰のためにこのフォームを入力しているかの詳細を尋ねています。


フォーム上で要求する情報を最小限にとどめること

ユーザーが入力する情報は少なければ少ないほど良いでしょう。また、ユーザーに登録を求めることは避けるようにします。もし、登録ページが必要な場合は、要求する情報を出来るだけ少なくすること。

次のことに気を付けましょう

  • ログインと登録の違いを見分けられるようにする
  • ユーザー名をメールアドレスにする
  • 登録を求める場合は、ページを3つ以上の画面にならないようにし、その手がかりを示す(例、「3ページ中1ページ目」)
  • 質問と答えを示した最終結果のページを含める
  • 新しいページに修正が必要なフィールドを表示し、情報を修正するための方法を示す。

(Figure 5.11は省略しますが、説明を紹介しておきます)

ユーザーがすでにHealthcare.govにログインしている場合は、ユーザーの名前が自動でフォームに入力されるようになっていいます。


モバイル機器用のフォームを設計する

オンラインフォームは、その重要情報や要素が画面外で動作する場合、モバイルユーザーにとって特に厄介になり得ます。

ユーザーが、フォームを完成させるために必要な情報と、それに関連するフィールドを同じ画面で見られるようにすること。それができないと、ユーザーの記憶とコンテンツの理解に依存することになります―そして、リテラシーの低いユーザーはその時点で、何が求められているのかを読み理解することに困難を覚えることになるでしょう。


5.5. ソーシャルメディアでのシェアの方法を考えましょう

近年のデジタル時代では、人々はネットにつながり、モバイル機器を持っているというだけではない―ソーシャルメディアにもつながっています。

実際に、インターネットを利用する4人のうち3人の成人は、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、ピンタレスト、リンクトインといったソーシャルメディアプラットフォームを利用しています。そのため、あなたのコンテンツを、ユーザーにソーシャルメディアでシェアしてもらう機会を与えることが重要となります。

ユーザーの多くが、自分の電話からソーシャルメディアにアクセスすることに留意してください。


素早く簡単にシェアできるようにする

ウェブサイトにソーシャルメディアのボタンを埋め込むこと。サイトのヘッダーやフッターに固定のソーシャルメディアボタンを加え、ユーザーが簡単にあなたのソーシャルメディアページをフォローしたり「いいね」したりすることができるようにしましょう。

ソーシャルメディアのボタンはコンテンツの文章の下に入れること―これにより、ユーザーは情報を読んでから、シェアするかしないか判断することができます。サイトがごちゃごちゃしないよう、ソーシャルメディアのボタンの多用に気を付けること―ユーザーがシェアしたいと思われるページにのみ入れましょう。

(Figure 5.12は省略しますが、説明を紹介しておきます)

healthfinder.govは、サイトの左下に固定のソーシャルメディアボタンを入れています。


(Figure 5.13は省略しますが、説明を紹介しておきます)

ユーザーは動画シェアのアイコンをクリックし、どのソーシャルメディアにシェアするかを選択することができます。


まとめ

インタラクティブでマルチメディアな要素―動画、音声、画像、個人データに基づきカスタマイズした情報などは、ユーザーが積極的にあなたのコンテンツにアクセスするのに役立ちます。

簡単で直感的に分かりやすいインターフェースのフォーム、クイズ、画像やその他のマルチメディアコンテンツを設計し、ユーザーが手軽に印刷したりソーシャルメディアにシェアしたりすることができるようにしましょう。ユーザーがあなたのコンテンツにつながっていると感じれば、彼らはより積極的に行動を起こし、態度を変えるようになります。
インタラクティブな機能が直感的に分かりやすいかどうか、常にユーザーに対して試験をしましょう。

次のセクションでは、リテラシーの低いユーザーに対して、研究や行動に関する試験への参加を促すための優良事例を説明します。

6.リテラシーの低いユーザーでサイトをテストしましょう

はじめに

誰があなたのウェブサイトを利用するかについては決めることができません。ウェブサイトはみんなのものです。

このガイドで先述のとおり、アメリカ合衆国の半数もの成人はリテラシーが低いのです―そして10人中およそ9人がヘルスリテラシーが低いのです。このガイドの情報は、リテラシーの低いユーザー向けの設計を行う際に、有効なスタート地点となるものの、特定のツールやウェブサイト上でのユーザーの行動を予測することはできません。

皆が使えるようにする必要があります。そのため、あなたのウェブサイトやデジタル製品をリテラシーが低い個人でテストすることが非常に重要です。

ユーザビリティの試験はいろいろな形で行うことができます。一般的には、「人々が使いやすくなるようにまたは使いやすいと証明することを目的として、自分が作成している/設計している/構築しているもの(またはすでに作成した/設計した/構築したもの)を利用しようとする人を観察すること」です。

この目標は、ユーザーの動機とオンライン上の行動を真に理解するために、ユーザーからフィードバックを得ることです。ユーザビリティテストを行うことは、次のような重要な疑問の解答を得る一助となります。

  • ユーザーは、自分が探している情報を見つけることができるか?
  • ユーザーは、この情報を理解し行動することができるか?
  • ユーザーインターフェースの構成は直感的に理解しやすく使いやすいか?
自分がウェブサイトを企画し、設計し、開発したとおりに使われているのか、早期かつ頻繁に、ユーザーに試してもらいましょう。

どの方法を選ぶかは、調査の目的、ユーザーにアクセスしてもらいたい頻度、プロジェクトの詳細、時間軸や予算に依存します。
ユーザビリティテストについてはこちらをご覧ください。

下記に、リテラシーの低いユーザーに対してユーザビリティテストを行う際に考慮すべき重要な戦略を解説します。


6.1. リテラシーとヘルスリテラシーが低いユーザーを募集しましょう

ヘルスリテラシーを測るように設計されている大抵のスクリーニング手段<Test of Functional Health Literacy in Adults and the Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicineのようなテスト>は、本人に直接施行され、薬が使用される状況の患者を対象としたものです。

これらの選択肢は、ウェブサイトと健康コンテンツの開発、特に民間企業の人材募集のデータベースを使う人々にとっては、実用的またはあまり便利ではないかもしれません。その代わりに、一般的に収集された人口統計データに基づいて、ヘルスリテラシーを知る方法があります。

例えば、以下の基準は、ヘルスリテラシーが低いウェブユーザーを特定するための代用として使用できます。

  • 高校教育かそれ以下
  • 低所得-連邦政府の設定した貧困ラインの200%未満(または2015年に4人家族で48,500ドル以下)
  • 過去1年間で健康情報をネットで検索していない

また、簡単な1問でのヘルスリテラシーの測定を試すこともできます。スクリーニングの一環として、参加者に尋ねてみましょう。"問診票を自分で記入する自信はありますか?"

募集の際には、何らかの個人的なつながりが大きな違いを生むことがあることを覚えておいてください。共通の知人が勧めてくれたと言えば、人々はあなたの調査への参加を考えてくれる可能性が高くなります。

信頼できるコミュニティ・リクルーターを利用して、成人学習センター、連邦政府認定のコミュニティ・ヘルス・センター、シニア・センターなどのコミュニティの場面でリクルートしましょう。これは、ターゲットとなる人々から参加者を集めるのにも役立ちます。


6.2. 物流上の障害を明確にして、取り除きましょう

テストする場所は参加者にとって馴染みのある、アクセスしやすい場所(図書館、コミュニティセンター、クリニックなど)で行ってください。公共交通機関の選択肢、駐車場の有無や料金など、テストする場所への参加者のアクセスに影響を与える要因にも注意してください。

リモートテストやオンラインテストはできるだけ避けましょう。やむを得ずリモートテストを行う場合は、技術的なサポートを提供するために、参加者と一緒に誰かが現場にいることを確認してください。

また、対象となる人々が必要となる便宜を考慮することも重要です。例えば、高齢者を対象としたテストでは、老眼鏡を必要とする人に用意します。また、移動手段が限られている人がテストを受けられるような場所を用意してください。また、対象者が英語を母国語としない場合は、通訳が必要になることもあります。 最後に、可能であればギフトカードではなく現金の報奨を使用してください。参加者は、報奨を家賃や光熱費などの基本的な生活費に使いたいと思うかもしれません。


6.3. わかりやすい言葉のテスト資料を作りましょう

スクリーナー(募集時の質問票)と同意書およびモデレーターのガイドをわかりやすい言葉で書きましょう。テスト資料のサンプルはUsability.govでご覧ください。

リテラシーの低いユーザーにユーザビリティ・テストを行う際は、タスクや質問の数を制限します。各セッションで実際に達成できるようにしてください。最も重要なタスクが手順の初期段階にあることを確認してください。また、セッションを簡潔にすることをお勧めします。

リテラシーの低いユーザーは、同意書を理解することが難しく、同意書を読まずに署名してしまうことがよくあります。読みやすい同意文書を提供するだけでなく、参加者のヘルスリテラシーや英語力に依存しない同意手続きの使用を考えてください
詳細については、米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)の、最小限のリスクでの調査のためのインフォームドコンセントと承認ツールキット [PDF - 300 KB]を参照してください。


6.4.コンテンツが理解できてすぐに実行できることをテストしましょう

調査の計画を立てる際には、コンテンツが理解でき、すぐに実行できるものかどうかを確認する方法を考えてみましょう。参加者がコンテンツを理解しているかどうかを評価するために、次のようなことをしてもらいます。

  • タスクに取り組むとき声に出しながら考える
  • 読んだ内容について自身の言葉で説明する
  • コンテンツを読んだ後に自分がどのような行動をとるかを説明する

ユーザーがコンテンツを理解できるかどうかを知ることは、ユーザビリティテストの非常に重要な部分です。しかし、それだけではありません。最終的には、作成した健康メッセージに基づいてユーザーが行動することが目標です。そのためには、コンテンツがすぐに実行できるかどうかを確認する必要があります。

そのためには、テストの対象を理解度や使いやすさの指標に限定する必要はありません。定量的なものと定性的なものを組み合わせて、例えば、ユーザーに質問します。
  • コンテンツを読んだ後に何をするか
  • コンテンツに書かれていることを実行できる自信があるかどうか

このような定性的な方法は、ユーザーが健康的な行動をとることができるかどうかを予測する重要な要素である自己効力感を知ることができます。


6.5.リテラシーの低いユーザーとの経験が豊かなモデレーターを選びましょう

可能な限り、リテラシーの低い人々またはインターネットをあまり使ったことのない人々を対象としたユーザビリティ・テストの実施経験のあるモデレーターを活用しましょう。

ユーザビリティ・テストの場で、リテラシーの低い参加者に慣れ親しんでいるモデレーターは、何を期待しているのかを知っています。彼らは参加者の課題に敏感で、タスクを通じて参加者を効果的にサポートする方法を知っています。例えば、経験豊富なモデレーターは、参加者が非常にゆっくりとタスクをこなしていても我慢できる可能性が高く、また、参加者がイライラしているときには、タスクプロンプトを繰り返す必要性を即座に認識することができます。

最終的には、リテラシーの低いユーザーと一緒に仕事をした経験のあるモデレーターを選ぶことで、テストセッションを成功に導くことができます。


6.6. モデレーターのガイドをプリテストしましょう

タスクやタイミングを微調整するために、リテラシーの低い参加者で、モデレーターのガイドを事前にテストすることは非常に重要です。このようなプリテスト―または「リハーサル」―セッションは、以下のような効果があります。

  • リテラシーの低いユーザーが混乱するタスクを明確にする
  • セッション間でどれくらいの時間がかかったかを確かめることで、さらに時間が必要なユーザーに対応することができる

リテラシーの低いユーザーを対象としたテストに慣れていない、リテラシーの低いユーザーを対象としたテストセッションの進み具合が、これまで行ったテストセッションよりも遅かったとしても驚くことはありません。それが普通だからです。


6.7. 複数の戦略を用いて、参加者に何をしてほしいのかを理解してもらいましょう

導入部分では、ユーザーが混乱したり、何をすべきか忘れてしまった場合には、いつでもタスクを読み直すことができることを明確にする。

セッション中には、モデレーターにタスクを読み上げてもらい、それを書面で提供する(1枚に1タスクのみ)。そうすることで、ユーザーに達成を求めているタスクを思い出させることができます。また、セッション中にモデレーターがタスクを繰り返すようにしてください。

やってみよう
リテラシーの低いユーザーを対象としたテストでは、短い休憩時間を設けることを考えます。

リテラシーの低い参加者は、特定のタスクに集中する傾向があることに覚えておいてください。セッション中、ユーザーには、答えに興味があるのではなく、どこで、どのようにして答えを見つけようとするのかに興味があることを伝えてください。


6.8 モバイルでのテストをしましょう

リテラシーの低いユーザーは、モバイルで情報にアクセスする可能性が高いため、常にモバイルデバイスでウェブサイトをテストしましょう。また、モバイルでテストすることで、レスポンシブデザインに関する情報を収集することができます。ウェブサイトは、さまざまなデバイスで動作するようにすることが大切です。
モバイルでのテストは、デスクトップパソコンでのテストとは異なります。ここでは、リテラシーの低いユーザーを対象としたモバイルテストを行う前に、考えておくべきことをご紹介します。

  • テストセッションを後で見直したり、チームのメンバーと共有したい場合には、モバイルテストのセットアップを使って動きを記録する。事前に技術的なにニーズを十分に考慮すること。

  • (Figure 6.1は省略しますが、説明を紹介しておきます)

    モバイルテスト中の参加者の動きを記録するために、モデレーターが小型カメラを設置している。


  • 参加者には自分のデバイスを使用してもらう。ユーザーは、自分のスマートフォンやタブレットの設定に慣れている―ユーザーが使い慣れたデバイスであなたのサイトを試験してくれれば、より正確な情報を得ることができる。

  • データの使用制限に気を付ける。参加者には自分のデバイスを使うよう求めているため、データ使用について考慮する必要がある。常に参加者が無料WiFiに接続できるようにすること。そして、全般として、彼らに何をしてもらうか―例えばアプリをダウンロードしたり複数の動画を見たりしてもらう必要があるか?―を事前に良く考えること。このような作業は、単純なタスクよりも多くのデータ量を消費する。


まとめ

リテラシーの低いユーザーに対してユーザビリティテストを行うには、特別な準備が必要となります。したがって経験豊かなモデレーターとの協力、参加者にとっての物流上の障壁の排除、わかりやすいテスト資料の作成などの戦略により、成功の可能性を高めることができます。

序章

消費者に向けたデジタル健康情報ツールのライターや開発者と同じように、ユーザーにとって理解しやすく、すぐに使えるものをイメージするのは難しい作業です。このガイドに記載された数々の方法は、あなたの健康情報をよりユーザーにとって使いやすいものにするための助けとなるでしょう。しかしながら、開発者や書き手とユーザーとの間に存在する経験値の差を必ずしも埋めるわけではありません。そのため、ユーザー調査がとても大事になります。ユーザー調査によって、どのようにユーザーがデジタル健康情報に関わりあっているのか、そして理解しているのかについて知ることができるためです。このガイドは、複雑なデジタル健康情報を利用する上でユーザーの負担を軽減しうるユーザー中心のより使いやすいデジタル健康情報の制作のため、すぐに実践できる方法を紹介しています。

the U.S. Department of Health and Hum Services(HHS)内のThe office of Disease Prevention and Health Promotion(ODPHP)によってヘルスリテラシーオンライン第2版は制作されました。2010年の初版より改良され、ユーザー体験をより簡潔にすることに役立つガイドラインとなります。改良版の当ガイドラインは、800以上のユーザーでの広範な調査による、すべてのユーザー、特にヘルスリテラシーが低い者の利用体験における実践的な方法をお伝えします。それらは利用しやすいデジタル健康情報ツールを制作するのに役立つでしょう。

このヘルスリテラシーオンライン第2版は、いつ、どこでも、どのデバイスであってもデジタル情報やサービスを届けるための新しくより良い手段とされるthe President's Digital Government Strategyと連携しています。この構想により、ヘルスリテラシーオンラインは、healthfinder.govのデザインや、ヘルスリテラシー向上のためのHHSの意向を反映しODPHPによって開発された賞を受賞しているウェブサイト、そして健康情報テクノロジーへのアクセスの民主化に役立ってきました。ヘルスリテラシーオンラインにおける提案は質の高い健康に関連するウェブサイトの割合を増やすことを目的としたHealth People 2020を達成するための道しるべとして役目を果たします。

私たちは、私たちのウェブサイトに訪れる者が、どのようなことを調べるために、どのデバイスを使用しているのか、そして彼らのヘルスリテラシーがどの程度であるのかについて知ることはできません。すべてのアメリカ人を考慮したデザインによって、どのようなユーザーであっても利用しやすく、アクセスのしやすいデジタル健康情報ツールを制作することを可能にします。

終わりに、ヘルスリテラシーオンラインのような実践的なガイダンスは私たちの誰にとっても使いやすいデジタル健康情報ツール制作の助けになります。

Karen B. DeSalvo, MD, MPH, MSc
Acting Assistant Secretary for Health
U.S. Department of Health and Human Services


ヘルスリテラシーオンライン第2版について

ヘルスリテラシーオンラインは、ウェブサイト上のユーザーにとって利用しやすい健康情報やサービスへのアクセスを広めることを目的としています。このヘルスリテラシーオンラインのガイドの基になった調査では、ヘルスリテラシーが乏しい者や、複雑な健康情報を探し、理解する十分な時間を持ち合わせていない者といったすべてのユーザーにとって、健康情報を扱うウェブサイトや他のデジタル健康情報手段がどのようにデザインされるべきなのかについて話し合われました。

ヘルスリテラシーオンラインのガイドは、ウェブサイト上の健康コンテンツ作成に関連するすべての方々に向けて書かれています。ここに書かれている内容やヒントは、健康コンテンツを作成する様々な場面で役に立つでしょう。


なぜこのガイドなのか

多くのユーザーは、とても基本的なサーチ機能の使用や、メニュー画面のプルダウン操作、関連する情報のウェブサイトを探すことに苦戦しています。これらは、オンラインでニュースを見ることや、買い物をすることについては大して問題にならないでしょう。しかしながら、ユーザーが健康保険を契約しようとしたり、新しい医療診断について学んだり、チャイルドシートを正しく取り付ける方法を調べる場合などには、大きな問題となりえます。

ユーザーがいかに簡単に健康に関連した内容を利用できるかについては、私たちの作成するウェブサイトの質に大きく委ねられています。このガイドは、提案を集めたというだけでなく、信頼のあるデジタルデザインや次のことを構築する手法を示しています。

  • ユーザーの情報の必要性や嗜好に応じた優先順位づけを行う。
  • ユーザーをウェブ制作の共同制作者として参加させる。
  • スクリーンの大小―すべてのサイズのスクリーンに対応する。
  • リテラシーの低いユーザーのためのウェブデザインは全てのユーザーにとって使用しやすいものになりうる。
(以下の文章は省略します)

Health Literacy Online戦略チェックリスト

この手引きの情報は、使い勝手の良い健康に関するウェブサイトとデジタルの健康ツールを構築するのに役立つよう設計されています。 以下の、Health Literacy Onlineで提示される戦略のチェックリストは印刷することができます。

すぐに実行できるコンテンツにしましょう

・✔ ユーザーの動機と目的を特定しましょう
・✔ 一番初めに最も重要な情報を載せましょう
・✔ 健康行動について説明しましょう。基本的なことだけです
・✔ ポジティブでいましょう。行動を起こすことで得られるメリットを伝えましょう
・✔ 具体的な行動の手順を示しましょう
・✔ わかりやすい言葉で書きましょう
・✔ コンテンツの正確さを確認しましょう


ページにコンテンツをわかりやすく表示しましょう

・✔ 段落の大きさを制限しましょう。箇条書きと短い一覧の形式を使いましょう
・✔ 意味のあるタイトルを使用しましょう
・✔ 最小で12ポイントの読みやすいフォントを使いましょう
・✔ 余白を使ってごちゃごちゃしないようにしましょう
・✔ アバブ・ザ・フォールド(ファーストビュー)に最も重要な内容がくるようにしましょう。モバイルでも同様です
・✔ 効果的にリンクを使いましょう
・✔ リンクが分かりやすいよう色や下線を使いましょう
・✔ 学びに役立つ画像を使いましょう
・✔ 適切なコントラストを使いましょう
・✔ コンテンツを印刷しやすいようにしましょう
・✔ 障がいを持った人にとっても利用しやすいようなサイトにしましょう
・✔ ウェブサイトをレスポンシブにしましょう
・✔ モバイルユーザーのニーズに合わせたモバイルコンテンツをデザインしましょう


コンテンツを整理し、ナビゲーションを簡素化しましょう

・✔ シンプルで魅力的なホームページを作りましょう
・✔ ユーザーのことを考えて、コンテンツにラベルを付けて整理しましょう
・✔ 直線的な情報のパス(Linear information path)を作りましょう
・✔ ボタンに意味のあるラベルをつけましょう
・✔ クリックできる要素を認識できるようにしましょう
・✔ ブラウザの"戻る"ボタンが機能しているか確かめましょう
・✔ ホーム画面やメニュー画面に簡単にアクセスできるようにしましょう
・✔ ユーザーに閲覧の選択肢を与えましょう
・✔ シンプルな検索機能を搭載しましょう
・✔ 検索結果をわかりやすく表示しましょう


ユーザーを引きつけましょう

・✔ マルチメディアで情報をシェアしましょう
・✔ 直感的に使えるインタラクティブなグラフィックやツールをデザインしましょう
・✔ その人に合った情報を提供しましょう
・✔ ユーザーに使いやすいフォームとクイズを作成しましょう
・✔ ソーシャルメディアでのシェアの方法を考えましょう


リテラシーの低いユーザーでサイトをテストしましょう

・✔ リテラシーとヘルスリテラシーが低いユーザーを募集しましょう
・✔ 物流上の障害を明確にして、取り除きましょう
・✔ わかりやすい言葉のテスト資料を作りましょう
・✔ コンテンツが理解できてすぐに実行できることをテストしましょう
・✔ リリテラシーの低いユーザーとの経験が豊かなモデレーターを選びましょう
・✔ モデレーターのガイドをプリテストしましょう
・✔ 複数の戦略を用いて、参加者に何をしてほしいのかを理解してもらいましょう
・✔ モバイルでのテストをしましょう

2021年2月19日

1.明快でわかりやすいコミュニケーション

広範囲にわたる健康情報を多様性に富んだ観る者に伝えることは、困難な時があります。多様な読み手に健康情報を伝えるために、効果的なヘルスコミュニケーション資料を開発する場合には、一つの型に全てを当てはめるような(フリーサイズの)価値観は避ける必要があるからです。文化やリテラシーのスキルは、観る者の興味をひくヘルスコミュニケーション資料をデザインするにあたり考慮すべき2つの重要な要素です。

アメリカの教育省によって2006年に発表されたNational Assessment of Adult Literacyによると、3000万人の成人が基本的な読解に苦労しています。さらに、前述の調査では、消費者の内、わずか12%の者のみが十分なヘルスリテラシースキルを持つことが明らかになっています。つまり、成人10人のうち9人ほどは、自分自身の健康を十分に管理するために必要なスキルが欠如している恐れがあることを示しているのです。低いヘルスリテラシーは、ヘルスケア提供者やサービスを見つけること、問診票を記入すること、ヘルスケア提供者に健康情報を伝えること、慢性疾患を管理すること、セルフケアを行うなどの能力に影響する可能性があります。
しかしながら、高いヘルスリテラシースキルを持つ人であれ、わかりやすく価値のある、利用のしやすい健康情報を求めていることを覚えておくことは重要でもあります。


このガイドでは

Simply Putのガイダンスは、複雑な科学的・専門的な情報を、観る者が興味をもち、理解のできるコミュニケーション資料に変えることを手助けします。このガイドには、情報の体系化や、言語や画像の使用の実践的な方法について書かれています。このガイドは、ファクトシートやFAQ、案内書、冊子、パンフレットや、ウェブサイトなどの資料を作成するための一助になるでしょう。

2.全体的なコミュニケーション計画におけるこのガイドの位置づけ

コミュニケーション計画を立てるには多くのステップを伴います。このガイドは、そのうちの1つ、つまり、ヘルスコミュニケーション資料をデザインすることを実現するために役立つでしょう。

始める前に、いくつか行うことがあります。

  • 読み手を明確にし、主な健康問題や関心事をはっきりさせる
  • 読み手を理解するために重要な特徴(性別、人種や民族、住んでいる場所、信念、習慣、文化、リテラシースキルや明確にされたトピックについての現在の知識)について知る。
  • 主要なメッセージを明確にする。主要なメッセージが読み手に適切に受け取られることを確認するために、読み手となる人にそれらをテストする。
  • 読み手にメッセージを伝えるために最善な方法を見極める。(印刷物や音声、動画など)
  • 読み手に資料を分配する方法を決める(メール、パンフレットの提示、ウェブページなど)

開発の早い段階で、観る者に資料が提供する情報が必要なのかどうか、もしくは情報が欲しいのかどうかについて見極めます。観る者の需要を確認することによって、資金やスタッフの時間を賢く使うことにつながるからです。読み手となる人の関心やニーズ、価値観について知ると、資料をより読み手のニーズに合ったものにすることができます。さらに、読み手に伝えるために最良の方法を知ることは、資料の効果的な形式やデザインを決めるうえで役立ちます。

資料のドラフトを作成したら、読み手となる人にそれをプレテストしてみましょう。プレテストは、観る者が送ったメッセージを他の解釈ではなく、意図された内容で受け取るかを確認するのに役立ちます。プレテストの結果をもとに、資料を修正し改善していきましょう。

ヘルスコミュニケーション資料の作成における最後のステップは、それを販売し流通させ、読み手となる人に主要なメッセージを伝えることによる効果を再評価することです。このガイドは、これらのステップ全てを網羅していないが、Appendix Bでは、コミュニケーションプランニングの多くの場面で役立つ資料の一覧を掲載しています。

Step for Developing Health Communication Materials
That are evidence based and user friendly

根拠にもとづき利用しやすいヘルスコミュニケーション資料を作成するためのステップ
1.読み手となる人を明確にし、主要な健康問題もしくは関心事を明確にする。
2.読み手となる人の興味をひくー 読み手となる人のニーズ、信念/価値観、関心を確認し、特定の健康トピックの知識レベルを明確にする。
3.観る者の知識に基づいて、重要なコンセプトやメッセージを明らかにする。
4.資料のドラフトをデザインする
5.読み手となる人に資料をプレテストする
6.観る者からのフィードバックをもとにドラフトを調整する
7.資料を公開、配布する。
8.観る者の満足感や理解を評価する。

3.あなたのメッセージをクリアにする

観る者の知識を増やすことに役立ち、信念・態度・行動の変化につながる資料を作るためには、読み手となる人にとって明確で、関連する適切なメッセージが必要になります。このセクションでは、何をどのように伝えるかを決め、対象が理解し、覚え、行動するために、そのメッセージに沿い行動できるためのヒントを提供しています。


3.1.最も重要な情報を最初に伝える

観る者をすばやく引きつけるために

  • 一番重要な情報を最初に伝える
  • 取るべき行動を伝える
  • 彼らにそれがなぜ重要かを説明する

  • :食べ物の取り扱い前と後は、必ず20秒間石鹸と温かい水で手を洗うこと。食べ物と水は、お客様とそのご家族が病気になる菌を運ぶ可能性があります。


    3.2.メッセージの数を制限する

    一つの文書もしくは文書のセクション(節)には3または4つ以上の主要な知識を入れないようにしましょう。


    読み手が知るべきこと、なすべきことに焦点を当てる

    知っていると良いというだけの詳細情報は省略します。ライム病を防ぐ方法についてパンフレットを書く場合、読み手にはライム病がいつどのように発見されたかについて書く必要はありません。その代わりに、ライム病を防ぐために、何をしたらいいかを彼らに伝えることです。


    一つの主題からそれない

    次の主題に移る前に一つの主題を十分説明します。資料がトピック間で前後(行ったり来たり)すると、人々は混乱してしまいます。


    長いリストを避ける

    カンマでなく、箇条書きで3−7項目の短いリストを作ります。読解スキルが乏しい人は、長いリストの項目を忘れてしまう傾向にあります。リストが長くなる場合は、副題に分けましょう。


    3.3.読み手に彼らがすべきことは何かを伝える

    読み手にしてほしいアクション(行動)を明確に示す

    固有名詞と能動態を使うこと。能動態は、読み手が行動する場合に用います。

    良い例(Say) : 食べ物からの病気を避けるため、下記のルールを守りましょう。

    • 肉は中心がピンクでなくなるまで加熱する。
    • 生肉を触ったあとは、手を洗う。
    • 生の果物や野菜は食べる前に洗う。
    • 熱い食べ物は熱く、冷たいものは冷たく保つ。
    • 悪い例(Not) :下記の安全予防策は、食べ物由来の疾患流行を減少させます。


      肯定的なことを目立たせる

      読み手には彼らがすべきでないことよりも、すべきことを伝えます。

      良い例(Use) :自転車に乗る時は必ずヘルメットをつけましょう。
      悪い例(Instead of) :ヘルメットをつけないで自転車に乗らないようにしましょう。


      3.4.資料を理解し使うことによって彼らが何を得られるかを伝える

      資料が彼らにとっていかに有益であるかを伝えます。「その資料の中で私のために役立つものは何か?」という質問に答えます。

      :健康的な妊娠期間を過ごすために何をすべきか、そして起こり得る問題を防ぐための方法について学びます。


      3.5.言葉を注意深く選ぶ

      言葉は短く

      可能であれば、1もしくは2音節の言葉を使いましょう。ほとんどの文を8語から10語として、かつ段落内に文は3つから5つまでに制限します。


      自分の友達に話しているように伝える

      友達と話しているかのように書きましょう。
      会話のスタイルは、より自然な口調でわかりやすくなります。

      良い例(Say) :化学薬品の近くにいると、病気になるかもしれない。
      悪い例(Not) :化学薬品に暴露することは、有害な健康影響を引き起こす可能性がある


      観る者を敬い、評価する

      誘導することや説教をしないようにしましょう。
      一般に観る者は、現在の行動や健康状態が良くないと感じてしまうと、情報に基づいて行動をする可能性が減ってしまいます。


      観る者を励ますトーン(話し方)で話す

      取り組みやすく、効果的な手段であること強調しましょう。具体的な成功例を提供するのです。


      専門用語、技術的な用語、科学的な用語の使用は避ける

      必要な専門用語や技術的な用語は、最初にそれを定義しましょう。それから、読み手が理解できる言葉で説明します。

      良い例Say :高い血圧(high blood pressure)
      悪い例Not :高血圧(hyper tension)

      良い例Say :妊娠調節 (birth control)
      悪い例Not :避妊(contraception)


      一つの定義や一つの意味を持つ言葉を選ぶ

      リテラシースキルの乏しい人は、文脈から意味を理解することができない可能性があります。

      :"Poor workers"は、文脈によって仕事の能力が低い労働者(workers with poor performance)、もしくは収入の低い労働者(workers with limited income)を意味することがある。


      使用する名称を一貫させる

      最も馴染みのある名称を選び、あなたの資料で一貫してそれらを使いましょう。

      :Mad cow diseaseとbovine spongiform encephalitisは狂牛病を意味するが、使用する名称が異なる場合に読み手はそれを2つの異なる疾患と考える恐れがある。


      読み手に馴染みのある例えを使用する

      例える時、読み手になじみのあるものを使いましょう。

      良い例Say :えんどう豆くらいのしこりを感じる
      悪い例Not :直径5-6ミリくらいのしこりを感じる


      不必要な略語や頭文字だけの言葉は避ける

      馴染みのある略語や頭字語を使用する場合は、最初に略語や頭文字を書き、( )内にその言葉を略さずに書きましょう。動画や音声の資料で話すコンテンツを作る時でも、このルールを適用します。

      :感染症の早い段階では、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は症状を引き起こさない。

      馴染みのない略語を用いる時は、頭字語の前に言葉を入れる

      :受動喫煙は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因として知られている。


      統計的な数字を避け、ほとんど・多い・半分といった一般的な言葉を使う

      もし統計的な数字を使う場合は( )の中に書きましょう。

      良い例Say :研究者は、ほとんどのアメリカ人(90%)が、ワクチンの危険性はほとんどないと考えていることを明らかにした。
      悪い例Not :研究者は、アメリカ人の90%がワクチンの危険性はほとんどないと考えていることを明らかにした。

      リスク、標準、範囲のような数学的なコンセプトは、観る者にとって意味を持たない可能性があります。可能であれば、代わりに「見込み」や「可能性」のような言葉を使用しましょう。

      良い例Use :大抵のアメリカ人は、ワクチンの接種後に何か悪いことが起こる可能性は少ないと考えている。
      悪い例Instead of :大抵のアメリカ人は、ワクチンに関連するリスクはほとんどないと考えている。


      記号の使用を制限する

      ある読み手にとっては意味を持ち当然に思えるものも、他の人にとっては、混乱を生じ読みまちがいをする恐れがあります。使用する記号はプレテストを行いましょう。

      :下記の記号は、馴染みがない、もしくは全ての人にとって同じ意味ではない可能性があります。

      馴染みがない、もしくは全ての人にとって同じ意味ではない可能性がある記号例


      引用符(" ", ' ')の使用を制限する

      記号の使用は控えめにUse symbols

      対話を書く時に、誰が話しているかを示すためには他の形式を選びましょう。


      ジェーン:喫煙をやめるのはどれくらい難しいですか?
      アン:大抵の人が非常に苦労しています。 私はやめる前に3回挑戦しました。

4.本文の見た目は重要

文書の見た目は読みやすさに大きく影響します。読みやすいフォントのスタイルやサイズはヘルスコミュニケーション資料を作る際に重要です。


4.1.フォントのサイズは12~14ポイントを使う

12ポイント未満のものは、多くの読み手にとって読むには小さすぎます。 高齢者や、読むことや視覚に障害がある人には、さらに文字を大きくすることが必要でしょう。


4.2.表題には本文のサイズよりも少なくとも2ポイント大きいサイズを使う


フォントの大きさ例

4.3.フォントスタイル

テキストの本文には、この行で使用されているようなセリフ付きフォントを使用する

通常、セリフフォントはサンセリフフォントよりも読みやすくなります。 これは、セリフが個々の文字をより明確にすることで、脳が素早く認識できるようになるからです。セリフは、文字の小さな「足」です。


セリフフォントはサンセリフフォントよりも読みやすくなる

表題や副題においてはサンセリフフォントを使いましょう。サンセリフは、小さくタイプ打ちをする必要がある時やウェブサイトで使用する時により読みやすくなります。


下記のスタイルを覚えておきましょう

  • 大文字と小文字を併用する。読みづらいので、大文字のみの使用はしない。
  • 文法的に正しく句読点を使用する。
  • 強調する言葉や用語は太字(bold)を使う。
  • 斜体字(italic)や下線の使用は読みづらいので使用を限定する。
  • 明るい背景に暗い文字を使用する。 暗い背景に明るい文字を使用すると読みづらい。

5.映像は話を伝えるのに役立つ

視覚に訴えるものは、正しく使われれば、コミュニケーション資料をより良いものにします。このセクションでは効果的で魅力的なビジュアルを選ぶ手助けになる方法を示します。映像は、観る者の注意を引き、話を伝えやすくします。なお、使用する画像や写真が、受け手にとってわかりやすいものかどうかはテストを行い確認しましょう。


5.1.提供する資料にとって一番良いビジュアルを選ぶ

写真は実際の生活の出来事、人々、感情を示すためには一番効果的である

写真は人生の大切な出来事を描くのに最適

写真は観る者をよりひきつける傾向があります。写真を選ぶ際は、強調したい事柄から観る者が注意をそらすことがないような背景の画像にしましょう。


シンプルなイラストや線画(スケッチ)は時には効果的な場合がある

イラストや線画は、複雑さを分りやすくし、伝えたい物事の重要な部分を強調することができます。

下記の例は絵がベストです。

  • 手順を見せるもの(採血など)
  • 社会的に慎重に扱うべき問題を表すとき(薬物中毒など)
  • 見えない、もしくは見るのが難しい事象を説明するとき(結核の空気感染など)

  • シンプルな絵を使い、不必要な詳細を含まない

    誤解の可能性がある抽象的なイラストは避けましょう。わかりやすい絵は、望ましい行動を示すことや抽象的な物事を説明するために役立ちます。それらは異なる読み手、特に様々な文化背景を持つ読み手に伝える際に役に立つからです。


    マンガはユーモアを伝え、もっと気軽な雰囲気を出すのに役立つことがある

    漫画は慎重に使用しましょう。 観る者すべてが意図する内容を理解し、真剣に受け止めるとは限りません。


    5.2.ビジュアルを使用してメッセージを伝える

    一つの画像には一つのメッセージを示す

    一つの画像にいくつものメッセージを示すと、観る者はメッセージの一部もしくはすべてを理解しそこねてしまう可能性があります。


    画像にはキャプション(説明文)をつける

    ビジュアルやその説明文は関連するテキストの近くに配置しましょう。


    ビジュアルは、内容を強調したり説明したりするものを使う

    ビジュアルが差し込み可能な場所、潜在的な活用度ついて検討しましょう。 単なる装飾や、あまりにも抽象的なビジュアルは避けます。

    :AとBの画像はどちらも意味を持ちます。
    画像Aは、公衆衛生の専門家に対して効果的です。
    画像Bは一般向けのイラストとして効果的です。 どちらの文書も、観る者に適した画像を使用しています。


    観る者に適した画像例

    観る者にとってほしい行動を示す

    観る者がすべきでない事を示す絵は避けましょう。

    :もし、フルーツのような健康的な軽食を選ぶことを人に勧めているなら、イメージAは何を食べるべきかを示しているので効果的です。伝えたいメッセージが強調されているからです。
    イメージBは何を食べるべきでないかを示しているが、それだけでは何を食べるべきかということビジュアル的にリンクしません。また、イメージBの「X」は必ずしも「No」を意味するものではありません。


    観る者がすべきでない事を示す絵は避けることの例

    5.3.文化的に関連があり反応の良いビジュアルを作る

    対象に親しみのあるイメージやシンボルを使う

    全ての文化において、このイメージが「禁煙」を意味するわけではありません。身体的な困難や制限がある人にとっても魅力的なイラストを考えましょう。

    禁煙のイメージ:全ての文化において、このイメージが「禁煙」を意味するわけではない
    画像の中で人を示す場合、それらはあなたが意図する対象と同じ人種または民族グループにします。対象が親しみやすく、関連付けできるイメージを選択します。多様な対象向けにデザインされた素材は、様々な民族、人種、年齢層の人々を示します。
    写真は、対象があなたのメッセージに共感することに役立つ可能性がります。


    5.4.対象が理解しやすい画像を作る

    文章の近くに関連する画像を置く

    対象者は資料の右隅や上部に置かれた線画と、左隅や下部にある文章を結び付けられないかもしれません。全ての画像は、書かれたメッセージに直接つなげるようにしましょう。


    あなたの大事なメッセージを含んだ簡潔なキャプション(短い説明文)をつける

    一部の人はキャプションだけを読む可能性があるので、キャプションにあなたの大事なメッセージを含ませるようにしましょう。簡潔かつ完全な文で、正しい句読点を使用します。キャプションは画像が伝えようとしていることを正確に言い表すことができます。

    イメージに簡潔かつ完全な文でキャプションを付ける
    さらに、メッセージを強調するために文書の中にある文を繰り返します。対象者を引き込むような物語(ナラティブ)仕立ての説明を使用することによって、有効なキャプションもあります。


    対象者を引き込むような物語(ナラティブ)仕立ての説明を使用することによって、有効なキャプション

    一連の動作を画像で示す場合は、順番通りに画像に番号をつける


    一連の動作イメージには順番通りに画像に番号をつける

    画像の中で大事な情報を示すために丸○や矢印のような記号を使う

    :下の画像は、建設現場での怪我を防ぐ方法に関するパンフレットです。 矢印は、イメージ内の最も重要な項目であるヘルメットを強調しています。


    画像の中で大事な情報を示すために丸○や矢印のような記号を使う。

    5.5.場合によっては図だけで対象の理解を助けることができる

    ピクトグラフは言葉やアイディアを表す絵である

    ピクトグラフは情報をすばやく伝えることができ、人がメッセージを理解することや意図されたメッセージを思い出すことを助けます。これらは、特定の行動に焦点を当てた場合に効果的であり、効果を確かめるためにはプレテストを必要とします。

    ピクトグラフはたくさんの情報を素早く伝えることができます。
    :このピクトグラフは、文章なしで、薬を摂取する方法を伝えています。


    効果的なピクトグラフは、内容に関連した行動をとっている人を含むもの

    写真もピクトグラフと同様に効果的である

    効果的なピクトグラフは、内容に関連した行動をとっている人を含むものです。 これは、対象がどのような行動を取る必要があるかを理解することに役立つでしょう。


    5.6.体の内部や小さいものを説明するときにはリアルな画像を使う

    状況や背景にはリアルなイメージを使う

    体の内部の一部分を強調するためには、からだ全体の像を合わせて表示します。全体像のような背景状況がないと、対象者は画像の意図を理解できない恐れがあります。
    :画像Bは、心臓血管内のプラーク増大をより効果的に示すための状況を表しています。 このことは、画像Aではそれほど明確ではありません。


    体の内部の一部分を強調するためには、からだ全体の像を合わせて表示

    スケールの認識のため、小さいものはより大きく描いて詳細を示す

    また、対象に大きさをわかりやすく示すため、身近なものを比較対象として示します。

    :以下に描かれている蚊は、実際のサイズより数倍大きく描かれています。蚊の実際の本当大きさを示すために硬貨の横に示されています。


    対象に大きさをわかりやすく示すため、身近なものを比較対象として示す

    5.7.質の高い画像を使う

    画像は、鮮明な解像度、正確な色とコントラスト、そして良い構図が必要である。

    質の高い画像は提供者のメッセージをより説得力のあるものにします。
    さらに、大人は資料が子供向けの場合や、可愛らしいデザインで構成されている場合、それを手に取ることさえしないかもしれません。あなたの対象を惹きつけ、情報を伝える資料を作成するためには、プロにデザインの助けを借りましょう。


    効果的なビジュアルを作成するのに必要なのは?

    疾病管理センターの公衆衛生画像ライブラリには、公衆衛生に関するさまざまなイメージがあります。
    http://phil.cdc.gov/Phil/default.asp
    その他の画像資料はAppendix Dに紹介しています。

6.レイアウトとデザイン

あなたの資料が対象者にとってよりわかりやすく、より魅力的になる方法で情報と画像を提供しましょう。


6.1.効果的な表紙をデザインする

あなたの意図する対象にとって魅力的な表紙を作ろう

表紙に対象者の好きな画像や色が含まれていないと、彼らはそれに関心も持たないでしょう。


主要メッセージと対象者を示す

パンフレットやWebページ、ちらしやポスターのようなヘルスコミュニケーション資料は、それを見ることによって、人々が主要な目的を理解でき、資料が対象にしているのは誰かを知ることができるようデザインされなければなりません。

:たとえば、対象の注意を惹く点と、対象に内容から得られることを伝えている点において、表紙Aは、表紙Bよりずっと効果的です。


表紙Aは、表紙Bよりずっと効果的

6.2.行動しやすく、思い出しやすいようにメッセージを作る

1ページ、もしくは見開きページに一つの完結した知識を示す

メッセージの途中でページをめくらなければならない場合、メッセージの最初の部分は忘れてしまう恐れがあります。


最も重要な情報を冒頭に置き、文書の最後にそれを繰り返す

主要なメッセージを最初に記述し、単刀直入なわかりやすい言葉でメッセージを展開し、最後に主要なメッセージを繰り返し、変化や行動を求めます。


6.3.対象者が使用する順番で情報を構成する

:あなたが化学物質の流出を発見した場合はどうすればいいですか?
1.すぐにその場を離れる。
2.流出した場所を覚えておくことによって、それを避けることができる。
3.流出を警察または消防署に通報する。
4.他の人にその地域から遠ざかるように警告する。


文章をまとまったものにするためには表題と副題を使う

見出しは、その後のメッセージの内容へのヒントです。 一つか二つの単語だけではなく、完全な内容を表現する見出しを使用しましょう。

:表題Aは、表題Bよりはるかに多くの情報を伝えます。
表題A:シートベルトを着用してください。 ―シートベルトはあなたの命を救います。
表題B:シートベルト


質問は副題としてうまく使用できる

人々はその質問に答えて、自分に当てはまるものが何か、最も興味があることは何かを知ることができます。 また、質問によりあなたの資料は、さらに双方向的になります。人々は答えを考える傾向があるからです。

必ず正しい方向に対象を導く質問をしましょう。 セクションの始めに彼らが質問に興味を持たないと、彼らはその後の情報を読まないかもしれません。


表題と副題の上は、それらの下よりも多くの余白を置く

これにより、表題とそれに続く文章との間の視覚的なつながりが強くなります。


多くの余白を残す

余白とは、ページ上に文章や画像がないことです。余白は、見やすいページを作成する上で不可欠です。多くのプログラフィックデザイナーは、印刷物のページあたり10〜35パーセントの空白を推奨していいます。
ページの余白の周りと段落の間に少なくとも1/2インチから1インチの空白を残しましょう。 ページのテキストと画像の量は制限します。

:文書Aは、文書Bより読みやすい。文書Aの方が多くの空白があるからです。

文書Aは、文書Bより読みやすい。
余白は、ウェブサイトにおいては重要性を増します。なぜなら、印刷物よりも目を酷使するからです。 ウェブサイトデザインの原則に関する情報は、
http://www.usability.gov/pdfs/chapter6.pdfを参照してください。

6.4.目で追いやすい文章を作る

箇条書きで文章を分割する

:箇条書きされている例Aは、例Bよりもリスト内の項目を読みやすくしています。箇条書きの前にチェックできるボックスがあると、人々は参加するように促すことになります。


リスト内の項目を読みやすく

読みやすさのためには、右端を揃えず、行末を揃えない

右揃えは、単語の間に不規則なスペースを作ってしまいます。不規則なスペースは、読むスキルが乏しい人を混乱させる可能性があります。


読みやすい長さの文字列を使用する。

1行40〜50文字は、読み易い。以下の段落A、B、Cを比較しましょう。


1行40〜50文字は、読み易い。以下の段落A、B、Cを比較

テキストボックスの中に主要な情報を置く

テキストボックスは、そのページの最も重要な情報を見つけやすくします。

:このサンプルページの網掛けされたボックスに注意が向きます。


例)このサンプルページの網掛けされたボックスに注意が向く

6.5.テキストの中にあなたの対象を招く

相互作用はあなたの教育資料の成功を高める効果的な方法です。 対象が提供された情報と対話する時、より記憶に残りやすく、その情報にもとづいて行動するようになるからです。
以下に、対象を巻き込む方法に関するいくつかのアイディアを示します。


質問をする

短い質問を書いて答えを書き込むために、空白の行を残しておきましょう。

:あなたのベスト体重はいくつ?ここに書いてください。
  私のベスト体重は     です。


あなたの対象に問題解決を求める

問題提起し、対象に問題の解決方法を記入、もしくは言ってもらいましょう。

:タバコが欲しくてたまらなくなった時、あなたは何をしますか?思いついたことをこちらに書いてください。
1.
2.
3.


関連する言葉や絵で選択肢を提供する

「身体活動」などの抽象的な概念と具体的な行動を関連付けるために、対象に、複数の絵の中から1つを選択するように求めましょう。

:有酸素運動のためにあなたが行うものに丸をつけてください。


関連する言葉や絵で選択肢を提供する

7.文化を考慮する

人々が健康メッセージをどのように理解し、反応するかは文化が影響します。
あなたの資料が、文化に適していることを確実にする一番の方法はコミュニケーションプラン早期に対象となる文化背景を持つメンバーに参加協力してもらいましょう。そのメンバーは、対象者の文化において、効果的なメッセージやイメージを明確にすることに貢献します。


7.1.あなたの対象者が使用している、および/または馴染みのある用語を使用する

:糖尿病を持つ高齢の対象者が医師の診察のために医療機関に行く場合、あなたの資料に使用されている言葉が意図した対象に馴染み深いものであることを確認するために、「診療所」、「医師のオフィス」やほかの言い方をしているかどうか尋ねます。


あなたの資料が文化的に適切であることを確認する最善の方法は、あなたがメッセージを届けようとしている対象のメンバーと話をすること。

人人種や民族によってグループを特定する必要がある場合、そのグループに好まれる用語を使用します。 好まれる用語は、民族または人種グループ内であっても異なる場合があります。 サンプルの対象者に聞きましょう。


あるグループでは「アフリカ系アメリカ人」と認識されることを好むかもしれないが、別のグループは「ブラック」として認識されることを好む可能性があります。
または、
あるグループでは「ネイティブ・アメリカン」、別のグループでは「アメリカ・インディアン」と呼ばれることを好むかもしれません。


7.2.それぞれの文化や民族グループ、サブグループにメッセージを送る

それぞれのグループは、異なるニーズや価値観、信念を有する可能性があり、それは、あなたのメッセージをどのように解釈するかということに影響を与えます。マイノリティ・グループは、たびたび互いに大きく異なるサブグループを持ちます。1つのマイノリティ・グループまたはサブグループに効果的なものは、別のマイノリティ・グループまたはサブグループに対して全く機能しない可能性があります。

文化的に適切なイメージ、概念、および言葉を使用するだけでは不十分です。メッセージは常に対象者にテストする必要があります。

Sabemos(スペイン語は「私たち私たちは知っている」)とは、HHS / CDCによって開発された2カ国語で使用できる文化的に適切なツールキットで、ヒスパニックの親やコミュニティの指導者の受動喫煙から子供を守る取り組みを支援するものです。

開発されたキット

このキットは、ヒスパニックコミュニティの親や指導者と、重要な情報提供者のインタビューから得られた研究に基づいて開発されました。 これらの調査結果は、ヒスパニック/ラテン系の住民を扱うコミュニティリーダーのためにキーメッセージとツールを開発するために使用されました。

8.あなたのメッセージを言い換える

あなたが対象とする人の言語で資料を作成することは、最も有益なことです。しかし、時間的制約や入手可能な資源の問題で、しばしば英語(もしくは他の言語)からそれらを翻訳しなければなりません。このセクションでは、あなたの資料の翻訳が、文化的にも言語的にも適切であることを確実にするためのヒントを提供します。

8.1.英語を話す対象者に効果的なメッセージが、他の言語を話す対象者へはそうでないかもしれない

あなたの対象者の価値観、健康の信念、文化的な視点について知ること。あなたは、個別のインタビュー、フォーカスグループ、または補助的な調査(文献の参照など)を含むその他の対象研究によって、これを知ることができるでしょう。


8.2.サブグループや地理的なロケーションに基づく少数派の人々ための資料をデザインする

マイノリティの全ての人々を同じように扱えるわけではありません。例えば、メキシコ系アメリカ人は、特定の言葉、色、記号対して、キューバ系アメリカ人とは異なる反応をすることがあります。 同様に、ニューヨークに住む韓国人女性は、ロサンゼルス在住の韓国人女性とは健康問題について異なる見方をする可能性があります。


8.3.調査したいエリアのコミュニティ組織からアドバイスをもらう

あなたの対象者と定期的に働いている地元グループは、彼らについて価値のある情報を提供します。彼らは、調査やフォーカルグループテストのために参加者を集め、あなたの対象者から信頼を得ることを手助けしてくれるでしょう。


8.4.翻訳者を注意深く選ぶ

あなたの意図する対象に精通した適格な翻訳者を選ぶこと。的確な翻訳者とは、通常は翻訳する言語のネイティブスピーカーであり、10年以上の翻訳経験のある人、さらに可能であれば認定機関によって保証された人ということです。

そのような翻訳者は、資料の文書のメッセージや内容を反映して、文書を制作することができます。元の文書が明確、またはわかりやすい言葉で書かれていない場合、翻訳された文書も同じ特性を保持するということは覚えておくことが重要です。複数の言語上のバリエーションをもつ対象(例:メキシコ系アメリカ人、キューバ系アメリカ人)のために資料を用いる時は、複数の翻訳者で翻訳をチェックしましょう。


8.5.文字通りの翻訳は避ける

あなたの対象者によって使用される広範囲の表現、フレーズ、言葉の中から翻訳者が選択できるようにします。この柔軟性により、文化的に適切な資料となります。


8.6.バックトランスレーションの手法を使う

資料が対象言語に翻訳されたら、それを英語に翻訳し直します。(このステップは、元の翻訳者以外の人が行うこと)メッセージの意味と語調(トーン)が変わらないかどうかを確認しましょう。


8.7.対象のメンバーを相手にドラフトの資料をテストする

実地テストをすると、対象のメンバーからフィードバックをもらいコメントや提案に基づいて、修正することができます。

これらのよくある落とし穴に注意しましょう。

  • 英語の俗語や慣用句を文字どおりに翻訳しない。
  • あなたの対象者が使用しない限り、方言で翻訳はしない。
  • 出版物が外国語の文字やアクセント記号の要素を用いて書かれている場合は、外国語の文字やアクセント記号を省略しない。外国語の文字や句読点を省略すると単語や文の意味を変えてしまう可能性がある。使用する文書作成ソフトやDTPソフトが対象の読者の言語で使用される全ての句読点を含んでいることを確認すること。
  • 詳しい情報を問い合わせる電話番号を掲載する場合、対象言語に堪能なスタッフが必ずいるようにすること。もしくは、「スペイン語の方は、東部標準時午後1時から5時まで利用可能です」のように条件を書き加える。

9.可読性(読みやすさ)のテストをする

読解レベルの測定は役立つ手段である。それは、一つの言葉ごとの平均の音節と、一つの文ごとの平均の語数に基づいて、文書がどのくらい難しいかを表す概要を示します。しかし、それは、理解の一般的な個人レベルを測ってはいません。理解の程度は、読解力や教育レベルより2段階もしくはそれ以上に低くなります。理解力は、人がストレスを受けている時にはより低下するのです。

読解レベルの測定は、レイアウトやデザインの要素による影響を考慮しません。それらは、あなたの対象者があなたのメッセージをどのように受け入れるか、どう行動するかを予測することはできないからです。読解レベルの測定の使用だけでは、うまくまとめられた、分りやすい文書テキストであることの証明にはなりません。それは有効性を評価する他の手段と組み合わせて使用すべきです。


9.1.測定法を使用する前に読書レベルを下げる

あなたの文書の読解レベルを下げるためのいくつかの基本的なテクニックがあります。
文ごとの単語数を減らし、可能な場合は1もしくは2つの音節の語を使用しましょう。これらの数を減らすことによって、読みやすく改善することができます。

あなたの文書で使われている受け身の表現の数を確認します。可能なら能動的な表現に変えましょう。能動的な表現は読みやすさを向上させます。

: この文章は受け身で書かれている。
「心臓病や肺がんは喫煙によって引き起こされます。」
能動態を使用する方がよい。
「喫煙は心臓病や肺がんを引き起こす。」

組織や疾患の長い名前や、その他の固有名詞のせいであなたの文書の読書レベルが高すぎると感じるならば、これらの言葉を除いて読解レベル測定を使います。 長い単語を除くことによって、読みやすさは適切なレベルになる可能性がある。その場合は、あなたの文書から長い単語を削除して、修正しましょう。

あなたが長い単語を使用しなくても、変わらずに読書レベルが高すぎる場合は、「平易な言葉」で書き、人々が最も理解しやすそうな日常の言葉を使用します。
簡単な単語やフレーズを置き換えるためのアイディアについてはwww.plainlanguage.gov/howto/wordsuggestions/index.cfm を参照してください。

「平易な言葉」が文書をどのようにわかりやすくするかを確認する一番良い方法は、平易な言葉に編集される前と後の文書の例を見ることです。
前と後の例についてはwww.plainlanguage.gov/examples/before_after/index.cfmを参照してください。


9.2.文書の読みやすさレベルをテストする

読解レベルを確認する方法はいくつかある

あなたは手作業もしくはコンピューターソフトウェアを用いて、文書の読解レベルをテストすることができます。また、すべての下書き段階で同じ読みやすさ測定法を用いることによって、読解レベルの評価において一貫性を保てます。 The Flesch-Kincaid Readability Test, the Fry Readability Graph, the Gunning 'FOG' Readability Test (FOG)と the Simple Measure of Gobbledygook Readability Formula (SMOG)は優れたツールです。それらの使用法については、Appendix Cを参照してください。

Microsoft WordおよびCorel WordPerfectを含むいくつかの文書作成ソフトウェアプログラムには、読みやすさのレベル評価機能が付いています。しかし、plain languageの専門家は、これらのコンピューターテストの読みやすさの分析が信頼できる有効なものだとは考えていないため、下記を推奨しています。

  • free-standing software, including Readability Calculations* or Readability Plus* from Micro Power & Light (www.micropowerandlight.com)
  • a website using SMOG formula: www.harrymclaughlin.com/SMOG.htm*
  • Appendix Cに追加のツールあり。

  • しかし、読みやすさの測定は、読みやすさを評価する際に役立つツールであるということ覚えておきましょう。あなたの資料が効果的なコミュニケーションツールになるかどうかを判断するための最も良い方法は、あなたが意図する対象からのサンプルグループにプレテストをすることです。


    資料のテストと分析は重要な考慮事項である

    ヘルスコミュニケーション資料の作成を成功させるためには、あなたの対象者がその話題について何を知っていて、どう考えているのか、また彼らが新しい知識をどのように解釈するのかを知ることです。

    例えば、あなたは最初の下書きの前に、使いやすさのフォーカスグループテストや対象者の中から個別インタビューを行うことによって、彼らがそのトピックについてすでに何を理解しているのかを判断することができます。さらに、情報を示すための方法をいくつか試すことができる。このテストは、あなたが最初の言葉を書く前に始めるべきであり、最終の原稿まで続けるべきです。

    使いやすさのテストを行うための方法に関する詳細を参照してください。
    ほとんどのプログラムは、プレテスト・ポストテストの方法を含む1つ以上の研究手法が必要です。これらの方法の多くは、Making Health Communication Programs Work, U.S. Department of Health and Human Services, and in Methodological Reviewに詳しく説明されています。
    また、使いやすさのテストは、www.plainlanguagenetwork.org/plaintrain/Testing.html のPlain Language Association International によって定義されています。

2021年2月11日

第41回 ヘルスリテラシーを

毎日新聞 2021年2月11日 東京朝刊

聖路加国際大教授 中山和弘


 紙面での連載も最終回となりました。ありがとうございました。初回を振り返ると、ぜんそくの子どもが物事を決められない大人に育ったが、それは自分だけではなかったとあります。私たちの調査では日本人のヘルスリテラシー(健康・医療情報を入手、理解、評価し、適切に決められる力)が低く、特に判断したり、意思決定したりするのが難しい傾向だったからです。

 この調査を実施し、新聞でも紹介されたのは2014年でした。当時は、ヘルスリテラシーという言葉は、本紙でもカッコで囲われました。それが最近は、メディアでよく登場します。先日は、政治家の石破茂さんが、日本人のヘルスリテラシーの低さと自らが判断する姿勢への期待に言及していて、おおと思いました。 

 そして17年に連載を開始し、まず、情報の信頼性を評価する方法である、「かちもない」=(1)書いた人は誰(2)違う情報との比較(3)元ネタは(4)何のため(5)いつ、を紹介しました。 

 しかし、信頼できる情報さえあれば決められるとは限りません。正しい答えを求めても、よく調べれば選択肢があり、それぞれの長所と短所を知り、価値観に合ったものを選ぶことが大切です。そして、そうした意思決定こそが、自分らしく生きる幸せにつながると書きました。

 ただし、こうした国際的に推奨されている方法が、ヘルスリテラシーとどう結びつくのかという十分なエビデンス(科学的根拠)はない状況です。さらに、現在のような緊急事態宣言下でも、冷静で適切な行動につながるかです。そのため、新たな研究を進めていて、結果はサイト「健康を決める力」でも紹介します。

 ヘルスリテラシーの低さは、自助・共助・公助でも、学ぶ機会や環境に恵まれなかったからです。そもそもリテラシーとは人権です。世界中の国がこぞって施策を講じているのは、その低さを嘆き責めるためではありません。学歴などを問わず、伝わっていたはずの情報が伝わっておらず、健康格差の要因だったことへの衝撃からです。対象に合わせたコミュニケーションと意思決定の支援が不可欠です。そうした社会に変える力もヘルスリテラシーと呼ばれます。

 決められないままの夢想家で終わるのも一つの選択肢かもしれませんが、一人でも多くの方の参加を希望します。

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