4.コミュニケーションと意思決定

市民や患者ができること

4.コミュニケーションと意思決定

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 市民にとって「賢い患者」になることが、医療事故を予防し、質の高い患者中心の医療を実現することにつながります。「賢い患者」になるための重要な要素として、市民と医療者とのコミュニケーションを向上させることが欠かせません。ここでは、日本とアメリカで推奨されている市民向けコミュニケーション向上のための方法をいくつか紹介します。まず、日本で普及が推進されている心構えとして『新・医者にかかる10箇条』を紹介します。

1)新・医者にかかる10箇条

 『新・医者にかかる10箇条』はインフォームドコンセント(医師による説明と、患者の理解・選択に基づく同意)を患者の側から普及することを願ってつくられたものです。これは、NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLによって普及が推進され、医師会、保健所など自治体のホームページなどでもしばしば紹介されています。
 市民が、自分の望む医療を選択して治療を受けるためには、まずは「いのちの主人公・からだの責任者」としての自覚が大切です。そのために、どのような心構えで医療を受ければよいのかを10項目にまとめています。ここでは、医療者とのコミュニケーションにおいて、患者が必要な心構えには、「記録すること」、「伝達すること」、「質問すること」、「責任をもつこと」いう4つの要素が必要であると示しています。

市民や患者ができること

『新・医者にかかる10箇条』

1.伝えたいことはメモして準備
2.対話の始まりはあいさつから
3.よりよい関係づくりはあなたにも責任が
4.自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
5.これからの見通しを聞きましょう
6.その後の変化も伝える努力を
7.大事なことはメモをとって確認
8.納得できないときは何度でも質問を
9.医療にも不確実なことや限界がある
10.治療方法を決めるのはあなたです

出典 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)より

2)患者からの質問の具体例

 質問は実際にはどのようにすればいいのでしょう。
COML(コムル)の『新・医者にかかる10箇条』では、実践編として、検査、治療、くすり、入院、その他の場面で計33の質問を示しています。同様に、アメリカにおいても、医療の質、安全、効率性、有効性の改善に取り組むAHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality、米国医療研究・品質調査機構)が『医師にする質問Question To Ask Your Doctor』として具体的な質問を40項目について紹介しています。
これは患者が診療などを受ける場合、場面を選んで事前に質問リストを作成できる機能です。ここでは、健康問題、薬、検査、手術の4つの場面について、それぞれ紹介しています。そこから質問を選んだあとに印刷して、質問用紙として使用できる『Question Builder(クエスチョン・ビルダー)』というコーナーも用意されています。

『新・医者にかかる10箇条』実践編([1]が付いているもの)と 『医師にする質問Question To Ask Your Doctor』([2]が付いているもの、和訳は中山と谷口による)で紹介されている質問例を場面ごとに紹介します。

【健康問題について】
診断は何ですか。[2]
これ以上の検査が必要になりますか。[2]
治療の選択肢には何がありますか。[2]
どれくらいすぐ治療についての意思決定をしないといけませんか。[2]
いくら治療費がかかりますか。[2]
副作用はありますか。[2]
その治療をしないとどうなりますか。[2]
予後の見通しはどうですか。[2]
自宅で特別な助けが必要となりますか。[2]
【検査】
何のための検査ですか。[2]
どこを調べる検査ですか。[1]
検査はどのような方法でおこなわれるのですか。[1][2]
検査はどのていど正確ですか。 [2]
その情報を知るには、この検査しかないのですか。[2]
検査に備えてしなければならないことは何でしょうか。[2]
検査はどのようなスケジュールでおこなわれるのですか。[1]
この検査にかかる時間はどのくらいですか。[1]
その検査はどのような苦痛を伴いますか。[1]
どのような危険がありますか。[1]
検査結果はいつわかりますか。[2]
検査で何がわかりますか。 [1][2]
検査でわかった私の病気はどんな具合ですか。[1]
検査の次のステップは何ですか。[2]
【治療】
治療期間中はどのようなスケジュールですか。[1]
どのような治療ですか。[1]
治療中に何か制約されることはありますか。[1]
どのような変化が期待できますか。[1]
どのような危険がありますか。[1]
その治療を受けないとどうなりますか。[1]
治療後、日常生活に変化が起きる可能性はありますか。[1]
治療後の回復にどのくらいかかりますか。[1]
ほかにどんな治療法がありますか。[1]
【くすり】
何という名前のくすりですか。[1][2]
何に効くくすりですか。[1][2]
ジェネリックにできますか。[2]
このくすりより安くて良いものはありませんか。[1]
安いくすりと比べてどのように効果が異なるのですか。[1]
いつ飲めばいいですか。[2]
どのくらいの量を飲めばいいですか。[2]
いつまで飲む予定ですか。[1][2]
副作用はありますか。[1][2]
避けなければならない食べもの、飲みもの、活動はありますか。[2]
薬を飲むのを忘れた場合はどうしたらよいですか。[2]
このくすりを飲んでいて気をつける症状(副作用)は何ですか。[1]
変わった症状が出たときはどうすればいいですか。[1]
間違って決められた用量以上を飲んでしまったらどうすればよいですか。[2]
再処方が必要ですか。[2]
他の薬やビタミン剤は飲むのをやめるべきでしょうか。[2]
説明書はもらえますか。[2]
【入院】
入院が必要な理由と目的を教えてください。[1]
入院中におこなわれるのは、どのような検査や治療ですか。[1]
入院中に外出や外泊はどのくらいできますか。[1]
予想される入院期間はどのくらいですか。[1]
退院後の生活はどのようになるんですか。[1]
かかりつけ医を紹介してください。[1]
【手術】
なぜ手術が必要なのですか。[2]
ほかに治す方法はありますか。[2]
どんな手術が必要ですか。[2]
これまでこの手術をしたことがありますか。[2]
この手術をするならいちばんよい病院はどこですか。[2]
麻酔は必要ですか。[2]
いつまでに回復しますか。[2]
いつまで入院しますか。[2]
手術のあとにどんなことがおこりますか。[2]
手術を延ばしたり、しなかったりするとどうなりますか。[2]
【その他】
私の病気の原因は何ですか。[1]
日常生活で気をつけることは何でしょう。[1]
(それぞれの場面で)どのくらい費用がかかりますか。[1]

3)これだけは聞きたい質問

 ずいぶんとたくさんの数の質問が考えられるものです。実際には、これほどたくさんの質問はできないかもしれません。これは聞いてみたいというものだけを自分で選ぶのもいいでしょう。しかし、厳選して、これだけは聞きましょうと推奨されている質問も紹介しましょう。
 アメリカのAHRQは、上にあげた質問のコーナーで、つぎにあげる「知っておくべき10の質問」を推奨しています。

1.その検査は何のためにするのですか?
2.あなたはこの治療を何回したことがありますか?
3.結果はいつわかりますか?
4.なぜこの治療が必要なのですか?
5.ほかの選択肢はありますか?
6.どんな合併症が起こる可能性がありますか?
7.私に一番合っている病院はどこですか?
8.何という名前のくすりですか?
9.副作用はありますか?
10.この薬は今飲んでいる薬と併用しても大丈夫ですか?

 さらに要点を絞ったものが次の3つの質問で、これも、アメリカでつくられた「Ask Me 3(アスク・ミー・3)」というものです。

1.私の一番の問題はなんですか? (What is my main problem?)
2.私は何をする必要がありますか? (What do I need to do?)
3.それをすることが私にとってなぜ重要なのですか? (Why is it important for me to do this?)

市民や患者ができること
 患者に提供されるケアの安全性の向上をはかる活動を行うNPSF(National Patient Safety Foundation、国立患者安全財団)が作成したものです。Ask Me 3は医師・看護師・薬剤師といった医療者とのコミュニケーションの際に、患者がこれらの3つの質問に対する答えを理解することを奨励しています。



                          (中山和弘、谷口絵里奈)

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