5.患者中心の意思決定支援

意思決定ガイドを開発する

5.患者中心の意思決定支援

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質の高い意思決定ガイドを開発するためには?

 日本ではまだ意思決定ガイドの開発がほとんど行われていない現状について説明しました。医療や健康について、多くの人が直面する可能性のある難しい決定について日本語の意思決定ガイドができれば、たくさんの人が意思決定ガイドを活用して納得した決定を後押しすることができます。そのためには質の高い意思決定ガイドを開発する方法を知り開発する必要があります。

 ではどのように意思決定ガイドを開発すればよいのでしょう?すでに外国語の意思決定ガイドを日本語に翻訳することもできますが、Ottawa decision aidsでは、開発者のために意思決定ガイドを開発する方法のトレーニングをオンラインで提供しています。 こちら

このトレーニングでは以下の12項目について学習することができます。

1.意思決定ガイドの紹介
2.意思決定ガイドの案
3.意思決定ガイドの基盤となる概念枠組みを明らかにする
4.IPDAS基準の適用
5.専門家パネルによる開発と評価の予定表を立てる
6.対象となる人々の決定に関するニーズを評価する
7.現在ある情報
8.エビデンスと生じる可能性のある出来事(確率)を用いる
9.価値観を明確にする
10.意思決定ガイドの評価を計画する
11.追加のIPDASの要素について検討する
12.意思決定ガイドを登録する(Ottawa decision aids A to Z Inventoryへ


 インターネットの環境さえ整えば、IDとパスワードを登録するだけで、無料で学習することができます。意思決定ガイドの開発前にこのオンライントレーニングを受けることで、質の高い意思決定ガイドを作るための知識を得ることができます。
 また、開発のプロセスについて、IPDASのグループがまとめた論文も公開されています[1]。さらに、意思決定ガイドを開発する場合、意思決定の基本的な知識や理論を理解する必要があります。これらの知識は、ヘルスケアの分野以外の学問分野(心理学、社会学、経済学など)で発展してきたので、医療や健康に関する意思決定支援を提供する場合にも、基本的な知識を学習することが必要です。

 開発と評価には時間を要しますが、患者と医療者にとって効果のある意思決定ガイドを提供することにつながります。これからますます様々な分野で、質を保証できる意思決定ガイドができることを願っています。


2016年12月6日公開 (大坂和可子、中山和弘)


引用文献
[1] A. Coulter, D. Stilwell, J. Kryworuchko, P. D. Mullen, et al.; A systematic development process for patient decision aids. BMC Medical Informatics and Decision Making 201313 (Suppl 2) :S2, DOI: 10.1186/1472-6947-13-S2-S2

コメント

ラジオ日経の放送を聞かせて戴きました。ちょうど癌が発見された患者さんと意思決定する場面があり、患者さんに当方の説明内容をご自分の言葉でいいなおしてもらって、理解を確かめながら進めることができました。枚方公済病院内分泌代謝内科医師

加藤星河 2020年2月21日13:16

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