毎日新聞コラム「健康を決める力」

第5回 元ネタは同じでも

毎日新聞コラム「健康を決める力」

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毎日新聞 2017年9月10日 東京朝刊掲載

聖路加国際大教授 中山和弘 著(第5回/全12回連載)


メドラインプラスの健康情報の質の指針

 日本では、新聞や雑誌、テレビを信頼している人の割合が、他の国より突出して高いことが知られています。最近の「世界価値観調査」によれば、米国が2割ほどなのに対し、日本が7割以上です。
 このためでしょうか、私たちの調査では、健康情報の信頼性を確認する「いなかもち」--(1)いつ(2)なんのために(3)書いた人は誰(4)元ネタは(5)違う情報との比較は--が、日本では半分も実行されていません。確認個数が最も多かったのは「0」で、4人に1人の割合でした。そこで「いなかもち」を複数の新聞に取材してもらい、その報道のされ方を比較してみました。
 元ネタは同じでも、新聞社によって確認するポイントや掲載内容が違いました。ある新聞では、見出しが「ネットの医療情報、4人に1人がうのみ」となっていました。インパクトはありますが、もっと軟らかい表現を想定していました。
 別の記事では健康情報を見極め意思決定する力である「ヘルスリテラシー」の名付け親が私になっていました(名前が似ていてもiPS細胞を名付けた山中伸弥教授のようにはいきません)。いかに元ネタの編集と確認の違いが記事の違いにつながるかがわかりました。

 では新聞やテレビを信頼しない国では、何が信じられているのでしょう。米国には世界中の医学系論文すなわち「健康情報の元ネタ」を集めたデータベース「メドライン」があります。国が税金を使った情報は国民の資産という考えから、1997年にインターネットで無料公開されました。当初は専門家より一般市民が自分や家族・友人のために利用したそうです。信頼できる元ネタの需要が高いことがわかり、翌年、一般向けの「メドラインプラス」ができました。元ネタに詳しい医学図書館員らの知恵を集めたそうです。
 そこでは、健康トピックが簡潔に解説され、専門情報にリンクが張られています。リンク先は国の研究機関が中心ですが、それ以外の優れた情報も提供するため、指針を設けています(表)。例えば情報源の名簿は公開が原則で、その名前を検索して発表論文を確認できます。さらに広告なしの無料公開などの条件もあり、これらを満たす情報だけが掲載されます。
 開始当初は米国でもネットの健康情報の信頼性を確認した人は少なかったそうです。だからこそ厳しい指針をクリアした信頼できる情報源を作ったのです。みなさんは何を信じますか。

次回は10月15日掲載

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