毎日新聞コラム「健康を決める力」

第15回 ストレス対処の「資源」

毎日新聞コラム「健康を決める力」

毎日新聞 2018年9月9日 東京朝刊掲載

聖路加国際大教授 中山和弘 著


 「健康を決める力」というサイトで、「健康とは何か 力、資源としての健康」という記事をようやく掲載しました。何を健康と考えるかによって、健康のために選ぶものも異なると考え、以前から書かねばと思っていました。

 厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2016年)によると、「あなたの現在の健康状態は」という質問に対して「よい」20・7%、「まあよい」17・8%、「ふつう」47%、「あまりよくない」11・2%、「よくない」1・8%となっています。「よい」「まあよい」「ふつう」を合わせると85・5%が、自分は健康だと考えています。この割合は、年齢が上がるほど低下しますが、65歳以上でも75%ほどあります。病気やけがで通院している割合は、20~30代の約2割に対し、65歳以上は約7割であるにもかかわらずです。傷病の有無だけが健康の判断材料でないことがうかがえます。

 では、私たちは何を理由に健康だと判断するのでしょう。厚労省の「健康意識に関する調査」(14年)では、「病気がない」「おいしく飲食できる」「身体が丈夫」など、主に身体的な側面が上位を占めました。この他、選択項目には「不安や悩みがない」「幸せを感じる」「前向きに生きられる」「生きがいを感じる」などの精神的な側面や「人間関係がうまくいく」「仕事がうまくいく」「他人を愛することができる」「他人から認められる」という社会的な側面も挙げられています。

自分の健康を判断する際に、重視した事項(厚生労働省「健康意識に関する調査」2014年)
 これらの三つの側面は、広く知られる世界保健機関(WHO)の健康の定義「健康とは、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に病気がないとか虚弱でないということではない」(1948年)にもあります。この定義は三つの側面の調和を視野に入れている点で評価されています。

 一方で、「完全に良好な状態」という表現が、理想的な「状態」を求める姿勢につながり、医療への過度の依存を助長するという問題点も指摘されていました。そして現在では、健康を「状態」ではなく、状態を変化させる「力」として捉え直そうという提案が多くの専門家から出されています。

 背景にあるのは、ストレスや病気は人生の一部であり、否定したり排除したりするものではないという考え方です。この考えの下では、ストレスや病気に対処するための知識や情報、周囲からのサポートなど多様な「資源」が必要です。ストレスをきっかけに、こうした「資源」を入手する「力」であるヘルスリテラシーを身に着けることが、健康につながると言えます。

次回は10月10日掲載

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