Health literacy online (日本語訳)

6.リテラシーの低いユーザーでサイトをテストしましょう

Health literacy online (日本語訳)

はじめに

誰があなたのウェブサイトを利用するかについては決めることができません。ウェブサイトはみんなのものです。

このガイドで先述のとおり、アメリカ合衆国の半数もの成人はリテラシーが低いのです―そして10人中およそ9人がヘルスリテラシーが低いのです。このガイドの情報は、リテラシーの低いユーザー向けの設計を行う際に、有効なスタート地点となるものの、特定のツールやウェブサイト上でのユーザーの行動を予測することはできません。

皆が使えるようにする必要があります。そのため、あなたのウェブサイトやデジタル製品をリテラシーが低い個人でテストすることが非常に重要です。

ユーザビリティの試験はいろいろな形で行うことができます。一般的には、「人々が使いやすくなるようにまたは使いやすいと証明することを目的として、自分が作成している/設計している/構築しているもの(またはすでに作成した/設計した/構築したもの)を利用しようとする人を観察すること」です。

この目標は、ユーザーの動機とオンライン上の行動を真に理解するために、ユーザーからフィードバックを得ることです。ユーザビリティテストを行うことは、次のような重要な疑問の解答を得る一助となります。

  • ユーザーは、自分が探している情報を見つけることができるか?
  • ユーザーは、この情報を理解し行動することができるか?
  • ユーザーインターフェースの構成は直感的に理解しやすく使いやすいか?
自分がウェブサイトを企画し、設計し、開発したとおりに使われているのか、早期かつ頻繁に、ユーザーに試してもらいましょう。

どの方法を選ぶかは、調査の目的、ユーザーにアクセスしてもらいたい頻度、プロジェクトの詳細、時間軸や予算に依存します。
ユーザビリティテストについてはこちらをご覧ください。

下記に、リテラシーの低いユーザーに対してユーザビリティテストを行う際に考慮すべき重要な戦略を解説します。


6.1. リテラシーとヘルスリテラシーが低いユーザーを募集しましょう

ヘルスリテラシーを測るように設計されている大抵のスクリーニング手段<Test of Functional Health Literacy in Adults and the Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicineのようなテスト>は、本人に直接施行され、薬が使用される状況の患者を対象としたものです。

これらの選択肢は、ウェブサイトと健康コンテンツの開発、特に民間企業の人材募集のデータベースを使う人々にとっては、実用的またはあまり便利ではないかもしれません。その代わりに、一般的に収集された人口統計データに基づいて、ヘルスリテラシーを知る方法があります。

例えば、以下の基準は、ヘルスリテラシーが低いウェブユーザーを特定するための代用として使用できます。

  • 高校教育かそれ以下
  • 低所得-連邦政府の設定した貧困ラインの200%未満(または2015年に4人家族で48,500ドル以下)
  • 過去1年間で健康情報をネットで検索していない

また、簡単な1問でのヘルスリテラシーの測定を試すこともできます。スクリーニングの一環として、参加者に尋ねてみましょう。"問診票を自分で記入する自信はありますか?"

募集の際には、何らかの個人的なつながりが大きな違いを生むことがあることを覚えておいてください。共通の知人が勧めてくれたと言えば、人々はあなたの調査への参加を考えてくれる可能性が高くなります。

信頼できるコミュニティ・リクルーターを利用して、成人学習センター、連邦政府認定のコミュニティ・ヘルス・センター、シニア・センターなどのコミュニティの場面でリクルートしましょう。これは、ターゲットとなる人々から参加者を集めるのにも役立ちます。


6.2. 物流上の障害を明確にして、取り除きましょう

テストする場所は参加者にとって馴染みのある、アクセスしやすい場所(図書館、コミュニティセンター、クリニックなど)で行ってください。公共交通機関の選択肢、駐車場の有無や料金など、テストする場所への参加者のアクセスに影響を与える要因にも注意してください。

リモートテストやオンラインテストはできるだけ避けましょう。やむを得ずリモートテストを行う場合は、技術的なサポートを提供するために、参加者と一緒に誰かが現場にいることを確認してください。

また、対象となる人々が必要となる便宜を考慮することも重要です。例えば、高齢者を対象としたテストでは、老眼鏡を必要とする人に用意します。また、移動手段が限られている人がテストを受けられるような場所を用意してください。また、対象者が英語を母国語としない場合は、通訳が必要になることもあります。 最後に、可能であればギフトカードではなく現金の報奨を使用してください。参加者は、報奨を家賃や光熱費などの基本的な生活費に使いたいと思うかもしれません。


6.3. わかりやすい言葉のテスト資料を作りましょう

スクリーナー(募集時の質問票)と同意書およびモデレーターのガイドをわかりやすい言葉で書きましょう。テスト資料のサンプルはUsability.govでご覧ください。

リテラシーの低いユーザーにユーザビリティ・テストを行う際は、タスクや質問の数を制限します。各セッションで実際に達成できるようにしてください。最も重要なタスクが手順の初期段階にあることを確認してください。また、セッションを簡潔にすることをお勧めします。

リテラシーの低いユーザーは、同意書を理解することが難しく、同意書を読まずに署名してしまうことがよくあります。読みやすい同意文書を提供するだけでなく、参加者のヘルスリテラシーや英語力に依存しない同意手続きの使用を考えてください
詳細については、米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)の、最小限のリスクでの調査のためのインフォームドコンセントと承認ツールキット [PDF - 300 KB]を参照してください。


6.4.コンテンツが理解できてすぐに実行できることをテストしましょう

調査の計画を立てる際には、コンテンツが理解でき、すぐに実行できるものかどうかを確認する方法を考えてみましょう。参加者がコンテンツを理解しているかどうかを評価するために、次のようなことをしてもらいます。

  • タスクに取り組むとき声に出しながら考える
  • 読んだ内容について自身の言葉で説明する
  • コンテンツを読んだ後に自分がどのような行動をとるかを説明する

ユーザーがコンテンツを理解できるかどうかを知ることは、ユーザビリティテストの非常に重要な部分です。しかし、それだけではありません。最終的には、作成した健康メッセージに基づいてユーザーが行動することが目標です。そのためには、コンテンツがすぐに実行できるかどうかを確認する必要があります。

そのためには、テストの対象を理解度や使いやすさの指標に限定する必要はありません。定量的なものと定性的なものを組み合わせて、例えば、ユーザーに質問します。
  • コンテンツを読んだ後に何をするか
  • コンテンツに書かれていることを実行できる自信があるかどうか

このような定性的な方法は、ユーザーが健康的な行動をとることができるかどうかを予測する重要な要素である自己効力感を知ることができます。


6.5.リテラシーの低いユーザーとの経験が豊かなモデレーターを選びましょう

可能な限り、リテラシーの低い人々またはインターネットをあまり使ったことのない人々を対象としたユーザビリティ・テストの実施経験のあるモデレーターを活用しましょう。

ユーザビリティ・テストの場で、リテラシーの低い参加者に慣れ親しんでいるモデレーターは、何を期待しているのかを知っています。彼らは参加者の課題に敏感で、タスクを通じて参加者を効果的にサポートする方法を知っています。例えば、経験豊富なモデレーターは、参加者が非常にゆっくりとタスクをこなしていても我慢できる可能性が高く、また、参加者がイライラしているときには、タスクプロンプトを繰り返す必要性を即座に認識することができます。

最終的には、リテラシーの低いユーザーと一緒に仕事をした経験のあるモデレーターを選ぶことで、テストセッションを成功に導くことができます。


6.6. モデレーターのガイドをプリテストしましょう

タスクやタイミングを微調整するために、リテラシーの低い参加者で、モデレーターのガイドを事前にテストすることは非常に重要です。このようなプリテスト―または「リハーサル」―セッションは、以下のような効果があります。

  • リテラシーの低いユーザーが混乱するタスクを明確にする
  • セッション間でどれくらいの時間がかかったかを確かめることで、さらに時間が必要なユーザーに対応することができる

リテラシーの低いユーザーを対象としたテストに慣れていない、リテラシーの低いユーザーを対象としたテストセッションの進み具合が、これまで行ったテストセッションよりも遅かったとしても驚くことはありません。それが普通だからです。


6.7. 複数の戦略を用いて、参加者に何をしてほしいのかを理解してもらいましょう

導入部分では、ユーザーが混乱したり、何をすべきか忘れてしまった場合には、いつでもタスクを読み直すことができることを明確にする。

セッション中には、モデレーターにタスクを読み上げてもらい、それを書面で提供する(1枚に1タスクのみ)。そうすることで、ユーザーに達成を求めているタスクを思い出させることができます。また、セッション中にモデレーターがタスクを繰り返すようにしてください。

やってみよう
リテラシーの低いユーザーを対象としたテストでは、短い休憩時間を設けることを考えます。

リテラシーの低い参加者は、特定のタスクに集中する傾向があることに覚えておいてください。セッション中、ユーザーには、答えに興味があるのではなく、どこで、どのようにして答えを見つけようとするのかに興味があることを伝えてください。


6.8 モバイルでのテストをしましょう

リテラシーの低いユーザーは、モバイルで情報にアクセスする可能性が高いため、常にモバイルデバイスでウェブサイトをテストしましょう。また、モバイルでテストすることで、レスポンシブデザインに関する情報を収集することができます。ウェブサイトは、さまざまなデバイスで動作するようにすることが大切です。
モバイルでのテストは、デスクトップパソコンでのテストとは異なります。ここでは、リテラシーの低いユーザーを対象としたモバイルテストを行う前に、考えておくべきことをご紹介します。

  • テストセッションを後で見直したり、チームのメンバーと共有したい場合には、モバイルテストのセットアップを使って動きを記録する。事前に技術的なにニーズを十分に考慮すること。

  • (Figure 6.1は省略しますが、説明を紹介しておきます)

    モバイルテスト中の参加者の動きを記録するために、モデレーターが小型カメラを設置している。


  • 参加者には自分のデバイスを使用してもらう。ユーザーは、自分のスマートフォンやタブレットの設定に慣れている―ユーザーが使い慣れたデバイスであなたのサイトを試験してくれれば、より正確な情報を得ることができる。

  • データの使用制限に気を付ける。参加者には自分のデバイスを使うよう求めているため、データ使用について考慮する必要がある。常に参加者が無料WiFiに接続できるようにすること。そして、全般として、彼らに何をしてもらうか―例えばアプリをダウンロードしたり複数の動画を見たりしてもらう必要があるか?―を事前に良く考えること。このような作業は、単純なタスクよりも多くのデータ量を消費する。


まとめ

リテラシーの低いユーザーに対してユーザビリティテストを行うには、特別な準備が必要となります。したがって経験豊かなモデレーターとの協力、参加者にとっての物流上の障壁の排除、わかりやすいテスト資料の作成などの戦略により、成功の可能性を高めることができます。

コメント

コメントを投稿

(コメント表示にはブログのオーナーの承認が必要です。しばらくお待ち下さい。)