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3.知りたい情報はインターネットで アーカイブ

2008年4月 4日

【資料編】インターネットが優れている点とは?


インターネットとは

1)インターネットで世界中のコンピュータがつながる

 インターネットとは、全世界にあるコンピュータのネットワークを共通のルールを使うことで、お互いをつなげたネットワークのネットワークのことです。形からよくクモの巣に例えられます。現代社会はこのおかげで世界中のコンピュータが分け隔てなくつながっている状態になってきました。

 この、インターネットにつながってるコンピュータを使って、いわゆるホームページやそこでのリンクなどで情報を公開したり共有したりできるしくみが、ワールドワイドウェブ(World-Wide Web)です。これは、Web などと略されますが、この意味は英語でクモの巣です。このしくみがあるために、私たちは自分のコンピュータから世界中の他のコンピュータ上にある情報へアクセスすることが可能になっています。

2)インターネットがほかのメディアと比べて優れている点

 このインターネットが広く普及したわけですが、それには理由があります。それが従来のメディアに比べていくつか優れた点をみてみましょう。
(1) 24時間いつでも最新の情報を得やすい
 まず、情報の即時性についてです。これは2つの意味が考えられますが、1つ目として、インターネットは欲しい時に欲しい情報がすぐに得られる情報源であるということです。私たちは、インターネットに接続すれば24時間いつでも情報を得ることができます。予期せぬ事態に遭遇し、今すぐ情報が欲しいと思った時に、新聞やテレビではすぐに得たい情報は得られないでしょう。

 また、もう1つの意味合いとして、インターネットを利用すると最新の情報が得られやすいというメリットもあります。インターネット上の情報は、公開の状態にありながら常に更新することができます。新聞やテレビは情報が発信された後に更新されることはありませんが、インターネットでは絶えず情報が更新されているので、利用者は新しいものが入手できるのです。もっとも、インターネット上には古い情報がそのまま放置されていることもありますので、使う側が、その情報がいつ更新されたものなのかを意識して使う必要があります。

(2) 欲しい情報を検索することができる
 次に、検索機能が発達していることです。インターネット上では、キーワードで検索するとそれに関連した情報を簡単に閲覧することができます。過去の新聞の山をひっくり返して情報を探すということをせずに済み、自分が欲しい情報を得ることができるでしょう。代表的な検索サイトであるグーグル(Google)やヤフー(Yahoo!)は、キーワードを入れると、該当するページの一覧が並び、そこから情報にアクセスすることができます。グーグルで何か調べる行為のことを「ググる」と言ったりしますが、辞書の代わりのように、分からないことはすぐにインターネットで検索して情報を得るということが一般的になりつつあります。
(3) リンク先に飛ぶことで、情報が芋づる式につながる
 加えて、インターネット上の情報の強みとして、"リンク先"を持っているということがあります。このリンク機能のおかげで、ひとつの情報は複数の情報源と繋がっており、芋づる式にそれをたどっていくことができます。そうすることで、思っていなかったところで欲しかった情報が見つかったり、さらにより詳しい情報を得られたり、情報を比較検討してより適当な情報を選択することができるでしょう。

3)ITからICTへ

 このような、インターネットの技術のことを、IT(Information technology)と呼んできました。日本でも、90年代後半から「IT革命」という言葉が広く使われましたが、海外ではどちらかというと、ICT(Information communication technology)が使われることが一般的になってきました。それは、この技術がコミュニケーションの道具として利用されていることに由来します。日本政府が情報技術に関する国際競争力を高める目的で発進している「ICT政策大綱」[1]も、2004年にIT大綱からICT大綱へ変更されました。

 このITからICTへの変化は、そのインターネットの持つコミュニケーションの役割が高まっていることを表しています。確かにいつでも最新の欲しい情報を次々と探せます。しかし、それだけでなく、人とメールできたり、掲示板で情報を交換したり共有したり、質問したり回答したり、日記を公開しあったり、お店や商品の評価を言いあったりと、コミュニケーションが多くできるようになってきています。

(瀬戸山陽子、中山和弘)


文献
[1]総務省.ICT対策大綱.nanonet(オンライン),入手先
〈http://www.nanonet.go.jp/japanese/info/policy.html?org=2050〉.(参照2008/03/16)

2008年4月10日

インターネットを使って健康になれる?


 ここでは、まず、インターネットを使っている人のほうが健康になっているという研究結果を紹介します。そして、それがどうしてなのかということについて、最近のインターネットの動向から、考えてみます。また、みなさんがインターネットをよりよく活用するためにはどうしたらいいかについて、考えていきたいと思います。

1. インターネットを使っている人のほうが健康になる?

 信頼できるエビデンスナラティブについての情報がインターネットに多くあります。あるからといって、それを利用すれば、健康になるのでしょうか。

1)インターネットの利用と健康の関係に関する研究

 ヨーロッパで行われた1万人以上の大規模なデータの分析では、、個人的な目的でインターネットをよく利用している人のほうが、「自分が健康である」という意識が高かったと報告されています[1]。また、この研究では、インターネットをよく利用している人は、人からサポートされることが多かったともいっています。その内容は、より多くの友人、家族、同僚と会ったり、何でも相談できたり、ほかの人より人づきあいなどのコミュニケーションが多いというものです。そして、そのような付き合いの多い人は自分が健康であると思っていたのです。

では、病気を持つ患者についてはどうでしょう。アイゼンバックという研究者は、医療情報サイトからの情報や、メールやネット上のコミュニティでのコミュニケーションが、がん患者の健康状態に影響すると述べています[2]。これらによって情報や知識が増えるので、自信が持てるようになり、医師に適切な質問ができるといいます。医師とメールができれば、さらに医師とのコミュニケーションが増えます。そして、医師とともに情報に基づいた意思決定が行えて、納得した形で療養生活が送れます。また、コミュニティからのサポートは、孤独感を解消し、ストレス軽減などの様々な心理的効果が得られます。こうして、結果的に健康状態に良い影響を与えるとしています 。

 いくつかの研究でも、特定の病気を持った患者さんが集うネットのコミュニティで、参加者が書き込みをし合うことを通じて、サポートのやり取りをしていることが示されています [3,4]。そのサポートのやり取りにはどんな意義があるかというと、参加者の間に厚い信頼が芽生えていること[5]や、参加者が様々な力を得ている[4]ことが明らかになっています。

 このような健康と関連しているような人間関係におけるサポートをソーシャルサポートと呼びます。つらい出来事があっても、ストレスと感じにくくしたり、ストレスを感じた時でもそれに対処しやすくして、健康を守るといわれています。そして、ここで紹介した研究からは、ネット利用→情報→よりよい意思決定→健康という流れがあるだけでなく、ネット利用→ソーシャルサポート→健康というもう一つの流れあることを示しているわけです。  

2. インターネットを使っている人のほうが健康になる理由は?

 つぎに、インターネットの利用がソーシャルサポートを増加させているということに関連して、ソーシャルメディアによるインターネット上の進化について述べていきたいと思います。

1)誰もが参加できるソーシャルメディア

 従来、Webにおいては情報の流れは一方向的でした。ホームページを作って情報を流すのは、大きな組織かWebに詳しい個人が中心でした。発信者は情報を発信したまま、受け手である多くの人は必要な情報を受身的に探すだけで、情報の送り手と受け手が固定されている状態でした。

 それに対して、2000年ごろから、インターネット上に、誰でも簡単に情報を発信することができるようなしくみが出てきました。この時期に使われ始めたものとしては、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス、現在ではFacebook、Twitter、LINEなど)、Q&Aサイト(Yahoo!知恵袋、OKWaveなど)、評価サイト(価格コムなど)などがあります。これらは、誰もがコメントを書き込める機能があります。従来情報の受け手であった人々が、発信者から出された情報に対してコメントを付けたり、発信者がそのコメントに対してさらに答えたりと、情報の「やり取り」が行われるようになったという点です。つまり、インターネット上で相互作用が行われるようになったのです。これらは、現在、ソーシャルメディアと呼ばれます。

 今やブログやSNSを用いれば、誰でも見栄えのいい自分のページをインターネット上に持つことができ、手軽に情報発信を行えます。そして、それを見た人が、発信されたものに対して直接書き込みを行うことも簡単です。また、他の人の書き込みにさらにコメントをつけたり、複数の人たちのやり取りを参考にしたりすることもできるようになりました。このように、ソーシャルメディアでは、情報の利用者が、発信された情報に対して直接的に意見を述べることができ、その場に参加することができるという意味で、「利用者(ユーザー)参加型」[6]メディアと言われています。

2)ソーシャルメディアが普及したのは、ナラティブな情報が欲しいから?

 ソーシャルメディアが広く普及したのはなぜでしょうか。情報発信したい、自分の情報を残しておきたいという思いがある人は、誰でも参加可能というのもあります。しかし、それだけでは一方向になってしまいます。自分が得た情報を発信し、それに対する自分の評価や受け止めに対して、ほかの人からの評価やコメントがもらえればという思いがそこにはあります。

 例えば、ある商品を買う際、その商品の評価サイトがよく利用されるようになりました。そこには、その商品の価格や機能という固定された情報が掲載されていると同時に、その商品を実際買った人の評価が星印で載せられていたり、コメントが寄せられていたりします。この商品を買おうか迷っている人にとって、実際に使ってみた人の意見や感想は大いに参考になるのではないでしょうか。これはその人が過去の経験を通して新しいものについてどのように語るのかであり、ナラティブな情報といえるでしょう。

 これは、情報を手に入れても、自分だけですぐにうまく利用できるわけではないということを表していると思います。自分が得た情報は、様々な価値観を持つ人に解釈され、語られることによって、自分にとっての価値がより明確になります。そして、その価値に基づいて意思決定に使えるようになるのではないでしょうか。

3)保健医療の分野でのソーシャルメディアのナラティブ情報

 ソーシャルメディアの使い方は、保健医療分野においても広く普及しています。例としては、同じ病気を抱えた人が集う患者コミュニティや、Q&Aサイトでの病気や健康に関する質問と回答、自分の闘病記をブログで綴ること、病院を評価するサイトなどがあります。これらは誰もが参加できるソーシャルメディアということができます。患者コミュニティなどソーシャルメディアに書き込みを行えば、経験者やその家族などが、自分の経験を教えてくれたり、家族としてのアドバイスをくれるでしょう。また、医療者が閲覧しているサイトでは、書きこまれた内容について医療者としてどう思うか、どうしたほうがいいと思うか、コメントをくれる場合もあります。

 今、主治医から、ある治療法と治療成績に関する過去のデータを提示されたとします。この情報はエビデンスに基づいた情報です。これだけで意思決定できればいいのですが、それはなかなか難しいことです。重大な選択であれば、家族はどれがいいと思うのか、他の人が治療法をどのような価値で選んでいるのか、治療を受けた人はどのような状態になってどう思っているのかを知りたくなるでしょう。「エビデンス」情報に対して、個人の経験はどうであったか、何を感じたかという生の声、「ナラティブ」情報が追加されます。つまりインターネット上で、エビデンス情報とナラティブ情報のやり取りが行われているのです。

4)インターネット上でコミュニティを作るのは私たち

 日本では欧米と比較すると、インターネットに対する信頼度が低いと言われています。いまだに、誰でも書き込めるインターネット上の掲示板などのコミュニティは、誹謗中傷やウソの情報ばかりが横行している良くないものだと思っている人がいるかもしれません。確かに、嘘のエビデンスや、商品を売るための偽物の経験談としてのナラティブもあるかもしれません。

 しかし、SNSでも、様々な健康・医療関係のコミュニティが作られ、その中で情報やサポートのやり取りがなされていることが、実際に閲覧してみると分かります。また、健康関連の質問も多いQ&AサイトのOKWaveやYahoo!知恵袋では、治療法選択で迷っている人からの書き込みに対して、様々な立場からコメントがされていて、サポートのやり取りが行われている様子が見て取れるでしょう。

 今やソーシャルメディアの時代になって、その世界をどのようにするのかは、ますますその利用者にかかっています。嘘や偽物を見抜く目を持ったり、確かな目を持つ人を見つけたり、みんなで助け合えるのがコミュニティで、インターネットはコミュニティそのものです。

3. インターネットと情報格差、健康格差

1)情報活用ができれば健康になれるなら、できないと健康になれない

 インターネットが活用できることは、健康になることにとって重要な要素であると言えそうです。 しかしこれは逆に言うと、活用ができないと、健康になれないということではないでしょうか。

 情報が得られる人と得られない人がいるとすれば、それは情報格差です。そして、情報格差は健康格差を生みだす可能性があります。健康格差の要因には、国の間であれば一人当たりのGDPなど、よく経済格差があげられます。しかし、経済格差は情報格差を通して、健康格差につながるという現象は、無視できない社会問題になりつつあります。WHO(世界保健機関)も国や地域の健康格差は情報格差で起こっていることを指摘し、それを埋めるべく情報通信技術(ICT)の活用を訴えています。

 では、どのようにしたら、情報格差は解消することができるのでしょうか。

2)インターネットへの接続だけでは不十分

 総務省の「平成27年通信利用動向調査」 によると、インターネットの利用者は1 億 46 万人で、普及率83%です。年齢別の利用率では、中学生から40代までは95%以上で、50代で91%、60代で4人に3人、70代で2人に1人となっています。60代以上で利用率が低くなっていますが、とくに60代、70代で増加してきている状況です。

 この結果からは、とくに世代差が大きいと見ることができます。これも、将来的には普及率は95%以上になるでしょうが、現状では何が課題でしょうか。確かに、パソコンや携帯を高齢になってから使うことにチャレンジしている人もためらう人もいるでしょう。確かに、自分で接続することも便利なことです。しかし、健康情報を得るためには、接続している人でしかもそこから情報を探して活用できる人、すなわちヘルスリテラシーを身に付けた人でなくてはなりません。接続していてもそうでない人はいます。したがって、問題はそのような人になるか、そうでなければそのような人が身近にいていつでも聞けるかです。

 現在、高齢者は一人暮らし世帯や夫婦世帯が増加しています。そういう意味でも、ネットワークが重要な意味を持ってきています。ヘルスリテラシーのある人が増えて、その人と結びついていくことが必要です。情報格差の解消にとっては結局は人と人との結びつきが大切と言えそうです。

 誰でもインターネットを使える社会という方向もありますが、誰でもヘルスリテラシーのある人と結びついている社会を作り上げることが求められます。

3)高齢者や障がい者のバリアを取り除く

 また、インターネットに接続できても、それがいくらヘルスリテラシーの高い人であっても、サイトに壁があれば話は別です。年をとってきて、小さい文字が見づらい時に、画面の文字が小さ過ぎて、大きくしようにもそうできない場合はどうでしょう。また、視覚に障がいのある人は、多くの人は画面の文字を順番に音声で読み上げてくれるソフトを使います。もしくは、自動的に点字に変換されて出力されるソフトを用いることもできます。しかし、文章がなくて写真や図の説明しかない場合はどうしようもありません。視覚的にわかりやすくと思ったはずですが、文字の情報も同時に必要なのです。同じく、色覚異常の人も色だけで区別して説明してあっても困ります。また、聴覚に障がいのある人の場合は、音声だけとか、ビデオでも画像と音声だけ文字がない場合は、内容を知ることができません。

 情報がそもそも手に入るのか、アクセスできるのか、門前払いになっていないか、という問題です。このように、高齢者でも障がい者でも、誰でも情報を入手できるような状態になっていることを、「アクセシビリティ」と言います。このアクセシビリティを整えることは、情報発信側が必ず配慮すべき事柄です。とくに身近な地域の情報を発信する行政では、情報格差が生じないようによく気をつけておくべきことでしょう。

4)誰もが情報を見つけやすいサイト

 さらに、利用する人がより「使いやすい」ようになっていることを「ユーザビリティ」と言います。これは例えば、サイト全体でどこに何があるのかがわかりやすくなっている、更新された新しい情報がすぐにわかる、検索用の入力欄が目立つ場所にある、リンクが見やすい、リンク切れがない、誰が作成しているサイトかすぐわかることなどがあります。

 これらのアクセシビリティとユーザビリティはあまり厳密に区別されているものではなく、基本的には誰にも使いやすいことを示しているといえます。詳しくは、世界共通のガイドラインも発行されているます。W3C「ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン」や、eふぉーらむ「ウェブ・ユーザビリティ・ガイドライン」などをご覧ください。

 

5)信頼できるサイトに出会えること

 インターネットは賢く使わないと、かえって混乱したり不安になったりする健康被害をもたらす可能性があるものです。ただ使えると言うのでは不十分で、その特徴を知って、信頼できる情報の探し方について理解して使うことが求められるメディアです。自分でハンドルを握っているドライバーと同じだというはなしもあります。交通ルールやマナーを守るように、インターネットでのエチケットをネチケットといいますが、それを守ることも必要です。ただ、安全運転でも目的地がきちんとないとさまようばかりです。

 そもそもたどり着くべき信頼できるサイトがなくてはなりません。そのようなサイトを見極める方法については、いろいろな指針や手引きがでています。わかりやすく簡単なものとしては、インターネット上の保健医療情報の見方を見てみてください。最後のリンクも参考になります。

 みなさんは健康情報を探すときにどのような方法を使いますか。病名や症状をキーワードとして、GoogleやYahoo!などで検索することが多いかと思います。検索してヒットしたものを1ページ目から見ていくと思います。2ページ、3ページぐらいまででしょうか。しかし、この出てくる順番は何によって決まっているのでしょうか。信頼できる順ならよいのですが、必ずしもそうでないのが現状です。検索サイトによっては、お金を払っている額がものをいう場合も考えられます。また、検索サイトで上位に出るようにしてくれる会社はたくさんあって、そこにお金を使っているかでも違います。そうして上位に出るようになると、多く見られることになるので、またさらに上位になるというしくみです。

 実際に、キーワード検索では、商業目的のサイトが出やすいのが現状です。信頼できる情報を出しているところがあっても、後ろのほうにしか出ない場合があります。その点、英語で検索すると、アメリカの厚生省や関連の研究所、国立医学図書館などが上位にあがります。市民向けの情報もたくさんあって、信頼できる情報をわかりやすく使えるための研究に基づいたサイトもあります。

 したがって、英語がわかる人であればよいですが、そういう人が身近にいると心強い味方になります。日本のサイトでは、やはり国公立のサイトや大学のサイトが信頼ができると考えて、あまり表示順を気にしないほうがいいと思います。また、そのようなところでリンクしてあるところも信頼性が高いと考えられます。

 手掛かりとして、次のリンクを紹介しておきます。ご参考までに。

5)信頼できる人に出会えること

 また、信頼できる人、ヘルスリテラシーの高い人が運営しているサイトや、ブログやSNS、twitterなどはどのように探したらよいでしょう。ここでも、インターネット上の保健医療情報の見方と共通する点が多くあります。ブログなどは、ソーシャルメディア時代の道具ですから、その人が他の人とどのようなやり取りをしているかも判断材料です。また、こちらから何でも書きこめます。質問や意見などをすることで、コミュニケーションをとるのも一つです。場合によっては、実際に会ってみることもいいかもしれません。問題はやはり、商品を売ろうとする人、お金もうけのために書いている人には基本的に注意が必要でしょう。

(瀬戸山陽子、中山和弘、宇城 令) 更新日2017年1月19日


文献
[1] Wangberg S.C. et al, Relations between Internet use, socio-economic status (SES), social support and subjective health. Health Promotion International, 23(1), 70-77, 2007

[2] Eysenbach G:The Impact of the Internet on Cancer Outcome. A Cancer Journal for Clinicians. 53. 356-371. 2003
[3]Coulson, N. S., Buchanan, H., & Aubeeluck, A. (2007). Social support in cyberspace: A content analysis of communication within a huntington's disease online support group. Patient Education and Counseling, 68(2), 173-178.

[4]Coulson, N. S. (2005). Receiving social support online: An analysis of a computer-mediated support group for individuals living with irritable bowel syndrome. Cyberpsychology & Behavior, 8(6), 580-584.

[5]Radin, P. (2006). "To me, it's my life": Medical communication, trust, and activism in cyberspace. Social Science & Medicine, 62(3), 591-601.

[6]Sharf, B. F. (1997). Communicating breast cancer on-line: Support and empowerment on the internet. Women & Health, 26(1), 65-84.


2008年4月 9日

インターネット上の保健医療情報の見方

質の高い情報をさがす

 サイトに書かれた内容の質については一定の評価方法がまだあまり確立していません。しかし、次の基準をポイントとしてご覧になると良いでしょう。

営利性のない情報か

 最新の科学的に見える情報であっても、情報提供の裏に物品の販売や特殊なサービス等の営利的な目的が隠されている場合があります。その情報提供によって、誰かが利益を得る仕組みになっていないかどうかを見極める注意が大事です。

掲載された情報の根拠が記載されている、または引用が明らかにされているか

 論文や記事など紙面の発行物の引用が明らかになっている情報を利用されることをお薦めします。

掲載された情報の記載日が明らかにされているか

 健康や医学に関する情報は日進月歩で進歩しています。最新の情報も更新されないままでいると、いつのまにか古い情報になって、その利用価値も変化していきます。掲載された情報が、いつの時点のものか、またいつ更新されたのかを常にチェックしていく必要があります。

運営や編集の方針、利用者のプライバシー保護などについての考えを示しているか。

 どのような考えでサイトを運営、編集しているのか、また、利用者の情報を記入することがある場合は、プライバシーの保護について書かれているか確認しましょう。

他のサイトへのリンクが豊富にあるか。ページの信頼性を保障したサイトへのリンクがあるか。

 似たようなサイトへのリンクは、訪問者が求めているものへの配慮であり、情報の比較を推奨していることにもなります。

サイトは見やすく作っているか、アクセスしやすいか。

 訪問者への基本的な思いやりをあらわすものでしょう。

複数の情報を比較する

 インターネット上ではいろいろな立場の人が、いろいろな考えをもって、情報発信をしています。同じテーマでも、立場によって見方が違ってきます。特定の情報だけを利用するのではなく、複数の情報を読み比べながら、自分に必要な情報を選び取っていく姿勢が大切です。

『かちもない』または『いなかもち』で覚える方法

上で挙げた内容について、5つにポイントを絞って、次のように覚える方法も考えられています[1]。

か:書いた人はだれか?→信頼できる専門家か、所属があやしいかも
ち:違う情報と比べたか?→他の多くの情報とは全く違うかも
も:元ネタ(根拠)は何か?→引用文献がなければ勝手に言っているだけかも
な:何のために書かれたか?→商業目的でしかないかも
い:いつの情報か?→古くて現在では違うかも


『かちもない』は、「情報は5つを確認しないと『価値もない』」と覚えられます。
同じ5つを入れ替えた『いなかもち』では、「飾らず素材のままで信頼できる『いなかもち』のような情報」 でしょうか。

自分の責任で選択する

 インターネットは世界中の情報を瞬時に手にすることができる点で非常に便利なものですが、それを利用したことで損出を被ったり、被害を受けたとしても、その責任は自分にあるということを忘れないで下さい。インターネットは善意で支えられているネットワークです。情報を提供した人には責任を問わないことを知っておいてください。公開されている健康・疾病に関する情報、そして電子メールや掲示板、メーリングリストのコメントも皆そうです。

 インターネットなどで提供される医療情報の中には、現在の標準的な医療に合わないものや、科学的な根拠のあいまいなものがあったりします。提供された情報を鵜呑みにせず、常にリスクを考え、そして情報利用の結果を冷静に評価して下さい。情報利用に際しては、情報の中身を自ら検証する気持ちをもって、また利用の結果に対しても、冷静かつ公平に評価が下せる余裕が必要です。

トラブルにあったときは

 万が一、医療情報を利用して、健康被害やトラブルを被った時は、医師や看護師、保健師、助産師、薬剤師など医療専門職、国民生活センターや地方公共団体の消費者センターなど公的な相談センター、あるいは中立的な第三者にあたる人または機関に相談してください。くれぐれも、一人で悩んで抱え込まないようにしてください。すみやかな情報の提供が、次なる被害やトラブルの発生も未然に防ぎます。

下記の相談窓口をご利用ください。

参考になるサイト

下記のサイトも健康情報を見るときに役に立つサイトです。見比べてみてください。

(的場智子、中山和弘)

文献 [1]聖路加国際大学:ヘルスリテラシー学習拠点プロジェクト教材作成

2008年4月 4日

Webコミュニティでサポートしあう

 インターネット上では単にコミュニケーションをとるだけでなく、同じような悩みを抱えた人が集い、そこにコミュニティ(同じ目的や価値観を持った人々の集まり)ができるという現象が見られています。
 コミュニティの中では、ある参加者が相談したことに他者がアドバイスをしたり、誰にも言えない悩みを打ち明けてそれを受け止めてもらったりということが日常的に行われています。
 このページでは、このような、人をサポートする機能を持つインターネット上のコミュニティ(以下、Webコミュニティ)について扱います。

Webコミュニティで得られるサポート

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Webコミュニティで得られるサポートには、いくつかの種類があります。

情報的サポート

 まずは、情報を得られるというものです。これは「情報的サポート」と呼ばれ、何かわからないことがあった時に、既に経験している人が情報を提供してくれるというものです。

情緒的サポート

 次に、辛い経験をしたときなどに、励ましてくれたり慰めてくれたりするサポートもあります。これは「情緒的サポート」といわれます。

自分だけではないと思える

 病気など必ずしもみんなが経験するわけではないことを経験すると、なぜ自分だけがこんな目に合わなければいけないのか、なぜ自分だけつらい思いをしなくてはいけないのかと思います。それでも、同じような経験をしている人がいると、自分だけではない、自分は特殊な人ではない、同じ経験をすれば誰もがそう思うのだと、安心する気持ちを持てるようになります。

自分自身についての振り返り

 さらに、他の人が書き込んでいる内容を読んで、自分自身の行動や思いについて振り返ったり、見つめ直したりできるという機能もあります。

他の人をモデルにする

 他にも、他の人がどうしているかを知ることで、その人を自分自身の生き方や生活の仕方のモデルにする(モデリング、観察学習などといいます)といった場合もあります。例えば、同じ病気を抱えた人が集うWebコミュニティでは、医師への質問の仕方や、ふだんの気持ちの持ち方など、当事者ならではの体験知がその場で共有されています。医師との関係がうまくいかないことに悩んでいた人がコミュニティを訪れて、他の人が医師にどのように自分の思いを伝えていたかを知り、その伝え方や準備の仕方を真似してみることで、自分と医師の関係もうまくいくようになるということがあります。同じ体験を持つ人が集うWebコミュニティでは、このようにロールモデル(お手本となる人物)を探すことが可能です。

人の役に立つことで癒される

また、興味深いことに、Webコミュニティ上で誰かの質問に回答してあげたり、誰かを励ましたりして自分が他の人の役に立つことが、自分の癒しにつながること(ヘルパーセラピー効果といいます)があります。これもWebコミュニティで見られるサポートのひとつです。

 これらのさまざまなサポートは、インターネットが普及してから新しく出てきたサポートではありません。これまで顔と顔を合わせた患者会などの対面のコミュニティでも、同じようなサポートが見られると報告されてきました。
 もちろんそれも貴重なのです。ただ、対面のコミュニティは特定の時間にそこにいなくてはいけないという物理的な制約があります。また、素顔を出して話をしなくてはいけないため、心理的な負担もあるでしょう。
 Webコミュニティでは、匿名でもいいですし、24時間いつでも使えるため、そのような負担が少ないというメリットがあります。その一方で、匿名だと、やり取りしている相手が誰だかわからないことによる信頼性の低さということが、デメリットとして挙げられるかもしれません。

 どんなものにもメリット、デメリットがあるのは当然です。

 Webコミュニティは、選択肢の一つではありますが、オールマイティではありません。
 体験者から話を聞きたいと思った時、自分にとってのメリット・デメリットをよく考えて、対面コミュニティとWebコミュニティをうまく使い分けられれば良いと思われます。

サポートが得られるWebコミュニティの種類

 Webコミュニティには様々な種類がありますが、現在はソーシャルメディアを活用したコミュニティが中心となっています。

 ソーシャルメディアには、インターネット上で社会関係を築くメディアで、従来から使われてきた掲示板をはじめとして、FacebookなどのSocial Networking Service(SNS)や、Twitterなどのマイクロブログ、個人のブログ、動画投稿サイト、Q&Aサイト、口コミサイトなど、多様な形があります。基本的にどの種類のWebコミュニティでも、その中で人と人との対話があり社会関係が築かれるので、その中でのサポートのやりとりが生じます。

 しかし、そのサポートがソーシャルメディアの種類を超えて同じかというと、そうではなさそうです。

 例えばTwitterなどは匿名性が高く、勝手に相手をフォローすることができますが、Facebookなどは実名で、友達になって相手の投稿を見るには通常お互いの承認が必要になります。匿名性の高いTwitterでは、自分の素性を明かさずに話ができるという気軽さがある一方で、相手の素性もわからないので、情報の信頼性を確かめることも難しくなるかもしれません。
 他方で、Facebookは原則的に実名登録で、もともと対面で知り合いの人がつながる場合が多いので、どこの誰さんが何を言っているということが分かり、情報の信頼性は上がるかもしれません。しかし、例えば自分の病気のことを周囲に打ち明けていない場合は、Facebookには書き込みをしづらいという状況も考えられます。

コミュニティをうまく使いこなすために

コミュニティ

 このようにWebコミュニティには様々な種類があり、それぞれに特徴があります。また対面のコミュニティとWebコミュニティでもそれぞれにメリット・デメリットがありそうです。

 では、これらをうまく使いこなすにはどうしたらいいでしょうか。

 それには、まず体験者の人に何を期待しているのか、何を求めてコミュニティを利用しようとしているのかを明らかにしておくといいと思います。使い始めてから分かることももちろんあります。
 しかし、コミュニティの中には非常に多様な人が人間関係を築いて対話を行っているため、それに飲み込まれたり、多くの情報を取捨選択できずに翻弄されてしまうと、自分の目的が果たせなかったりする危険性もあるでしょう。

 また、これはWebコミュニティについてですが、やはり対面のコミュニティに比べると手軽であるために、ここでは膨大な量の情報が飛び交います。それらは、正しいという保証がないものもありますし、自分の場合に当てはまらないこともあります。匿名性の高いコミュニティでは、医療者を名乗っていても、本当は医療者ではないという場合も、もしかしたらあるかもしれません。

 そのような大量の情報が飛び交う中、情報を見極めて、うまくWebコミュニティを使いこなすには、やはり情報にアクセスして、理解し、それを活用する能力であるヘルスリテラシーが求められます。自分がその情報の真偽を確かめるのはもちろんですが、わからなければ他の情報源のものと見比べたり、主治医や信頼できる周りの人に尋ねたりするのもいいでしょう。

 Webコミュニティは、多様なサポートが得られて気軽に使える資源と言えるので、それを上手に使いこなすために、ヘルスリテラシーを意識しながら使えるとよいと思います。

(瀬戸山陽子、中山和弘)

文献
[1]Setoyama, Y., Yamazaki, Y., & Nakayama, K. (2011). Comparing support to breast cancer patients from online communities and face-to-face support groups. Patient Educ Counseling, 85(2), e95-100.

健康情報のためのソーシャルメディアの活用

健康情報のためのソーシャルメディアの活用

ソーシャルメディアとは

 ソーシャルメディアとは、インターネット上のブログやFacebook、Twitter、YouTubeなどで代表されるものです。基本的にオープンで、誰もが参加できて、そこでつながりができていくメディアです。例をあげてみました[1]。

ソーシャルメディアの種類

ブログ

アメーバブログ、ココログ、Blogger

SNS

Facebook、Twitter、Google+、Tumblr、mixi

患者向けSNS

患者SNS、PatientsLikeMe

専門職向けSNS

LinkedIn、ResearchGate、Academia

医師向けSNS

メドピア、地域の医師会等のSNS、Sermo

看護師向けSNS

ナース専科、allnurses

動画・画像共有

YouTube、ニコニコ動画、Instagram、Pinterest、Vine

メッセージングアプリ

LINE、WhatsApp、Facebook Messenger

情報共有サイト

Wikipedia、SlideShare、クックパッド

口コミサイト

価格コム、食べログ

病院口コミサイト

Qlife、病院の通信簿

Q&Aサイト

Yahoo!知恵袋、OKWave(教えて!goo)

医師によるQ&Aサイト

アスクドクターズ

掲示板、フォーラム

看護ネットよろず相談所、2ちゃんねる、textream

 
 保健医療の世界でも、政府や行政機関(厚生労働省など)、病院、大学、研究所、学会や学術雑誌の出版社、大学教員や研究者(私もその一人です)、医師、看護師、薬剤師などの専門家やそれを学ぶ学生がソーシャルメディアを用いるようになりました。アメリカを中心として欧米では、保健医療関係のほとんどといってよいほど組織や団体がソーシャルメディアを活用しています。学会のサイトを見ても海外はほとんどTwitterやFacebookを使っています。日本の学会や組織はソーシャルメディア活用のメリットをまだ認識できていないと思います。
 健康に関する代表的な国際機関であるWHO(世界保健機関)のFacebookでは300万人以上の「いいね!」、Twitter(@WHO)では300万人以上、Google+で100万人以上、Instagramで約30万人のフォローがあります。YouTubeも視聴回数は1000万回を超えています。アメリカの厚生省にあたるHHS(保健福祉省)でもTwitter(@hhsgov)のフォローは60万以上、その所属機関であるNIH(国立衛生研究所, @NIH)、CDC(疾病予防センター, @CDC)は70万以上で、NCI(国立がん研究所, @NCI)などほとんどの機関でソーシャルメディアが使われています。市民向けの健康情報サイトMedlinePlus(@medlineplus)やHealthfinder(@healthfinder)などもそうです。
 また、アメリカの病院でもそうです。国際的に著名で評価の高いアメリカのメイヨークリニック(Mayo clinic)は、コンスタントに健康医療情報を発信していて、Twitter(@MayoClinic)のフォロワーも140万以上です。専門職のための研修プログラムやソーシャルメディアの活用のためのセンターを作り、グローバルなネットワークも作っています。そこにある考えは、一人ひとりは自分の健康をまもる権利と責任を持っているのだから、ソーシャルメディアを使ってベストな情報を得られて、医療者やお互いのつながりをつくることができる手助けをする責任があるというものです[2]。そのため、誰でも登録・参加できてオープンな症状・病気についてのオンラインコミュニティも設置しています。
 日本の厚生労働省のTwitter(@MHWLwitter)は40万以上と多いですが、Facebookの「いいね!」はまだ1000件くらいです。附属機関であった国立健康・栄養研究所のTwitterは2000件ほどで、厚生労働省の関連機関ではあまりソーシャルメディアは使われていません。

 世界で、どのように利用されているのかを、まとめたものが次です [3]。

ソーシャルメディアの利用のしかた

  • 幅広い病気や症状に対する健康情報の提供
  • 医学的な質問への回答の提供
  • 患者と患者、患者と医療者との対話の促進
  • 患者の経験や意見に関するデータの収集
  • 健康に関する介入、ヘルスプロモーション、健康教育
  • スティグマの減少
  • オンラインでのコンサルテーションの提供

 専門的な健康情報の提供だけでなく、患者同士や患者と医療者の対話を促進することがあげられています。また、市民や患者が健康や病気についてよく知ることで、健康になる方法を広めると同時に、病気や障害への悪いイメージ(スティグマ)を減らすことも期待されています。
 ソーシャルメディアを利用する長所としては、次のようなことがあげられています[3]

ソーシャルメディアの長所

  • 他者との交流の増加
  • 手に入りやすく、共用できる、テーラーメードな情報の増加
  • 健康情報へのアクセシビリティとアクセスの拡大
  • ピア(仲間)のサポート、ソーシャルサポート(情緒的なサポート)
  • 人々の健康のサーベイランス(問題発見のための継続的な調査)
  • 健康政策への影響力

 やはり、他者との交流が増加することで、自分に合った情報を見つけられて、サポートしあうことが可能になる点が大きいでしょう。それに加えて、人々の投稿をもとに、新たな健康問題の発生や重大な病気の流行がないか調べることも可能になります。また、健康に関する政策について知ることで、意見交換したり議論したりすることで、政策に影響を与えることも考えられます。
 ただし、良い点ばかりではありません。次のような限界があげられています[3]

ソーシャルメディアの限界

  • 情報の信頼性の欠如
  • 情報の質に関する懸念
  • 情報過多
  • 自分の健康状態についてネットで見つけた情報を正しく活用する方法がわからない
  • 行動変容のためにより効果的なソーシャルメディアの技術がわかっていない
  • 健康への逆効果
  • 良くない保健行動
  • ソーシャルメディアが患者の受療行動を妨げるものになる可能性
  • 守秘義務とプライバシーの欠如
  • 個人情報を公開するリスクに気付かないこと
  • 害のある不正確なアドバイス伴うリスク
  • 医療者が患者とのコミュニケーションにソーシャルメディアを使わない可能性
 情報の信頼性や質に問題があると、健康に良くない行動をとって、むしろ逆効果になってしまう場合もあります。ヘルスリテラシーが低い人の場合は、とくにそうでしょう。専門家なのに不正確な情報を発信したり、患者の情報を漏らしたりプライバシーを侵してしまうリスクもあります。また患者や市民が情報提供やコミュニケーションを望んでも使ってもらえないこともあるでしょう。

(中山和弘)(公開日2017年4月4日)

文献

[1]中山 和弘:精神科医が注意すべきソーシャルメディアリテラシー.臨床精神医学 45(10), 1259-1267, 2016. ダウンロード
[2] Mayo Clinic Social Media Network. About MCSMN. https://socialmedia.mayoclinic.org/about-mcsmn/
[3] S Anne Moorhead, et al. A New Dimension of Health Care: Systematic Review of the Uses, Benefits, and Limitations of Social Media for Health Communication. JMIR 2013;15(4):e85 https://www.jmir.org/2013/4/e85/

保健医療の専門職のためのソーシャルメディア利用のガイドライン

保健医療の専門職のためのソーシャルメディア利用のガイドライン


 保健医療の専門職として、まず、医師がソーシャルメディアを利用する場合はどうでしょう。どのような点が注目すべき点なのかを知るために、すでに海外で作成されている医師向けのソーシャルメディアのガイドラインを紹介します[1]。医師以外の専門家でも共通して当てはまると思います。

アメリカ医師会のソーシャルメディア利用におけるプロフェッショナリズム

 アメリカ医師会の医療倫理原則のなかには、ソーシャルメディア利用におけるプロフェッショナリズム(専門職意識)というのがあります[2]。それは、次のようなもので、まず先にソーシャルメディアの長所が述べられています。

 インターネットは、医学生と医師がすぐにコミュニケーションをとったり情報を共有したり、何百万もの人々に簡単につながることを可能にした。ネットワークづくり(social networking)への参加や同様のインターネット上での機会は、医師による個人の表現をサポートできて、オンライン上で個人個人の医師が専門的な存在感を持つことを可能とし、職業における同僚意識や仲間意識を育み、社会の健康に関するメッセージや他の健康に関するコミュニケーションを広く普及させる機会を提供する。


 その上で、それは患者-医師関係に新しいチャレンジを生み出したとして、医師と研修医は、利用する場合に多くのことを考慮する倫理的責任を持つとしています。
 倫理的な問題として、まずは患者のプライバシーと守秘義務をあげています。プライバシーについては、いくらその設定をしても結局は限界があり、ネット上に出てしまえば永久にそこに残ると釘を刺しています。患者-医師関係においては、専門職としての境界の維持が強調され、そのためには個人的な内容と専門的な内容を分けることを提案しています。さらに、患者との関係以外には、同僚との関係において、職業倫理上問題のある投稿に対しては、注意を促すなど、互いに監視することを勧めています。


イギリスGMCのソーシャルメディア利用のガイドライン


 イギリスでは、医師の登録を司るGMC (General Medical Council、医事審議会)が医師のソーシャルメディアの利用のガイドラインを作成しています[3]。基本的なところはアメリカと同様ですが、まず、その長所が3つあるとしています。人々を健康関連の政策に巻き込むことをあげているのが特徴的です。

・人々の社会の健康や政策の議論への参加を促進する
・国内外の専門職のネットワークをつくる
・患者の健康とサービスに関する情報へのアクセスを促進する


 また、匿名性について触れられています。誰もがアクセスできるソーシャルメディアにおいて、医師であることを明らかにしているならば、名前も明確にするべきとしています。医師を名乗った人が書いたものは鵜呑みにされやすく、専門家の見解として広く受け入れられる可能性があるためです。


ウェブ上の医師の活動におけるベネフィット、ピットフォール(落とし穴)および安全策

 米国内科学会(ACP)と米国医事審議会連合(FSMB)は,ウェブでの医師の職業意識に関する声明を発表しています[4]。そこでは、ウェブ上の医師の活動におけるベネフィット、ピットフォール(落とし穴)および安全策という一覧表を作成しています。ベネフィットをしっかり意識しながら見られるつくりになっているので紹介します(表)。ネット上での活動内容別に整理されているので理解しやすいです。

表 ネットでの医師のベネフィット、ピットフォール、安全策


活動内容

起こりえるベネフィット

起こりえるピットフォール(落とし穴)

推奨される安全策

eメール、テキスト、インスタントメッセージによる患者とのコミュニケーション

・アクセシビリティの向上
・緊急性が低い問題に対する即時の回答

・守秘義務の問題
・face-to-faceや電話でのやり取りの代替になること
・デジタルによるやりとりの曖昧さや誤解

・デジタルによるコミュニケーションに適した話題についてのガイドラインの作成
・デジタルによるコミュニケーションはface-to-faceでフォローアップを続けられる患者だけにしておく

患者の情報を集めるためにソーシャルメディアを利用

・リスクがある、または不健康な行動をしている患者の観察やカウンセリング
・緊急の場合に介入する

・情報源の感度の高さ(本当に問題なのか)
・医療者-患者関係における信頼を脅かす

・探す目的や見つけたものの使い方をよく考える
・現在行っているケアへの影響をよく考える

ネット上の教材や関連した情報を患者と一緒に利用

・自己学習を通して患者のエンパワメントを促進する
・情報が不足している場合に補足する

・ピアレビューされていない情報によって不正確な情報が提供される
・治療と結果を誤って伝える偽物の患者サイトの存在

・コンテンツの正確性を確保するため情報を厳しく吟味する
・信頼できるサイトや情報源だけを患者に提供する

医師によるブログやマイクロブログの開設と他者によるブログなどへの医師のコメント投稿

・アドボカシー(患者の権利擁護や政策提言)とパブリックヘルス(社会の健康)の向上
・上記活動における医師の「声」を紹介する

・感情のはけ口や暴言を含むネガティブなコンテンツで、患者や同僚の名誉を傷つける

・投稿する前に一呼吸置く
・医師について投稿するような内容は、個人としてのものか医師という専門職を代表してのものかよく考える

一般のソーシャルメディアに医師が自分の個人的な情報を投稿

・ネットワークづくりとコミュニケーション

・専門職と個人の境界があいまいになる
・個人のことや専門職であることを公開することの影響

・ネットで社会的な活動するときは、ネット上の人格と個人と専門職者を区別する
・公開可能なものか精査する

患者のケアについて同僚とコミュニケーションを取る手段にネットを利用

・同僚とのコミュニケーションが容易になる

・守秘義務の問題
・セキュリティの低いネットワークで保護された健康情報にアクセスされる

・メッセージ送信や情報共有の安全性を確保できる健康情報技術を活用する
・保護された健康情報へのリモートアクセスやモバイル端末によるアクセスに関する各施設の方針に従う



以下、活動内容別に見てみましょう。

Eメールを含めたテキストによる患者とのコミュニケーション
 テキストによるコミュニケーションは、対面(face-to-face)でのやり取りにとって代わるものではなくて、両方を継続的に用いることを推奨しています。

患者の情報を集めるためにソーシャルメディアを利用
 患者の情報を集めることを目的にしたソーシャルメディアの活用が示されています。患者を見守り、緊急時には介入するベネフィットが挙げられ、ピットフォール(落とし穴)としては、患者の投稿が正確なのかどうかわからないことと、患者が医療者への信頼を失う可能性が指摘されています。推奨される安全策としては、見つけた患者の情報の利用方法とその影響をよく考えることとされています。

ネット上の教材や関連した情報を患者と一緒に利用
 患者が学習できるためにネットの情報をシェアするというのは、ソーシャルメディアでの活用方法としてはよい方法だと思います。ただし、情報の信頼性には注意が必要で、しっかりと吟味したものをシェアする必要性があげられています。
 しかし、ソーシャルメディアでは、たくさんの情報がやり取りされ、リンクなどからどんな情報にでも接触可能です。すべて吟味したものを提供しても、患者はいつでも検索して別の情報を手に入れることができます。そのため、患者にヘルスリテラシーが求められるところで、医療者はその向上のための支援を行うことも重要です。そこでは、継続的にやりとりできるソーシャルメディアの活用に期待がされます。

ブログやマイクロブログへの投稿
ブログやマイクロブログ(Twitterなど)への投稿ですが、ソーシャルメディア全体への投稿ととらえてよいでしょう。ベネフィットとして、アドボカシー(患者の権利擁護や政策提言)とパブリックヘルス(社会の健康)の向上、医師の「声」を紹介することがあげられています。
投稿では、感情的なもの、ネガティブな発言も可能なので、投稿する前に一呼吸置くという実践的な方法が紹介されています。さらに言えば、翌日まで寝かせておくという方法もあります。そして、すでに上記のガイドラインで紹介されている個人的な発言か、医師としての発言かの境界を明確にすることが提案されています。

一般のソーシャルメディアに医師が自分の個人的な情報を投稿
ソーシャルメディアに個人的な情報を投稿することについては、やはり、個人と専門職の境界の問題が指摘されていて、それを区別することが提案されています。

患者のケアについて同僚とコミュニケーションを取る手段にネットを利用
同僚と患者のことでコミュニケーションをとるというものでは、守秘義務の問題とあとはセキュリティの問題となっています。ソーシャルメディアや情報システムのセキュリティの問題もあるが、端末の管理、すなわちID・パスワードの管理やアクセス権の管理などが重要となってきます。


イギリスの看護・助産審議会のガイドライン

 看護師の場合はどうでしょうか[5]。イギリスのNMC(Nurses and Midwives Council、看護・助産審議会)は、責任を持って適切に用いれば、看護師・助産師・看護学生にとって有益であると書かれています。次のことをすれば、資格停止、学生なら資格が取れなくなると警告しています[6]。

  • 機密性の高い情報を不適切にシェアすること
  • 患者やケアを受ける人々の写真を同意なしに投稿しないこと
  • 患者について不適切なコメントを投稿すること
  • 人々をいじめたり脅したり不当に利用すること
  • 患者やサービスの利用者と関係を築いたり追い求めたりすること
  • 個人情報を盗んだり誰かになりすましたりすること
  • 暴力や自傷を促すこと
  • 憎悪や差別をあおること

 どちらかといえば、ソーシャルメディア上では患者や市民との関係はつくらず、看護職同士の利用においてエビデンスにもとづいた正しい情報を提供することや、同僚と協力的に働くためにコミュニケーションをとる手段として使うことが中心となっています。

アメリカの看護連盟全国協議会のガイドライン

 アメリカでは、NCSBN(National Council of State Boards of Nursing、看護連盟全国協議会)が、ソーシャルメディア利用のガイドラインを出しています[7]。そこでは、ソーシャルメディアの長所として、専門家のつながりを育むこと、患者や家族とのタイムリーなコミュニケーションを促進すること、保健医療の消費者や専門家に教育や情報提供をすることがあげられています。さらに、その利用によって、看護師が自分たちの感情を表現したり、反省するかまたは友人・同僚・仲間やネット上の誰かからのサポートを探すことができるとしています。

 日々記録をすること(Journaling)や反省的実践(Reflective practice)は、看護の実践には効果的なので、ネットでそれができる点にも触れられています。しかし、そのような長所があっても、注意しないと、問題が生じると指摘されています。
注意すべき内容としては、イギリスのものと同様ですが、ソーシャルメディアの迷信と誤解について紹介されていて、そのうち次のものを紹介しておきます。大事なことです。

  • 投稿ややりとりは、プライベートなもので対象とする受信者しかアクセスできない(一度投稿されたものは他人に広めることができることをわかっていないかも)
  • サイトから消したコンテンツはもうアクセスできない(投稿された瞬間からサーバーに残っていて、いつも裁判で発見される)
  • 対象とする受信者にしかアクセスできないやりとりであれば、患者の個人情報を明らかにしても罪はない(これはそれでもやはり守秘義務違反)

医療系学生のソーシャルメディア利用

 次に、学生の利用について考えてみます。2010年に、アメリカの看護大生が、トレーに入った胎盤から出たへその緒をつまみあげ、満面の笑顔で撮った写真をFacebookに投稿し退学になったというニュースが話題になりました[8]。それでも、学生は、写真の投稿は教員に許可を得ていた、匿名のドナーから提供された胎盤を用いた授業でのことで匿名性を侵害してはいない、復学させてほしいと裁判所に訴状を出しました。


 彼女は「私たちは胎盤を観察したあの日は、看護師として重要な瞬間だと思ったのです。なぜなら、この驚くべき臓器は子供に、必要なすべての栄養を9か月間も提供してきたからです。」と述べました。退学処分は無効となり、学生は戻れることになりましたが、賛否両論を巻き起こしました。


 日本でも、似たような事件は起こっていて、不適切な投稿がマスコミに広がり退学になった事例があります。医療者を目指して大切なことを学んだとシェアしたい気持ちにあふれていると見られるか、何の配慮もなしにアップしていると見られるのか、見る人の立場によってどのように違って見えるかの配慮が求められます。学んだ喜びやその努力を表現したり、最新の教育ではどのようなことを学べているのかを紹介することは、市民や患者にとっても、信頼や尊敬を持てるようになることです。そのような活用方法をぜひ身に付けてほしいものです。


おわりに

 ここでは、ソーシャルメディアのガイドラインなどを紹介しましたが、欧米のものに並べて紹介できるような日本のガイドラインは見つけることができませんでした。ここで紹介した内容をうまく整理すれば、日本でのガイドラインのたたき台を作成できると思います。
 日本では、個人的な利用は多いものの、保健医療への活用による長所のところで紹介した利用はまだ途上であるように思います。筆者は、これまでソーシャルメディアを教育研究のためにずっとオープンに活用してきていますが[9]、多くの方々がここで紹介した長所を意識化してつながりがさらに広がることを願っています。

(中山和弘)(公開日2017年4月4日)

文献
[1}中山 和弘:精神科医が注意すべきソーシャルメディアリテラシー.臨床精神医学 45(10):1259-1267, 2016 ダウンロード
[2]American Medical Association. Professionalism in the use of social media. AMA Principles of Medical Ethics, 2016. https://download.ama-assn.org/resources/doc/code-medical-ethics/code-2016-ch2.pdf
[3]General Medical Council. Doctors' use of social media. 2013. http://www.gmc-uk.org/Doctors__use_of_social_media.pdf_51448306.pdf
[4]Farnan JM, Snyder Sulmasy L, Worster BK, Chaudhry HJ, Rhyne JA, Arora VM; American College of Physicians Ethics, Professionalism and Human Rights Committee; American College of Physicians Council of Associates; Federation of State Medical Boards Special Committee on Ethics and Professionalism*. Online medical professionalism: patient and public relationships: policy statement from the American College of Physicians and the Federation of State Medical Boards. Ann Intern Med. 2013 Apr 16;158(8):620-7.
[5] 中山 和弘:基礎教育で教えなければならない情報リテラシー.看護教育, 54(7): 550-559, 2013. ダウンロード
[6]Nurses and midwives Council: Guidance on using social media responsibly
https://www.nmc.org.uk/globalassets/sitedocuments/nmc-publications/social-media-guidance.pdf
[7]NSCBN:A nurse's guide to the use of social media. 2011 https://www.ncsbn.org/NCSBN_SocialMedia.pdf
[8]福元 ゆみ:@wnursing せかいのつぶやき #04「看護学生による胎盤写真投稿事件 日本看護協会出版部 http://jnapcdc.com/archives/2829
[9]中山和弘:ソーシャルメディアがつなぐ/変える研究と健康.看護研究,44(1): 86-93, 2011. ダウンロード

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